してしまった不倫を後悔しても得るものがない。ただ自分の選択に胸を張るしかない
OTONA SALONE / 2024年2月28日 22時1分
ジェクス ジャパン・セックスサーベイ2020によれば、浮気・不倫経験があると答えた男性は67.9%、女性は46.3%。40代女性の32.9%が「特定の人物1人と(現在も)している」と答えています。婚外恋愛は、決して遠い対岸の火事ではありません。
では、過去に不倫を経験した人たちは、その後どんな人生を歩んでいるのでしょうか。
相手との関係や自身の生活の変化について、女性たちのリアルをお伝えします。
前編『出会いのほとんどは職場だと言うけれど…「職場の不倫」バレたら何が起きる?体験者は語る』に続く後編です。
【不倫のその後#4】
陰であらぬことを言われ続けても、その仕事を続けられた「理由」
「その仕事、好きだって言ってたもんね」
由佳里の声に動揺がないことを感じてそう答えると、「うん」と力強い声がスマートフォン越しに返ってきた。パートであっても業務には責任感を強く持っていた彼女は、品出しの時間や配列で売上が変わることの実感を活かして工夫をこらしてきた。社員さんたちに堂々と意見を伝え、改善に取り組む様子はいきいきとしていた。
上司と不倫の噂が流れ、店長にも目をつけられて周囲から浮いていた由佳里は、それでも自分の仕事だけは真剣にやっていた。ほかの女性たちの冷たい視線について「つらい」と涙をこらえるのを見てきたが、「もう辞めてしまえば」と言えなかったのは、彼女自身がその選択肢を口にしなかったからだ。真っ先に思いつくその逃避を、由佳里は最初から選ぼうとはしなかった。
だから「噂はそのうち消えるよ、約束する」と繰り返しながら、「そんなしょうもない男に悩むなんてもったいないよ」と励ましながら、由佳里の努力に寄り添うのが何よりの支えだった。不倫をとがめるような場面はとうに過ぎており、その噂が由佳里の家庭まで侵食しないことを考えながら、しばらくは勤務のない日でもスーパーの近くは避けるよう言い続けた。
不倫は由佳里だけの責任ではなく、相手の既婚男性にも罪はある。だが関係が終わってからもその人とのつながりを切れない環境にいるのなら、過去になった関係をいっさい持ち出さずに「適切な」元の距離感に戻るのが最善なのだ。それは由佳里もよく理解していた。業務に打ち込むことだけが、由佳里にできる努力だった。
人の興味はうつろう。噂は必ずいつか消える
「仕事も好きだしね、みんなとも元通りになれたから、もう大丈夫だと思う」
柔らかい口調で由佳里は続ける。少し前から弱音を吐かなくなったことには気がついていたが、それはいい変化だと受け取ってあえて様子を尋ねることはしていなかった。その予想が当たったことに、改めてほっとした。
由佳里は強い。客からその場でぶつけられるクレームに何度も笑顔で対処してきた話も知っている。好きだからこそがんばれる、そうやって積んできた自信が彼女を支えていた。パートの女性たちから慕われるのは、悩みを相談すれば最後まで見届けることを忘れない姿勢があるからだ。「ベテラン」と呼ばれるには相応の背景が由佳里にはあって、噂が消えた後で信頼が復活する下地にもなっていたはずだ。
「本当によかったね、安心した」とこちらも穏やかに返すと、ふふと由佳里が笑うのが伝わってきた。
「過去は消えないけどね」
「うん。まあそうだけど。でも、今が大事でしょ」
具体的にどんな様子なのかを尋ねなくても、由佳里の口から「過去」と出たからにはもう大丈夫だろうと思った。当人が不倫をそう割り切って今の現実を大切にすることでしか、葛藤を乗り越えることはできないのだ。
噂はいつしか消えるものだが、当の本人が引きずってしまえばいつまでも他人の関心を引くことになる。狭い場所でネガティブな自分の過去を消すことはできなくても、これから前向きに身を置くことを決められるのも自分なのだ。
払った「代償」とこれからの選択
「そういえばね、あの店長、またお客さんと喧嘩しちゃって本社に呼ばれたって」
「相変わらずなんだね、早く異動になればいいのに」
そんな軽口を言い合いながら、由佳里が払った不倫の代償について考えていた。馬の合わない上層に嫌味のネタを渡してしまったことや、ほかのパートの女性に「職場でイチャイチャとかありえない」と聞こえるように言われる自分、それらはみずからの選択の結果であって、誰も責められない。
「私は今の自分で胸を張るしかないのよね」
由佳里が静かに言った。「胸を張る」は繰り返し伝えてきたことで、不倫を悔やむのなら「今は違う自分」を信じて進むしかない、未来はこれからの選択で作られる。渦中にいればそんな抽象的なことを考える心の余裕はないけれど、過去に負ければ未来もまた明るくはならないのだ。
「それでいいんだよ」
過去は消えない。それは確かだが、過ちを飲み込んで次に進める強さが自分を救うのだとしみじみと思った。
「ねえ、来週は何時にする?」
弾んだ声で話題を変えた由佳里に返す言葉を探しながら、来週は楽しく過ごせる予感に胸が踊った。
前編>>>『出会いのほとんどは職場だと言うけれど…「職場の不倫」バレたら何が起きる?体験者は語る』
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