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【能登のいま】「いまだ新たに倒壊する家屋」「断水が続く」「自衛隊の入浴支援だのみ」のままなのに、話題が風化していく恐怖

OTONA SALONE / 2024年4月8日 11時50分

輪島市町野町出身のシナリオライター、藤本透さん。ご実家は輪島市の中でも珠洲市と隣接するエリアにあり、1月1日の能登半島地震で被災、罹災証明で全壊の判定を受けました。

 

藤本さんは発災から一日も休まず、現地の情報や行政などの情報をX(旧ツイッター)で発信。能登半島地震をきっかけに増えたフォロワーは2,000を越え、今も町野町を中心とした多くの方の情報源となっています。

 

今回は藤本さんに寄せられた、町野町、輪島市内、能登町、珠洲の方々の声を元に「奥能登の今」を一部加筆・編集のうえで配信します。

 

倒壊した家屋の解体は進まず「ずっと倒壊しっぱなし」。新たに倒壊する危険性すらある

シナリオライターの藤本透と申します。現在は東京都在住です。私の出身である輪島市町野町は、令和6年能登半島地震において甚大な被害を受けました。今も、多くの方々が避難生活を続けている大変な状況が続いております。

 

発災から3ヶ月、発災時に比べて著しく報道が減り、復旧や復興のニュースが聞かれるようになりました。今回は、「奥能登の今」をみなさんにお伝えするために、たくさんの方にご協力をいただきました。被災地の現実を、どうか知ってください。

 

【町野町】倒壊家屋が多すぎて、家財を取り出すことすらできない状態が続く

道路の啓開が進み、応急復旧の段階に入りましたが、倒壊した家屋はいまだにそのまま残されています。4月からの新学期に向けて、せめて通学路を中心に子どもたちが安全に通学できるように整備していただきたいという声を多く聞きます。

 

罹災証明が出たあとも、解体が進まなければ、余震のみならず雪や雨が降るたびに、家の傷みは進んでいきます。

床が抜け、家財の損傷が進む

倒壊を免れたとしても内部の損傷は計り知れない

写真や映像からはわかりませんが、現地では家屋から物が腐るにおいが漂っていたり、雨漏りからのカビによって大事な家が日々傷んでいく姿をさらしています。自分たちの暮らしてきた町が、発災時の姿のままなのは本当に辛く苦しいです。

 

輪島市街はボランティアの方が多く入っていますが、町野町では倒壊家屋が多いため、お願いできることも非常に少ないです。どうにか思い出の品や残った家財を取り出そうにも、被災者の力ではどうにもできず、救出できたとしても保管場所もなく、途方に暮れています。

 

つい先日断水が解消したが、給湯器が壊れていてお風呂はわかせないまま

ライフラインの復旧で特に遅れていたのは水道です。立入が困難な区域を除いて、町野町で断水が解消したのは3月の下旬になってからでした。ただ、敷地内漏水の問題もあり、断水が続いているご家庭も多く、水が出るようになったところでも、水質検査の情報がなく、まだ飲めるかまではわかりません。

 

水道が復旧したといっても、給湯器が壊れている家がほとんどで、自宅のお風呂に入ることはできません。自衛隊の入浴支援が頼りです。

 

また、町野町は浄化槽を使っている家ばかりで、その修理の目途も立っておらず、お手洗いにも苦労します。その浄化槽の修理費用も自己負担、家の修理や家財の買い直しもあるので、生活費の不安は日に日に大きくなるばかりです。

 

避難所の炊き出しがなくなり、食事にも苦労しています。カップ麺やお弁当に頼らざるを得ず、栄養面での心配もあります。商店はあっても、生鮮食品の再開がなされていない(追記:3/25より再開、別途移動スーパーの巡回予定)、車を失っているなどの理由で遠方に買い出しに行けないという方も多いです。

 

さらに、ボランティアや支援で被災地に入ってくださっている方は、炊き出しや物資をもらうわけにはいかず、ご飯代わりにお菓子を食べてる人もいて、とても心配です。

 

高齢者が多い地域のため、情報の伝達も非常に難しいです。各家庭に防災無線があったのですが、今回の地震で使えなくなってしまいました。ボランティアや支援団体からの炊き出しやイベント、ヨガやお茶会などの支援機会が増えてきているのは有り難いのですが、その情報を、自治会長の方などが各所に電話をかけて知らせるなど負担が大きいのが心配です。

 

地区単位で経済が成立していた奥能登。生活が「物理的に成り立たない」状態に

道路の壊滅的な被害によって、日常の買い出しすら困難であり、元の生活が取り戻せるまで途方もない時間がかかるように感じています。

 

家屋がどうにか残せる家も、地震前からの問題である高齢化や離職等で各職人の人手不足が深刻です。家を直したくても、人手不足ですぐには順番が回ってこない状況です。仮設住宅の応援のみならず、今後は家屋修繕のための協力も全国から広く必要です。

 

二次避難によって人口が激減していることもあり、高齢者のみならず子育て世代の支援も必要であるとの声が多くあります。ほとんどの方が家計急変世帯に当てはまります。生活再建のためにの支援を、全壊や半壊の枠にとらわれずにお願いしたいです。

 

仮設住宅もまだ足りません。抽選に外れたので、二次避難所から別の二次避難所へ移らなければならない人、仮設住宅に入居出来ることになっても、住み慣れた一軒家から1Kタイプの非常に狭い場所で暮らしていかなければならない人など、それぞれの苦労があります。

 

また、倒壊を免れ、営業を再開している町野町の商店や飲食店では、震災前と比べて利用者が激減しています。輪島市中心部から離れていて地区単位でミクロ経済を回していた地域であるため、商店や飲食店がなくなれば、現在の広域避難から、人口の流出が止まらなくなるのではないかという不安があります。

 

この地域経済を回すための金の流れが生まれにくい状況をはやく改善するためにも、一日でも早い公費解体と、まちづくり型・ふるさと回帰型の仮設住宅の建設が進むことを切に願っています。

 

今後の復興に向けた人手不足の解消にも、広域避難した人たちが早く地元に戻れるように支援を進めることが重要であると考えます。

 

町野町では、普段から自分の家のメンテナンスや農地の管理を長年自分でやってきた高齢者が多く住んでいます。そんな方々の力と知恵を借りて、地域の住民が知恵を絞って柔軟に復興計画を策定していくことが地域コミュニティの再生に繋がるのではないでしょうか。

 

【珠洲市】道路が復旧していない。いまだ断水が続き、仮設トイレでしのいでいます

長く続いている断水の問題が深刻です。とにかく1日でも早く解消することを、誰もが願っています。仮設トイレは衛生環境上好ましくなく、便秘や脱水になる方の話も少なくありません。

 

ただ、復旧にはまず道路の復旧が必要であり、甚大な被害を被っている路面状況を日々見ていると、難しいだろうという思いはあります。

 

道路は至るところで隆起、凹凸、罅割れがあり、車の走行に影響のある大きな隆起に関しては応急復旧がなされているものの、歩行者は非常につまづきやすくなっているため、高齢者の転倒が非常に心配な危ない状況であると感じています。早くの舗装工事が進んで、誰もが安心して歩けるような道になってほしいですが、それも水道復旧が終わった後と考えると、途方もない時間がかかるだろうと覚悟しています。

罅割れ、陥没など道路の被害の影響が続く

珠洲市の市街地は、商店やコンビニの営業が再開されているが、水道が復旧していないので普通の食事が摂れずに、炊き出しが頼りの人もたくさんいます。衣類が足りないという人の声もいまだに聞きます。

 

発災から3ヶ月経ちますが、食事の支援や入浴の支援など、まだまだたくさんの支援が必要です。

 

【能登町】水道見復旧地域が残る。仮設住宅はありがたいが、身体を動かすスペースとのトレードオフが続く

水道の復旧が進められているなかで、断水が続く地区もいまだに多くあります。水道復旧の見込み時期は当初よりも遅れて4月下旬。1日でも早く水が復旧してほしいと願う一方で、5月までかかるかもしれないという不安も強いです。現時点で、1年の4分の1の期間、自由に水を使えない不自由な生活を送っている地域があることを知っていただきたいです。

 

集落が点在している能登の地理的な特徴もあり、給水場から水を運ぶことも容易ではありません。あるご家庭では、給水所まで片道10kmを不定期に往復し、重たい水を車に運び、入浴は列に並んで自衛隊の入浴支援を受け、洗濯に関しては、たまに金沢に出てコインランドリーで洗濯という生活を、丸3ヶ月の間続けています。高齢者には、肉体的にも精神的にも辛い状況が続いており、仮に蛇口から水が出るようになっても、浄化槽の破損で下水が使えない可能性が高く、住家が無事だった世帯でも”普通の生活” から程遠い状況が続いています。

 

それでも、今後の生活再建のことを考えると、仕事を捨てて二次避難をするという選択をすることはできず、発災以降頻発している空き巣被害に怯えながら遠方で生活するよりは、自分たちの大切なものを自分たちで守るしかないと苦しい生活を続けているのです。

 

二次避難をしたくてもできなかった世帯、そうした世帯が今被災地に残っていること、その人たちが地域の生活を支え、復旧作業に従事していることをどうか忘れないでいただきたいです。

 

能登町の温泉施設などの被害も深刻です。奥能登の医療介護を担っている柳田温泉病院がクラウドファンディングで再建の支援を募っていますが、クラウドファンディングが出来るような施設ばかりではなく、支援を募りたくてもその方法がわからないところが大半なのではないでしょうか。能登の人は、お返しはきちんとしないと、いう考えがあるため、クラウドファンディングのリターンに「なにもお返しするものがない」と思い込んでしまっているのかもしれません。

 

観光施設の被害も大きく、再建の予定を聞くことができないまま、不安な日々が続いています。ただ、もしこれらの施設はなくなってしまったら、帰省客の宿泊施設が大幅に減少してしまうなど、最終的に今後の地元民の生活にも大きな影響を与えることになります。

 

 

能登町に限らず、高齢者が家を建て直すことは非常に難しいため、まちづくり型・ふるさと回帰型の仮設住宅の建設が望まれます。震災後に認知症が進んだ方の調査が始まったと聞き、住み慣れた土地を離れて暮らすことの弊害も、非常に心配しています。

 

その一方で、仮設住宅の建設地にあてられたため、子どもや大人がスポーツに利用できる場所がなくなってしまいました。現在、スポーツをしている子供たちは車で2時間ほどの距離にある体育館まで通っていますが、震災前に比べて練習時間は大きく減少してしまいました。それぞれ目標があり、打ち込んできたものが震災が理由とはいえその機会さえ奪われてしまうのは、本当に辛いです。

 

能登町では、大人の健康管理にも体育館などはスポーツ施設は広く利用されていて、地域に必要な存在でした。今すぐではなくても、どうにか再建や代替の道を示してもらいたいと願っています。

 

また、どの地域もそうだと思うのですが、炊き出しや物資配布などの支援情報が地元民に広がりません。SNSは便利で情報伝達が早いことが強みですが、高齢者で使いこなせる人がほとんどいないのが現状です。

 

前編記事ではより震源地に近かった珠洲市、能登町の声を伺いました。続く後編では能登町の市街地、輪島市の現状を伺います。

 

つづき>>>「能登の復旧が進まない」のは、誰にとっても他人ごとではない。これから国全体が高齢化すると同じことが繰り返される

 

≪OTONA SALONE編集長 井一美穂さんの他の記事をチェック!≫

 

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