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「20代のほうが50代よりヤバい?」男性更年期を回避するたった一つの「案外と簡単な方法」とは

OTONA SALONE / 2024年7月2日 21時1分

40代50代働く女性のためのメディアであるオトナサローネは、男女両性が迎える更年期に等しく課題感を持ち、男女がお互いに助け合い脱落を生まない社会環境を実現するための啓もう活動「アフタヌーンエイジプロジェクト」を進めています。

 

さて、私たち団塊ジュニア世代が50代に差し掛かるとともに、急激に関心が高まりつつあるのが「男性更年期」。性機能医療のトップランナー、順天堂大学医学部附属浦安病院 泌尿器科 教授 辻村晃先生にお話しを伺いました。

 

前編記事『このままでは日本人が絶滅する!?男性更年期、ED、セックスレス…男性医療の第一人者が語る「本当のヤバさ」』につづく後編です。

 

男性更年期を回避するたった一つの「案外と簡単な方法」とは

――男性更年期を回避する方法にはどんなことがあるのでしょうか?

多趣味で、友人も多く、楽しい人生を送ってる人は男性更年期になりにくい。テストステロンは、笑いのホルモンでもあり、よく笑うことは大切です。ヒロミさんは笑顔のイメージですから、もしかしてお仕事柄周囲に気をつかい過ぎたのかもしれません。

 

僕は患者さんたちにいつも、「趣味を持ったほうがいいですよ」「睡眠を取ったほうがいいですよ」「寝不足はだめです」「食事はバランスよく」「適度な運動を」という基礎的なポイントのほか、「大笑いするといいですよ」とお伝えしています。

 

たとえば、Mr.ビーンの映画を見ただけでテストステロン値は上がります。同じ時間に天気予報を見ていた人は上がっていないのです。

 

楽しいことをしたほうがいい。趣味を持つほうがテストステロンが上がります。狩りにいって、鹿を仕留めた、その鹿が倒れた瞬間にテストステロン値は上がりますし、外した人は下がります。仕事がうまくいっている人は上がる、上がると生活がうまく回る、いい回転になっていくのです。結果、社会的地位が上がっている人はテストステロン値も高いのです。

 

――男性にとって、自慰を含む性行為とテストステロン量に関係はあるのでしょうか。セックスレス状態は男性力を下げますか?

あまりありません。テストステロン値とは、射精回数が多ければ上がるというものではないのです。楽しいことをして笑うのが大事。もちろん、性行為をせずぼーっとしてるよりは、行為そのものが楽しいことですから上がるでしょう。でも、行為自体よりも、恋人ができていちゃいちゃしてるほうが上がります。

 

――つまり、妻は気の向かない性行為をがんばるよりも、夫と一緒に楽しい映画やドラマを見て笑って過ごすことを心がけたほうが、家族のQOLを保つ上では意義があるということですね。

もうひとつ、生活習慣面でも助けてあげてください。太っているだけでテストステロン値は下がりますし、下がると太ります。メタボ因子、高血圧や高コレステロール値、糖尿病でもテストステロン値が下がります。因子をたくさん持つほど下がり、男性更年期的になるのです。3段論法からいうと、太らないほうがいい、血圧が上がらないほうがいい、糖尿病も気を付けるのが大前提です。

 

――テストステロン値は計測すればわかるのでしょうか。日頃から定期チェックしたほうがいいのですか?

もちろん、普段から気にしておいたほうがいいです。病院での血液検査のほか、自宅計測のキットもあります。最近はまれに人間ドッグの項目に入るようになりましたが、基本的に測る機会がないので、泌尿器科を受診して、「最近男性力が気になるので測ってください」とリクエストしてかまいません。

 

一般論で、テストステロン値が低いほうが骨密度が落ちますし、動脈硬化も起きやすい。それらは外側からは見えないトラブルですから、テストステロン値を測っておくことで気がつくことがあるかもしれません。

 

中年、壮年男性よりも、むしろ「20代が圧倒的にヤバい」と断言できる理由

――性機能面の悩みがきっかけでの来院が3割というのは、女性からすると「多いな」と感じます。具体的にどのような悩みが多いのでしょうか。

僕は日本性機能学会の副理事長を務めています。昨年、日本性機能学会が25年ぶりに男性のEDに関する調査*1を実施しましたが、男性のEDは驚くほどに増加しています。

 

1999年の調査時は1130万人だったEDが、なんと2023年は1400万人。この20年で日本の社会が高齢化したしたことがひとつの原因ですが、もうひとつ、若い人のEDが増えているのが見過ごせません。

 

じつは、前回調査では「20代で勃起力が落ちる」なんてことは考えていなかったので、30代以上を対象にしていました。でも、日本性機能学会は若い人の性機能障害にも注意を払ってきましたので、今回は20代も対象にしました。案の定だった、という結果です。

 

20代の性欲、勃起力は、30代より落ちているということがわかっているほか、ED増加分のうちの何割かは男性更年期であろうとも考えられています。

 

――驚くような結果で言葉が出ません。オトナサローネおよび主婦の友社は「日本の衰退」を少しでも遅らせるため、少子化を止める方策をひとつの提言にしていますが、まさかの若者のED。

EDの定義は「性交を行うのに十分な勃起を達成または持続できないこと」です。あくまでも僕の推測ですが、おそらく若い世代は年がら年中ネットで性的な動画が無料でいくらでも見られることが要因の一つではないかと思います。もうずっと動画を見ていますから、生身の人間との性交より動画のほうがラクなのではと。

 

というのも、勃起可能で、自慰もできているのですが、生身の人間に対してEDなのです。合計特殊出生率が1.20まで下落してしまったのはコロナ禍のせいだと楽観的に捉える向きもありましたが、若い世代が生身の女性が存在しなくても性的欲求を満たす手段を手に入れてしまったことでさらに下落するのではないかと考えています。23年の韓国の合計特殊出生率が0.72の低値で話題になりましたが、日本も早晩その水準まで下落する可能性が高いでしょう。

 

なぜ20代の性的能力が「びっくりするくらい」落ちていったのか、その背景を推測すると

――そもそもどうして、先生は20代がおかしいと気づいたのでしょうか?

男性不妊症の原因のうちEDをはじめとする「性機能障害(射精障害)」は平成9年度の調査で3.3%でしたが、平成27年度の調査*2で13.5%まで増えていたというデータがあります。そのため今回は20歳からを対象にしたところ案の定でした。

 

政府は年間出生数が80万人を切るのは2030年以降と推測していましたが、だいぶ前倒しで2022年に切ってしまいました。この圧倒的に早い少子化の背景で、生殖の問題、性の問題、男性更年期の問題、すべてが連続しているのではないでしょうか。

 

というのも、冒頭で1400万人が勃起障害を持つと述べました。これは日本の男性人口のじつに30%くらいですが、この人たちに「EDで困っていますか?」と質問すると、じつは13%しか困っていません。勃起力は落ちているけれど性行為もしていないので特に困っていない、なぜならセックスレスが7割なので、EDで困るという自覚もないんですね。

 

――EDは困るのではないかと思いますが、なぜ困らないのでしょうか……?

治療意向の調査も示唆に富みます。EDの治療率は約1.4%ですが、治療と受けたい意向を持つの人その5倍、7.1%。対して、「早漏」の治療を経験した男性は4.6%なのですが、治療を受けたい意向を持つ人はなんと50%もいるのです。EDより早漏のほうが圧倒的に多い、これはどういうことなのでしょう。

 

以下は僕の推測に過ぎませんが、ネットで動画を見ているからではないかと思うのです。男優さんは30分くらい続けますよね、あれが普通だと思っている人が圧倒的に多い。早漏の医学的定義は3分なので、まったく問題のない人が自分を早漏だと感じているのではないか。生身の人間を相手にすると3分で終わってしまうと悩んで、さらに動画に逃げていくという悪循環が起きているのではないかと。

 

セックスレスという言葉は日本にだけあります。日本性科学会が1994年に「特殊な事情が認められないにも関わらず、カップルの合意した成功あるいはセクシャル・コンタクトが1か月以上なく、その後も長期に渡ることが予想される場合」と定義したものです。奧さんとはしていないけれど、外ではできるという人も想像するにいるのでしょう、その実数は調べようがありません。

 

――ありがとうございます、こうした問題は男女共同参画や人口問題、夫婦別姓問題、共同親権問題など、さまざまな他の問題と接続しながらこの国を取り囲んでいると認識しました。またお話をお聞かせください!

 

つづき>>>このままでは日本人が絶滅する!?男性更年期、ED、セックスレス…男性医療の第一人者が語る「本当のヤバさ」

お話/順天堂大学医学部附属浦安病院泌尿器科 教授 辻村 晃 先生

日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医、日本生殖医学会 生殖医療専門医。兵庫医科大学卒業。国立病院機構大阪医療センター勤務後、ニューヨーク大学に留学し細胞生物学臨床研究員を務める。大阪大学医学部泌尿器科准教授などを経て、順天堂大学医学部附属浦安病院泌尿器科教授。特に生殖医学、性機能障害の治療に注力し、不妊に悩む数多くの夫婦を助けてきた。

*1 辻村晃. 性機能障害に関する全国実態調査の概略. 日本性機能学会雑誌. 2023: 38 : 2 : p125 

*2   厚生労働省子ども・子育て支援推進調査研究事業.我が国における男性不妊に対する検査・治療に関する調査研究 平成27年度総括・分担研究報告書.p37

 

≪OTONA SALONE編集長 井一美穂さんの他の記事をチェック!≫

 

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