最近、イライラしたり急にのぼせたり。これって更年期障害?【医師に聞く#2】
OTONA SALONE / 2017年10月31日 16時0分
40代女性がひそかに悩む身体のこと。さまざまな分野に関して、医師に教えてもらいます。さて、アンケートでも特に目立つのが「更年期」についての悩み事。更年期に出てくる症状は? 対策法はある? そんな婦人科分野について、山王病院の婦人科医である黒澤貴子先生に聞きました。第2回めのお悩みは『更年期障害のスタート時期』。
【質問】PMSがひどい私。耳が詰まった感じがするのは更年期?
「年々、不眠やイライラ・のぼせがひどくなってきている気がします。元々PMSがヒドいので更年期とともに悪化しているのでしょうか? 今46歳ですが今年の夏はとくに耳が詰まる感じがして、 汗が吹き出るような体験を何度もしました。これがホットフラッシュなのでしょうか?それともただ暑さのせいですか? また更年期障害は重い人と軽い人の差があると聞き、自分は重いのではないかと不安です。最近漢方を飲み始めましたが改善するのでしょうか?」(46歳・ショップスタッフ・女性)
更年期症状は、閉経期の女性ホルモンの変化に伴う自律神経の失調によって起こる
閉経が近づくと、卵巣から分泌される女性ホルモン「エストロゲン」が徐々に低下し、脳下垂体から分泌される「卵胞刺激ホルモン(FSH)」が上昇していきます。これらのホルモン変化に伴い、様々な身体症状が出るようになります。これが「更年期症状」です。
よく見られる症状として、「ホットフラッシュ」と呼ばれるほてりや発汗のほか、冷え、動悸、疲労感、頭痛、肩こり、めまいなどがあり、これらの症状は自律神経の失調によって起こります。ほかに精神症状としてイライラや怒りっぽいなど情緒不安定になったり、気持ちが落ち込んだり、不安になったり。
こうした「更年期症状」が、日常生活に支障をきたすほど深刻になると「更年期障害」と呼びます。
ご相談にある「汗が吹き出るような体験」が、もし夏の暑い日に汗をかいただけなら更年期症状ではありませんが、例えば冷房の効いたところで、周りの誰も暑がっていないのに自分だけ急に汗が吹き出た、ということなら更年期症状の「ホットフラッシュ」と言えるでしょう。
また、「月経前症候群(PMS)」とは排卵後に卵巣から「プロゲステロン」が分泌される時期に起こる症状で、イライラ、怒りっぽい、憂うつ、といった精神症状や、乳房痛、腹部の膨満感、頭痛、手足のむくみといった身体症状がみられます。更年期症状と似た症状もありますが、PMSは排卵後に症状が出現し、月経が開始すると消失するのが特徴で、20-30代の卵巣機能が正常な女性でも起こり、必ずしも更年期に悪化するとは言えません。ただ、女性ホルモンの変化に体が敏感な方はPMSも更年期症状も強く感じるかもしれません。
気になったら婦人科へ。隠れた病気が見つかることも
閉経期の女性なら誰でも「更年期症状」を経験します。これまで自覚したことのない体の変調を感じると思いますが、自覚症状が軽い場合は必ずしも治療の必要はありません。しかし日常生活や社会生活に支障をきたす「更年期障害」の状態なら、一度婦人科で相談してみてはいかがでしょうか。
更年期障害の治療を専門に掲げている婦人科クリニックや「女性ヘルスケア専門医」という更年期医療に精通した婦人科医を受診して、カウンセリングを受けるだけでも気持ちが楽になるかもしれません。
ただし、更年期だから、と思っていたら思わぬ病気が見つかることもあります。例えば、ほてりや発汗、動悸は甲状腺機能亢進症の「バセドウ病」でもみられる症状ですし、耳鳴りやめまいは内耳が原因の「メニエール病」だったり、疲労感、倦怠感は「肝機能異常」が原因だったり。
ご質問にある「耳が詰まる感じ」も頻繁に起こるなら耳鼻科で相談してみるとよいでしょう。また、普段から人間ドッグなどで全身の健康状態をチェックしておくことも大切です。今感じている症状がすべて「更年期障害」ではないかもしれません。
更年期障害の出やすさは性格や環境が左右する
閉経期のホルモン変化は誰でもほぼ同じように起こりますが、更年期症状が軽いか重いかはホルモン変化だけでなく、社会的要因や心理的要因が関係していると言われています。
例えば子育てや介護、夫婦関係、仕事などで悩みやストレスが多いと更年期症状を強く感じたり、マジメで几帳面な完璧主義者の方は更年期障害になりやすい傾向があります。
一方、良い意味で何事も適当にこなせる方は更年期症状が軽い傾向にあるようです。ですから、更年期症状に対して深刻になりすぎないよう、悩みやストレスを上手に解消し、あまり神経質にならないこと。そして規則正しい生活、十分な栄養と睡眠、そして適度な運動で健康な体を維持する努力も大切です。
また、ご質問にあるように「漢方薬」を飲んでみるのもよいでしょう。漢方薬は体の「気」「血」「水」のバランスを整え、更年期症状を和らげる効果が期待できます。漢方薬よりも直接的な効果が得られるのは「女性ホルモン補充療法」です。
ただし漢方薬も女性ホルモン補充療法も、例えば鎮痛薬のように1回内服したらすぐに効果が出るというものではなく、長期間の内服や補充を続けることが必要です。
さらに、気になる症状に対して個別に治療を行う「対症療法」もあります。例えば精神症状が強い場合に精神安定剤を服用したり、寝つきが悪い場合に睡眠導入剤を使ってみたり。こうして自分の心身の健康を保ちつつ、様々な更年期症状に応じて適切な薬物治療を取り入れ、なるべく快適な「更年期ライフ」を目指しましょう!
(記者より)
避けて通ることができない更年期障害は決して異常なことではありません。ホルモン低下が引き起こす色々なトラブルに敏感か鈍感か。敏感であればあるほど症状がツラくなってしまうのであれば「こんなもんか」と受けて止める方がラクじゃありませんか?
「いずれ誰にも更年期障害がやってくる」と受け入れて、その症状が少しでも軽くなるように今から生活習慣を見直すなどできることからケアを始めましょう。
【募集中です】知りたいこと、気になることがある方は、フェイスブックのOTONA SALONEアカウントに記事コメントをお寄せください! https://www.facebook.com/otonasalone/( https://www.facebook.com/otonasalone/ )
お話・黒澤貴子先生
山王病院 リプロダクション・婦人科内視鏡治療センター 医長
東京大学医学部附属病院などで技術・知識を研鑽の後、当院では不妊検査および人工授精や体外受精などの不妊治療、そして不妊の原因となる婦人科良性腫瘍(子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫など)に対する内視鏡手術に取り組む。不妊の悩み、不妊検査や治療に対する不安、また内視鏡手術の相談相手として、同性の立場で丁寧に接している。
(取材・文/根本聡子)
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