どうする?既婚女性が「不倫バレ」した瞬間【不倫の清算・リバイバル】(後編)
OTONA SALONE / 2024年6月25日 19時31分
恋愛心理をただひたすら傾聴し続けたひろたかおりが迫る、「道ならぬ恋」の背景。後編です。
止められない関心
彼と親しくなるにつれ、C子はどんどん興味を引かれていった。夫とは違う無骨な雰囲気や、これまで運動とは無縁の暮らしだったので教えてもらう知識も新鮮だった。何より、自分にはない若々しさ、筋肉の乗った体や今風の言葉遣いなどが、C子の心を動かした。
彼のほうもそんなC子を拒否することはなく、気がつけばサプリメントを買うという目的でふたりで買い物に行くようになっていた。
不倫、という言葉をこの頃からC子は意識していたそうだ。
「前の会社でも不倫している人たちはいたし、修羅場も聞いていた。でも遠い世界の話だと思っていたし、自分が『する側』になるなんて考えたこともなかった」
でも、彼への関心は深まるばかりだった。彼のほうもふたりのときはプライベートな話をしてくれるようになり、ジムに行けばまた顔を合わせる。そうなると引き際がわからなくなる。
LINEのIDも交換し、「今日は来るの?」というメッセージが彼から届くのを心待ちにしている自分に気がついたとき、C子は彼と一線を超えることを望んだ。
そしてある日、思い切って彼に告白する。「私は人妻だから、片想いでもいいの」と言うC子に対して、彼は「僕も好きだから」と腕を伸ばした。
そうして不倫の関係が始まった。
バレさえしなければ大丈夫。「上手くやれると思った」しかし… 次ページ
「他言無用」が通じない世界
彼との付き合いは順調だった。多忙な夫は彼女の浮かれた様子に気がついても「ジムが楽しくて良かったね」としか言わないし、ひとりの時間が長いので彼の都合さえつけば平日いつでも会えた。
彼を迎えに行って一緒にジムに通い、トレーニングが終わったらホテルに直行して行為を楽しみ、それから彼を降ろして帰宅する。そんな毎日に、C子の心はずっと興奮状態だった。
資格のための勉強時間は大きく削られたが、気にはならなかった。それより彼と過ごす時間のほうが大事。夫に不審がられないよう家事はちゃんとこなすし、夜のベッドも誘われれば付き合った。
バレさえしなければ大丈夫。「上手くやれると思った」とC子はうなだれる。
ひとつだけ不満があるとすれば、彼との関係を誰にも話せないことだった。
不倫なのだから当然とわかっていても、C子は誰かと話したくてたまらなかった。「不倫をしている自分」に舞い上がっていた、とその頃をC子は振り返るが、彼との「秘密の情事」を語りたいと思ったのは、そんな自分を知って欲しい気持ちが強かったからだ。
それがどう思われるかという想像力が足りていれば、今のような事態にはならなかったかもしれない。
ジムを紹介してくれた元同僚はダメだし、結局彼女はジムで知り合った一番仲の良い女性に打ち明けてしまう。
相手は驚いていたが、興味津々で話を聞いてくれた。「誰にも言わないでね」としつこく念を押して、C子は彼と過ごす時間について語った。やっと出口を見つけた高揚感が、彼女の口から溢れ出た瞬間だった。
が、それから数ヶ月して、C子は彼から怒りのメッセージを受け取ることになる。
「僕たちのことがジムで噂になってる。どうして話したの?」
それを読んだとき、C子は絶望感に襲われた。
どうして、と思っても心当たりはひとりしかいない。慌てて友人に連絡してみると、「ごめん。そんな話題になって……」とほかの会員さんに話されてしまったことを知った。
「誰にも言わないで、なんて通じないよね」
結局、「人の口に戸は立てられない」のだ。ジム内での不倫話などそれまでも耳にしていたが、自分がその対象になる可能性をC子はすっかり忘れていた。狭いコミュニティで誰かに話すことは、それだけ不倫がバレるリスクが高くなるだけなのだと、C子は今さらながら大きく後悔した。
彼には正直に話すしかなかった。嘘をついても、いずれ自分が人に話したことは知れるだろう。そうでないと、「あの日ジムが終わってからホテルに行ったんだって?」など、他人が知るはずがないのだ。
彼の怒りは治まらなかった。もう会いたくない、ジムにも来ないで欲しいときっぱり言い渡され、C子は身動きが取れなくなった。
過去がいつまでもつきまとって… 次ページ
不倫の過去はいつまでもつきまとう
C子はスポーツジムを辞めた。
顔を出しても、周りからは「不倫している人」という目で見られる。ジムのスタッフにまで知られているかもと思うと、受付に立つことすら怖かった。
彼とはそれっきりになり、消息はわからない。LINEで謝っていたが、ある日を境にブロックされ、電話も着信拒否されていた。
C子たちの関係をバラした友人ともそれ以来疎遠になり、ジムを辞めてから連絡はない。
「会員さんに会うのが怖い」
とC子は繰り返す。
もし夫といるときにばったり出くわしてしまったら。
自分のいないところで夫の耳に噂が入ったら。
帰宅した夫から「話がある」と不倫のことを切り出されたらどうしよう、としばらくは胃が痛くて顔もまともに見られなかった。
たまに買い物に行っていたスーパーには顔見知りの会員さんが働いているので、足を向けることができない。スポーツジムの周辺には近づきたくないし、今もC子は外出先で人の視線に怯える生活をしている。
「人の噂も七十五日」というが、不倫のように公にできない男女の仲は人の記憶に残りやすい。
たとえそこから離れたとしても、過去は変えられないしいつ何処でその話が出るかは誰にもわからないのだ。
高揚感に溺れて人に話してしまったことが、C子の人生を大きく狂わせた。
だが、そもそもその引き金を引いたのもまた、C子自身なのである。
この記事は2017年12月に初回配信されました
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