あなたは怖いのね?そんな「不倫」を選んだ自分だから、未来にまた同じことをするんじゃないかって?
OTONA SALONE / 2024年2月19日 21時11分
過去に不倫をしていた人は、その後どんな人生を歩んでいるのでしょうか。
相手との関係や自身の生活の変化について、女性たちのリアルをお伝えします。
前編『「流されて不倫」ではなく「考えて、意志を持って始めた不倫」だったはずなのに。ひどい終わり方』に続く後編です。
【不倫のその後 #2 後編】
不倫する男にとってみれば、家族よりあなたが大事なんてことは絶対にない
「大変だったね」
手をつけていなかったドリンクのカップを持ち上げながらそう言うと、友香は視線を上げてこちらを見た。
「ごめんね、ちゃんと話さなくて」
ともう一度繰り返して、それからぽつぽつとその後について語り始めた。
ある日、思い切って彼に「もう別れたいの?」と尋ねたら「そうじゃないけど、少し考えたい」と言われたこと。その理由が自分ではなく奥さんに疑われているからだと言われたこと、それから一月ほど連絡がなかったこと。
彼からのメッセージや着信をじいっと待っていたという友香は、耐えきれずに「もう待ちたくないから別れたい」と送り、すると次の日に会おうと言われて待ち合わせ場所からホテルに直行され、抱かれた後で「会える日は少なくなるけど続けたい」と告げられていた。それを受け入れて一ヶ月ほどはLINEや電話で気持ちをつないでいたが、やはり男性からの連絡は以前ほど熱心ではなくなっていて、友香自身も冷めていったそうだ。
「わかるよね、もうこっちに気持ちがないんだなって。ホテルに行くことも滅多になくなったのに、何でこんな関係を続けているのかなって虚しくなっちゃった」
薄く笑ってそう口にする友香は、そのときにやっと不倫する男の汚さに気がついたのだという。
「会いたいなって送っても、家族と過ごしているからって当たり前に返すようになったのね、彼が。奥さんの機嫌を取りながら自分の都合のいいときにカラダだけこっちに求めてきて、まるで私がお願いして続けてもらっている感じで。続ける気がしなくなって、別れてって言おうと思ったけど、それも癪にさわるじゃない? だから放置していたんだけど、向こうのほうからある日『もう終わろう』って言ってきてそれきりよ」
そうだよ、それが不倫する既婚男性のリアルだよ、と思いながら無言でうなずいた。
そんな選択を、冷静に考えたら結末なんてわかりきっていた選択を、してしまった私は
「やめられてよかったと思うよ、私は」
過程がどうであれ、終わりを受け入れたのなら卒業だ。そう思い、『おめでとう』と続けると友香の顔が歪むのがわかった。
「そうね、あなたはずっと反対していたものね」
「……」
言い出しづらかったのは、こんな反応をされるのが想像できたからだろう。不倫にいい終わりがないことをよく知っているこちらは、どうしたって反対の姿勢しか取れないのだ。
ただ、気になることがあった。
「全部ブロックされてるって、あなたのほうからまた連絡しちゃったの?」
そう尋ねると、友香はカップに視線を落として「うん」と答えた。
「終わろうってメッセージが来て、最初はそのまま既読スルーで置いていたんだけどやっぱり一言言いたくなっちゃって。『ずるいよね』って送ったけどずっと未読でね、思い切って電話したらお繋ぎできませんって流れて、LINEの通話もできなかったから、ああブロックされたんだなって。卑怯だよね、言いっぱなしにして逃げるなんて」
よくあることだよ、と思わず口に出そうとして、引っ込めた。関心のなくなった不倫相手など邪魔でしかなく、いっさいをブロックして接触を断つのは既婚者の常套手段だった。だが、「切られた側」のほうはその姿に怒りを覚えてそれが執着に発展するのも、よくあるパターンだった。
友香がそうならないか不安を覚えたが、
「何であんな関係を続けていたんだろうって、今は怖いの」
と、ぽつんとつぶやかれた言葉にはっとした。
「怖い?」
「考えたらわかるじゃない、私に本気ならさっさと離婚でも何でもするって。でも、バレそうになって奥さんを取ったのよね? あの人は。結局捨てられるのはこっちで、こんな惨めな終わりで。どうして不倫なんかしたのか、あのときの自分が怖いの」
それは、さっきまで別れた不倫相手を責めていた声色とは違い、明らかに怯えの色が見えた。
お願いだから、「また不倫に走るかもしれない」だなんて絶対に口にしないで
不倫は人に言えない後ろ暗い関係で、バレてしまえば慰謝料の支払いに社会的な制裁に、悪い影響がつきまとう。リスクについては友香が不倫を始めた頃に伝えていた。それを無視して「自分を信じる」と友香は言ったが、関係が終わった今はそのときの心の状態に大きな不信を抱いていた。
「浮かれていた自分が信じられないってこと?」
そう言うと首を縦に振った友香は、
「あの人に結構お金を使っていたのね、私。そういうのも全部無駄になっちゃって、馬鹿みたい」
「不倫がどうこうっていうより、男の人に口説かれる自分に酔っていたんだと思う」
「付き合っても人に言えないのにね、周りには相変わらず『彼氏はいません』で通すしかなかったし」
と、ぽろぽろと自分の側の現実を吐いた。
こうなるとわかっていれば、不倫なんてしなかった。友香の後悔は、こんな不毛な関係を「選んでしまえる自分」にあった。そのときの自分を思い出せば、リスクなどまともに考えずにああなる心を信用できなくなるのは当然なのだ。
「次はないよ」
思いのほか強い口調になったのは、先回りするべきだと思ったからだ。次に友香の口から出るのは「こんな自分じゃ、また不倫に走るかもしれない」という未来への不安で、そんな芽は気配を感じたときに潰すのが一番なのだ。
友香は、定まらない焦点のままこちらを見た。
「もうやらないでしょ、あなたなら。私が知る限り、選んだ自分に本当に後悔する人はもうしないよ。経験したからこそ次はないんだよ」
その目をまっすぐ見ながら続けると、友香の瞳からふうと力が抜けた。「私が知る限り」、この言葉が持つ説得力は、不倫を取材し続けたこちらを知っているから生まれるものだった。
「……うん」
ありがとう、と小さな声で友香がつぶやく。
「次はないんだよ」
もう一度繰り返すと、大きく息を吐く友香の体から緊張が抜けていくようだった。
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