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「成分に自信はあるけれどお客さんがこない」崖っぷちの新製品が起こした「ある種の軌跡」とは

OTONA SALONE / 2024年6月6日 20時11分

オトナサローネにもよくご登場いただく薬剤師、笹森有起先生。オンライン漢方サービス「プラス漢方」の代表取締役薬剤師を務め、一昨年には同社オリジナルのエクオール含有サプリメント「エクオールバランスビューティ」をリリースしました。更年期世代に寄り添うカウンセリングを一層強めています。

なぜ漢方薬剤師がエクオールに着目したのか? なぜオンラインサービスを選んだのか? その背景を伺いました。

前編記事『「起きたら客が100人増えてないかな」コロナ禍に起業した薬剤師が「ありがとう」を求めてサービス追及を行う「これだけの原動力」』に続く後編です。

 

「顧客ニーズ」だけを捉えていても商品は売れないという「厳しすぎる現実」が再び立ちふさがる

「こんどは、顧客の声だけを聞いて作りすぎてしまったのです。販路を逆算して作っていなかったことで、広告で売ろうとしても原価が高く、獲得単価が高すぎる商品になってしまいました。本来は顧客1人獲得するためにいくら広告が必要なのか、獲得単価の側から商品の成分内容を考えていくのが王道なのですが、それをしなかったので想定の3倍くらいのコストがかかってしまって。でも、顧客の声を聞いていますし、成分にも自信があります。商品の力はあるんです。これは売り方を変えなければならないなと」

 

ターゲットが類似しているのはどこか……。笹森先生がたどり着いたのは、なんと「コストコ」でした。販売を引き受けてもらえないか地道に交渉。約半年がかりでコストコでのオンライン販売を契約。

 

「健康意識が高く、新しいものへのトライが好き、ショッピングを楽しむ客層という狙いは大当たりでした。23年7月、カートが公開された当日からいきなり大量の受注が入って。正直、オンラインで売れるものなのかなと半信半疑でしたが、想定の100倍くらいの単位でどんどん売れていくんです。ただし、取引することを優先して納入価格をかなり勉強したため、こんどは売れても儲からないという事態に陥りました。それでも、何も売れていないよりははるかによい状態にはなりました」

 

誠実に顧客に向き合い、いい製品を作った自負があったため、強気の交渉にも成功。事業が軌道に乗りました。

 

次のトライは「置き薬」スタイル。「意外にも売れたもの」とは?

笹森先生がいま新たに挑んでいるのは「富山の置き薬」スタイルでの漢方の普及。置き型健康社食サービス「OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜)」を運営する(株)KOMPEITOと協業し、新鮮なサラダやフルーツ、お惣菜などの商品が届く冷蔵庫付近にボックスの設置を進めています。

 

「コロナ後にオフィス出勤が回帰したこともあり、福利厚生で漢方サブスクを使えないかという法人からのお問い合わせが相次ぎました。そんなときにちょうどKOMPEITOとご縁があり、健康意識の高い企業で導入される置き型の健康社食サービスとの協業ならば相乗効果があるのでは。この5月に協業がスタートしたところです。今回はラインナップに一般薬と漢方の両方を入れ、入れ替えながら人気を見ています」

 

ちなみにまで、どんな薬がよく利用されるのでしょう?

 

「ロキソニン、アリナミンなど、ドラッグストアで売れるものがやっぱり売れますね。お昼休みにドラッグストアまで行っている時間がないけれど、ちょっと調子が悪いという方の駆け込み寺になっているのではと思います。もうひとつ、膀胱炎の薬が意外によく売れます。ということは、慢性的な不調によく使われるという仮定で、たとえばお天気頭痛がある方に五苓散という体内の水分調節をする漢方が役立つのではないかなど、新たに仮定できることも多く興味深いです」

 

じつは漢方は、日本発祥の医薬体系。明治維新以降は西洋医学推進の流れで途絶える寸前になりましたが、近年改めて「未病」の先進的な概念が再評価され、利用率が上がっています。

 

「日本で再び普及すれば、この東洋の恵みともいえる漢方の体系をベトナム、タイ、インドネシアなど中華文化圏へと届けることができるのではないかと考えています。東南アジア圏は近年急激に健康意識が高まり、高品質な日本の医薬品に強く興味を持ってもらえるタイミングなんです」

 

笹森先生がこうした事業をつぎつぎに進める原動力はいったい何なのでしょうか?

 

「いいものを人に勧めて感謝されたときって、とても気持ちがいいですよね。美味しいのに知られていない老舗の飲食店を友人に勧めて、あのお店美味しかったよ!と次に会うなり言われたときの、あの嬉しさ。私の両親は2000年から調剤薬局を営んでいますが、じつは薬局はなかなかしんどいお仕事です。でも、2人にとっては患者さんからいただく感謝が原動力なのだと思います。私の原動力も同様に、ありがとうという言葉にあります。世界中がありがとうで満ちる日までこの仕事を続けていきたいと思っています」

 

つづき▶『「起きたら客が100人増えてないかな」コロナ禍に起業した薬剤師が「ありがとう」を求めてサービス追及を行う「これだけの原動力」

 

お話/笹森有起先生

pluskampo株式会社 代表薬剤師

1988年青森県出身。2012年東北医科薬科⼤学卒業。一児の父。 薬剤師として働く中で漢方薬に出会い、自身の自然治癒力を最大限に引き出すことによって体が強くなり、結果として症状が緩和するという漢方薬に魅力を感じ、知見を深める。 難しい印象の漢方薬を身近な存在として気軽に利用してもらいたいという想いで+kampoのサービスを立ち上げる。 なかでも家庭や職場で大きな役割を担い、自分のことを後回しにしがちな女性に寄り添い、より多くの方の不調を解決しすこやかで質の高い生活を実現することを目指す。

 

≪OTONA SALONE編集長 井一美穂さんの他の記事をチェック!≫

 

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