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私の価値は、スーパーの総菜以下?「妻の命 < 300万円」なの⁉ 許せなかった夫の一言

OTONA SALONE / 2024年3月24日 11時1分

結婚相手に何を求めるか?かつては女性は男性に経済力を、男性は女性に家事育児を求めるといわれていましたが、現在では男女逆になっているともいわれます。ハイスペックな男性と結婚した妻は、なぜ幸せになれなかったのか。ハイスペックな夫は、なぜ結婚後に豹変したのか。実際にあった離婚の実例を通して考えてみる【後編】です。

 

この記事の【前編】を読む▶は好条件の結婚相手に恵まれて、自らを“勝ち組”だと思っていた朋美さん。しかし、夫に帯同して転勤した東京では、やさしかった夫の態度も豹変し、自分自身の再就職活動もうまくいかない現状をお伝えしました。

【仕事と結婚 ♯2 後編】

300万円より軽い、わたしの命

研究室の仕事はやりがいはあるものの予想以上にハードで、徹夜や泊まり込みになることも少なくありませんでした。終電も早いため、電車通勤は辞めて、車で1時間半以上かけて通勤するようになったといいます。帰宅後に食事の支度をはじめても間に合わないので、朝早く起きて夕食の準備まで済ませて出勤していました。

 

徹夜が続いて数日ぶりに帰れることになったある日、かなり疲れていた朋美さんは運転中にウトウトして、電柱に車をぶつけてしまいました。それだけならば自損事故で済んだのですが、焦った朋美さんは慌ててバックして、何かにぶつかりました。なんと、後ろには運悪くベンツがいたのです。

 

ベンツには大きな傷がついていましたが、保険で支払えばどうにかなりそうでした。ところが、保険が切れていたことが判明します。近所に住む義母に保険料の支払いを頼んでおいたのを、義母が忘れていたのでした。

 

事故の相手からは半ば脅すように300万円を請求されました。夫は黙って300万円を支払ってくれましたが、その後、耳を疑う言葉が彼の口から飛び出したのです。

 

「おまえが死ねばよかったのに。そうしたら生命保険も入ったし」

 

確かに事故を起こしたのは自分が悪いけど、どうしてそこまで言われなくちゃいけないの? 300万円支払ったことよりも、夫の言葉のほうが朋美さんにはショックでした。

 

そもそも、保険料の支払いを忘れていた義母のせいです。頼んだのは朋美さんですが、忙しすぎて支払いに行く時間がなかったのだといいます。朋美さんが往復3時間かけて通勤してハードな仕事をこなしても、何一つ家事を手伝おうとしなかった夫に責任はないの?

 

朋美さんの中に、メラメラと怒りの炎が立ち上りました。

 

 

別居でさらに遠のく心の距離

朋美さんは神奈川県に1Kのアパートを借りて平日はそこで生活し、週末だけ都内の自宅に戻る「半別居生活」を開始しました。ただ眠れればよい仮住まいのつもりで、最初はテレビも洗濯機も買わなかったそうです。通勤時間は15分になり、居眠り運転をすることもなくなりました。

 

しかし、平日一人になった夫は独身時代に戻ったかのように、週末に帰っても留守をしていることが増えました。たまに家にいてもゲームばかりしていて、ほとんど会話もありません。

 

夫が平日荒れ放題にした部屋を片付けるだけで、朋美さんの貴重な週末は消費されました。「やっぱりわたしがいないとダメね」というと「別にデパートの総菜とレンジがあれば、おまえがいなくてもなにも困らないよ」と夫。

 

「だったらせめて、自分の食べたもの、脱いだものぐらい片付けてよ!」今だったらそう言い返すだろうけれど、当時は妻である自分が平日家を空けているのが悪いのだ、という「呪縛」から「罪悪感」があったと朋美さんは振り返ります。

 

別居を決めたのは、事故の際の夫の「暴言」がトリガーでした。さらに彼の心無い言葉を聞くたびに、朋美さんの足は自宅から遠のいていきました。帰るのは月に一度になり、3カ月に一度になり…洗濯機と冷蔵庫を買いそろえるころには、週末に帰らないのが当たり前の生活になっていました。

 

 

最後まで「オレ様」だった夫

最後に会ってから3年の月日が流れたある日、夫から「話がある」と連絡がありました。話を聞かなくても予想はつきました。「別れよう」という彼の提案を反対する理由は朋美さんにはありません。

 

朋美さんにとって、結婚も離婚もどちらでもいいことでした。忙しくて離婚について考える時間も気持ちの余裕もなくて結婚していただけだったといいます。

 

「再婚したい相手でもできれば、また違ったのかもしれませんが」という朋美さん。おそらく夫は、再婚するつもりで離婚を切り出したのだろうと気づいていました。「でも別居している自分には何もいう権利はありません」

 

夫に送る離婚届を準備していると、義母から電話がかかってきました。「出世に響くから籍だけは抜かないでほしい」と泣きながら懇願するのです。なんと時代錯誤な…と驚きましたが、銀行員の世界では今もそういったこともあるのかもしれないと納得。

 

夫が「俺ほどの優秀な行員は、こんなことで左遷されたりしないし、出世も問題ない」と豪語して義母を納得させたと聞き、朋美さんは笑ってしまったといいます。「彼はずっとこんな風に『オレ様』だったんだな、と気づいたんです。それなのにわたしは、なぜか彼が自分の言いなりになると勘違いしていました」

 

それは夫のほうも同じ。彼は受付でほほ笑む朋美さんを、黙って自分についてくる女性だと勘違いしたのでしょう。お互いに相手を自分がコントロールできると考えて結婚して、それが無理だったからうまく行かなかったのだと離婚するときにようやく気付いたそうです。

 

離婚して15年。恋人も困ったときに助け合える男女の友達もいる現在、朋美さんは再婚については考えていないといいます。だからといって「再婚しない」と決めているわけではありません。朋美さんにとって「結婚」が、今は必然ではないというだけ。

 

「今も仕事が楽しくて仕方がない」という朋美さん。もしも家事を対等に分け合って生活できるパートナーが現れれば結婚するかもしれないといいつつも、そもそも「結婚するのが当然」という意識が変ですよね、と笑います。

 

 

 

≪イラストレーター・コラムニスト・漫画家 陽菜ひよ子さんの他の記事をチェック!≫

 

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