その瞬間じつは「海外か家庭の二者択一」だったのに。「そんなこと思いつきもしなかった」夫の後悔
OTONA SALONE / 2024年3月9日 21時1分
日本は少子高齢化と同時に、恐るべきレス社会に突入しています。これは人口問題そのものであり、我々は少子化どころか無子化社会を生きていると言えます。
これらの社会課題を男性側の視点で捉え、執筆を続けるライター・山下あつおみ氏が、レスを抱えた夫婦問題についてレポートします。
前編記事『44歳男性「愛情の反対って無関心なんです。妻が私に」 レス以上の冷め切った夫婦関係、その背景は』に続く後編です。
【無子社会を考える#4】後編
千載一遇のキャリアチャンス、海外赴任。しかし夫がとった行動は
「たとえレスであっても、妻とは会話をしていましたし、家族3人で何度も旅行に行った楽しい思い出もあります。その一方で私は仕事でどんどん重要なポストに駆け上がっていきました。部下を何名も抱えるようになり、出張も多くなった結果、ある日、海外赴任を会社から依頼されたんです。キャリアとしても大きなチャンスだと思いましたが、そのときの妻への伝え方もまたよくなかったと反省しています」
このタイミングでの海外赴任はモトキさん自身、全く想像していなかったものの、さらなる仕事の飛躍を考えると受諾には全く迷いがなかったようです。ところが、ここに現在までの夫婦の亀裂が生まれた決定的なキッカケがあります。
「これは私が100%悪いのですが、上司から海外赴任を打診された時に、その場で承諾してしまったんです。私としては願ってもない千載一遇の機会だと興奮しており、家族も一緒についてきてくれるものだと思い込んでいました。また、すでに妻は仕事を辞めて専業主婦だったので、断られること自体を想像していませんでした。その日、家に帰って妻に気軽に話してみると海外赴任を反対されたんです。このとき初めて妻と私は意見に大きな隔たりがあることを実感しました。あのときの私を見る妻の悲しそうな表情は忘れられないです」
妻の同意が得られなかった海外赴任は、その後のモトキさんの立ち振る舞いでさらに事態が悪化します。
「次の日、出社して上司に再度、海外赴任の件について確認されたのですが、ここで断るか検討する時間が欲しいことを伝えればよかったんですよね。でも実際には家族で行くか単身赴任をするのかは決まっていない旨を伝えつつ、上司に海外赴任を承諾してしまいました。この時点では、まだ妻を説得すればどうにかなると考えていて、この判断が後々、取り返しのつかない結果につながったと思います」
結局、単身で2年海外赴任を決めた。これが致命傷となり、修復は不可能に
結局、海外赴任の話から数ヶ月後、モトキさんは単身で2年間の海外赴任をすることを決めました。このとき、子どもは4歳で幼稚園に通い始めた多感な時期であり、モトキさん自身、家族と離れることは心配ではあったものの、それでも仕事を優先することが、自分のためであり家族のためだと考えていたようです。
「私はどこか楽観的な部分があって、それでも妻は私に気持ちがあると信じたかったのかな。今思えば妻が私に転職を勧めたタイミング、海外赴任を反対したタイミングが夫婦仲を取りもどずチャンスだったのかもしれません」
夫婦間に亀裂が生じたまま海外赴任をしたことで、夫婦の会話がさらに激減。いつの間にか、お互いに何を考えているのかがわからなくなり、仕事や家庭の情報を交換する会話自体がなくなったといいます。
「今の時代だったら、もっと気軽に会話できるツールが沢山ありますけど、当時は国際電話も高く、会話の手段が限られていたことも大きいと思います。海外赴任期間中も定期的に日本に帰るのですが、妻との関係が修復することはなかったですね。これは海外赴任を終えた後も変わりません」
どうやら夫婦関係は物理的な距離では縮まらない溝が深いものになり、現在までの長い年月が経ったようです。
もう修復できるとは思わない。息子が自立したら妻と離婚したい、その真意
「不思議ですよね。最初は悲しかったり、どうにかしようと思っていたのですが、いつから無関心が大きくなったのかな。たとえば最近、妻の趣味が山登りみたいで定期的に出かけているのですが、誰と登ってるとか、どんな山に登ってるとか、正直、全然分かっていないです。お互いに干渉しないことが一番の幸せのように思います。それこそレスが解消されることも望んでいません」
モトキさんの話を聞く限り、お互いに関係が冷め切っていることが伝わります。なぜ今も夫婦関係を続けているのか、モトキさんにその真意を率直に語ってもらいました。
「表面上は普通に会話をしていますが、妻と2人でどこかに出かけることはないですね。いま息子が17歳、順調に成長すれば数年後に自立する年齢になるので、そのタイミングで離婚したいと思っています。これは妻が嫌いとかじゃなくて、2人で暮らす意味が見出せない。それが今の本音です。おそらくですが、妻も同じように考えていると思うんです。海外赴任から帰国後、妻も再び働き始めて、お互い経済的に自立してることも大きいのかな」
最後にモトキさんに、後悔しているとこと、今後の生き方について質問してみました。
「こんな状況に自分がなるとは思っていませんでした。もちろん反省や後悔は沢山ありますが、今は夫婦関係を解消すること、これが唯一の解決策のように思います。とはいえ妻には感謝していますし、夫婦共に息子とは仲がよいので、離婚しても関わりがなくなることはないと思います」
モトキさんの迷いのない言葉から、夫婦関係が修復できる段階ではないことを実感させられました。家庭を疎かにしないよう、パートナーとのコミュニケーションを大切にすることがいかに重要なのか、そのことを今回は実感させられるエピソードでした。シンプルですが、何気ない会話の中に夫婦円満の秘訣があるのです。そしてそれは、レス予防にも繋がっているのかもしれません。
数年後、モトキさんがどのような生き方をしているのか、また改めて聞いてみたいと思います。
前編記事『44歳男性「愛情の反対って無関心なんです。妻が私に」 レス以上の冷め切った夫婦関係、その背景は』
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