体外受精後の妊娠。苦しい選択を迫られ、夫が隠していた【本性】が露呈!「妻が許せなかったひと言」とは
OTONA SALONE / 2024年4月1日 21時1分
2022年4月より不妊治療の保険適用が開始され、不妊治療や体外受精に踏み切る夫婦は増えています。しかし、治療の末に妊娠・出産できる夫婦ばかりではありません。苦労の末に子どもをあきらめなくてはいけないケースも少なくありません。
子宮外妊娠からの体外受精と流産という壮絶な体験を通して、妊活がうまく行かなかったとき、夫婦が「乗り越えなくてはいけない壁」について考えてみます。
▶この記事の【前編】を読む▶卵巣嚢腫と子宮外妊娠の手術で、自然妊娠することができなくなってしまった優華さん。体外受精でようやく念願の赤ちゃんを授かります。双子との赤ちゃんが妊娠6カ月になったころ……。
妊娠6カ月で破水、死の淵をさまよう
もともと小柄な優華さん、双子のいるお腹は今にも生まれそうに大きくなっていました。それでも母子ともに順調。元気に妊娠生活を送っていましたが、6カ月のある日突然、破水して救急車で運ばれてしまいます。
輸血が必要なのに、RHマイナスという珍しい血液型のため適合に苦労しました。優華さんは大げさでなく死の淵をさまよいました。
破水の原因は、子宮の破裂でした。子宮外妊娠の際に卵管を切り取ると同時に、少しだけ子宮も切っていました。その傷が裂けて破水し、お腹の中で大量出血していたといいます。「双子だったため、子宮が重みに耐えられなかったみたいです。もしかしたら、一人だけ妊娠していたら無事に産めていたかもしれません」と優華さん。
子どもの命と障害、夫婦に迫られた選択
ただこのとき、もし子どもを失っただけだったなら、その後に離婚することはなかったという優華さん。彼女が離婚を決めたのには、子宮破裂で入院した際に夫が言った「ある言葉」がきっかけだったといいます。
破水した時点で、男女2人の胎児のうち男の子は助かりませんでしたが、女の子は生きていたのです。
何とか1人だけでも助かって欲しい、と考えた優華さん。しかし医師からは大きな決断を迫られます。
「99%障害を持って生まれて来ますが、それでも産みますか?」
優華さんはためらいなく「はい」と答えました。隣にいる夫も「もちろん」と返事。優華さんは「頑張りましょう」という医師の言葉に大きくうなずきました。
残酷な現実に出産をあきらめる
ところが、医師がいなくなると、夫の態度が豹変しました。「子どもはあきらめたほうがいい」と言い出したのです。
「もちろん俺はかまわないけど、おまえが大変だろう」と夫。優華さんが「わたしは大丈夫だから、産みたい」と言っても「いや、大変だから、おまえが。だからやめたほうがいい」と引きません。
夫の態度や言葉に違和感を持った優華さん。一見自分のために言ってくれているようで、本当は違うのではないか、と感じました。
モヤモヤした思いを抱えたまま、病態は悪化。結局もう一人の子も助かりませんでした。
医師からは残酷な事実を告げられます。今後の妊娠・出産の可能性は0ではありませんが、かなり条件付きになるというのです。緊急手術で傷ついた子宮を再度きれいに縫い合わせて、数年待って傷がいえてから体外受精をすれば、もしかしたら…ということでした。
まだ30歳の優華さん、妊娠自体は可能ですが、出産は今回のように「命がけ」になることは避けられません。「やれるだけのことはやったからもういいかな、という気持ちでした」と優華さん。でも簡単には割り切れなかったといいます。
面倒なことからは逃げようとする夫
後悔はなかったものの、死産と子どもを持てないという現実は、優華さんを打ちのめしました。退院後はすぐに自宅に帰る気になれず、2カ月ほど実家で過ごします。
「割といつも元気で立ち直りの早い方だと思うんですが、このときばかりは目の前が真っ暗になりました」生きることに希望が持てず、働く気にもなれなかったといいます。
何より繰り返し、頭の中に浮かんだのは、夫の態度や言葉でした。子どもを失って悲壮感の中にいる優華さんとは違い、彼は安堵しているように見えたのです。
最初に妊娠した時から、今までのことを一つ一つ思い出すと、ますます夫への不信感は高まっていきました。彼の態度はいつもどこか他人事のように見えて。
「優華がそうしたいならいいよ」が彼の口癖でした。優華さんは「自分の意思を尊重してくれるやさしい夫」だと解釈していました。でも本当にそうだったのだろうか?と考えずにはいられなくなりました。
妊娠中から自分自身の体の変化を通じて母となることを実感できる女性とは異なり、男性が父親の自覚を持ちにくいのはよく言われることだし、理解できなくはありません。しかし、彼の場合はそれとは少し違ったといいます。
「彼はただ、自分で決めて責任を取るのが嫌なだけなのでは」「面倒なことから逃げたいだけなのでは」そんな考えが頭から離れなくなりました。
子どもに癒され立ち直る日々
自宅に戻り、いつも通りの生活がはじまりました。図書館司書の仕事に復帰した優華さん。優華さんが勤務する図書館は市内で最も大きく、作家を招いて講演したり絵本の読み聞かせをしたりと、さまざまなイベントがおこなわれます。優華さんはもともと児童書の担当。復帰後しばらくして子ども向けイベントを企画するリーダーになりました。
「子どもと身近に接するのはつらくないかと聞かれることもありました」という優華さん。確かに、子を持てなかった人は子どもを見ると胸がチクチクする、とはよく聞く話です。
「不思議ですが、そう感じたことはないんです。子どもはかわいいと単純に思えたし、むしろ子ども相手の仕事で癒されていました」
少しずつ心の傷は癒えていきましたが、夫との間に感じた距離が縮まることはありませんでした。図書館のイベントは土日に集中するため、夫婦で過ごす時間も減りました。もはや「ただの同居人」であって「夫婦ではない」と優華さんが感じたころ、どちらともなく離婚を切り出しました。
夫が再婚し、子どもが生まれたと人づてに聞いたときには、さすがに胸が痛んだといいます。でも後ろは振り返りません。今では図書館の名物館長として、子どもたちを相手に忙しく充実した日々を送っています。
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