43歳男性に夫婦生活が「ない」理由とは?「これから死ぬまでレスなのかなって」【無子社会を考える】
OTONA SALONE / 2024年2月17日 20時0分
世界でも類を見ない人口減少に直面する日本。「失われた30年」の経済弱体化も少子化の要因とされますが、昨今ではセックスレスの常態化も深刻な課題として浮かび上がっています。
昨年末、25年ぶり実施の『性機能障害の全国実態調査に関する報告』が発表されました。年齢別EDの有病率はなんと50歳以上で41.7%。また、性交頻度が1カ月に1回未満(1カ月間に1度も性交がない)を「セックスレス」としたところ、全体の70.4%が該当しました。
つまり、日本は少子高齢化と同時に、恐るべきレス社会に突入していたのです。これは人口問題そのものであり、我々は少子化どころか無子化社会を生きていると言えます。
これらの社会課題を男性側の視点で捉え、執筆を続けるライター・山下あつおみ氏が、レスを抱えた夫婦問題についてレポートします。
妻は39歳、会社の業績も順調に伸びている。でも、これから死ぬまでレスだろうな
「これから死ぬまでレスなのかなって」
このように語るのは埼玉県在住のケイイチさん(43歳/自営業)です。
ケイイチさんの家庭は専業主婦の妻(39歳)、息子(10歳)の3人家族。家業の問屋会社を引き継いだのは15年前のことで、社長だった父親が急逝したことがきっかけだったそうです。
「どうにかしなくちゃいけない。とにかく必死でやってきました」
経営のイロハも分からぬまま、毎日、現場で学んできたといいます。先代の父親の人望もあり、ケイイチさんが会社を引き継いだあとも、現在まで業績は順調に伸びているそうです。
結婚したのは10年前のこと。妻と付き合っていた頃に妊娠したことがキッカケでした。予定外ではあったものの、授かった命を大切にしたいと考え、ケイイチさんは家庭を持つことを決意したといいます。その後、仕事に家庭に多忙ではあるものの、自営業であるため時間をやりくりしながら、出来る限り子どもの学校行事にも参加しているそうです。
「正直、生活の中に夫婦の営みがあれば、もっと満たされるとは思います」
仕事をイキイキと語るのとは対照的に、ケイイチさんは少し苦しそうな表情を浮かべています。
したい欲はある、でもできない。もう5年以上はED気味、レス歴も5年以上
「実は5~6年ぐらいED気味なんですよね。最初は疲れているのかなと思ったのですが、年々、元気がない状態が続いてしまい、気づけばレスになって5年以上は経っていると思います」
ケイイチさんの内面に隠された葛藤が次第に明らかになります。家族のために日々奮闘するなかで、自分自身の性的な悩みに直面していたのです。なによりケイイチさんはEDの問題によって、体よりも心に大きな負担を負ったといいます。
「私のEDがキッカケで妻が不安になったようです。その後もEDが続いてしまい、お互い萎縮してしまいました。夫婦だからこそ話しにくいテーマですかね。実際、今も夫婦仲は良いですよ。でも以前のように妻から求めてくることはなくなりました。だからこそ話しにくいのかな、もうタブーですね、その話題は」
どうやらケイイチさんは、自身のEDを発端に、妻との関係に修繕不可能な亀裂が生じたと考えているようです。また意外なプレッシャーについても語ってくれました。
「最近、会社の部下の結婚や出産が続きました。みんな聞いてくるんですよね、夫婦円満の秘訣について。本当は僕が教えて欲しいぐらいなんですよ(笑)」
苦笑いしながらも丁寧に話してくれるケイイチさんからはマジメな人柄が伝わってきます。
「部下が頼ってくれるのは嬉しいですけどね、経済的な問題も少子化の要因じゃないですか。だから従業員には家庭を持てるだけの給料を最低限払える会社であり続けることも重要だと思います」
「妻だけED」の場合、妻に自慰の相談はできない。一層追い詰められるメンタル
ED、レスという悩みがあるケイイチさんはどのように性的な欲求を解消しているのか、具体的な方法について質問していると、こんな答えが返ってきました。
「これ、意外と多いと思うんですけど、自慰ではまあまあ元気なんです。ただ、その行為自体を妻には秘密にしています。だって妻にだけEDとも思われたくないですからね、メンタル的なものが大きいのかもしれません」
どうやらケイイチさんは性欲自体はあるようで、何度か外で発散しようと風俗を利用しようかと考えたこともあるようです。
「もちろんオトコですし、40代なりの性欲はありますよ。ただ、お金を払って解消することには昔から抵抗があって、そういうのはムリなんですよね。最近はスマホやPCで無料アダルト動画サイトを視聴してますが、たまに中学生に戻った気持ちになります(笑)」
夜遊びには興味がないと言い切るケイイチさんですが、奥さんとレスの関係になったあと、こんな心境になったそうです。
「この年齢になると、離婚したり再婚したり、知り合いにも何人かいますが、レスの気持ちは結婚するまで想像していなかったです。最近、芸能人の浮気問題とかあるじゃないですか。私自身が夫婦関係で悩む経験を経てみると、その気持ちが想像できるようになりました」
また健康にも気を使うケイイチさんは、最近、トレーニングジムに通うようになったそうです。
「ジムではランニングマシーンで5㎞以上走るのを日課としています。走りながらタブレットで電子書籍って意外と読めるんですよ。効率的な時間の使い方かなって。ただ最近、閲覧履歴を見返すとビジネスや健康関連の書籍だけでなく、レスや心理学の本をよく読んでいて、自分が自覚している以上に気にしてるのかなと感じています」
ケイイチさんの心の内と家族への想いとは
最後にケイイチさんに今後の生き甲斐について尋ねてみました。
「やっぱり息子の将来のことですかね。もちろん好きな道に進んで欲しい気持ちが強いので、家業を継いで欲しいとまではいいませんが、自分の代で家業が終わるのが寂しい気持ちもあります。また今後も私から妻と別れるつもりはありませんし、生涯の伴侶は妻だという気持ちに変わりはないです」
ケイイチさんは現在の状況に真摯に向き合いながら、家族を何よりも大切にしています。また日本の社会課題でもあるEDやレスの問題に直面し、家庭内の関係に影響を及ぼしていることに悩みつつも、妻との絆を失うことは絶対に避けたいとの思いが強いようです。
何より、ケイイチさんは家族の一員として、その役割を真摯に受け止めながら、たくましく生きる姿がとても印象的でした。
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