「オルカン選べば完了」ではなかった新NISA「その前に考えておくべきたった1つのこと」元ファンドマネジャーがそっと指摘#4
OTONA SALONE / 2024年7月16日 20時0分
24年年頭にスタートした新NISA制度。「オルカン」「S&P500」という言葉はすでにおなじみとなりました。しかし、「よくわからないなりに何とか始めました」という人だけでなく、「始めないといけないのはわかっているけれどどうしていいのかわからない」という人もまだまだいるでしょう。
「オルカン積んでるから俺はOK」と考えている人に、元ファンドマネジャーの澤田信之さんから「それが危険な場合もある」と確認事項が。さっそくご説明いただきましょう。
【元ファンドマネジャーが指摘「新NISAでやらねばならなかったこと」】#4
(この記事は7本シリーズの4本め/1/2/3/4/5/6/7)
「ライフプランとキャッシュフロー表」が秘めるもの
こんにちは、元機関投資家・ファンドマネジャー、現在は文筆業兼個人投資家の澤田です。皆さんの資産運用は順調ですか? 今回は「資産運用の5ステップ」の「3.アセットアロケーション」についてお話しします。大切な部分ですので、2回に分けてお伝えしますね。
【資産運用の5ステップ】
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- 資産運用の公式 家計の損益計算書とバランスシート
- ライフプランとキャッシュフロー表
- アセットアロケーション
- コアサテライト戦略とアクティブ・パッシブ
- 実践(元機関投資家の資産運用)
前回は、ライププランとキャッシュフロー表についてお話ししました。ライフプランは固定的なものではなく、人生に発生しうるイベントを想定すること、子どものころの夢みたいなものなのでどんどん変更可能、その金銭的可視化をするのがキャッシュフロー表である、という内容です。気になる方はぜひ前回分をご覧ください。
「資産をどう配分するか」。これこそが資産運用の成果を決める最大因でした
アセットアロケーション、は日本語で言うと資産配分です。日本株、債券(預金)、外国株、外国債券、不動産、そのほかにもVC(ベンチャーキャピタル)や仮想通貨など、個人投資家にとって投資可能なアセットクラス(資産の種類)はたくさんありますが、それぞれにどれだけの比率で投資するか、そのことをアセットアロケーション(以下AA、と記述します)と呼びます。
なぜそれが大切か、というと、何十年という期間に渡る資産運用の結果にとって、おそらく90%以上の決定要因がAAだからです。
もう一度資産運用の公式に戻ってみましょう。
資産増減 = 収入 - 支出 +(運用資産額 × 運用利回り)
運用資産額が増えてくると、収入・支出の管理に加えて運用利回りがとても重要になります。仮に毎年100万円貯まる家計があるとしましょう、運用資産額も1000万円になりました。その翌年、運用資産額は1100万円になります。運用しない場合、毎年の推移は、
1000→1100→1200→1300→1400→1500→1600→・・・・
となりますね。
ここで実現可能な運用利回りとして3%を設定すると、
1000→1130→1264→1402→1544→1690→1840→・・・・
と、その差はどんどん拡大していきます。
差の分を抽出すると、
0→30→64→102→144→190→240
徐々に加速しているのが分かりますね。収入-支出 の額よりも 運用の有無 の差が大きくなっているのが分かると思います。
これを資産運用の世界では「複利効果」と呼びます。投資金額が増加することで追加的に資産が増加していきます。運用を始めるのは早ければ早いほど良い、と言われるのはこの複利効果を享受することが目的です。
資産クラスと期待リターンの関係は大まかに決まっている
運用は実際にしてみるまで結果は分かりません。そこで期待リターン、という概念が持ち出されます。株は債券より変動率が高い、だからより高いリターンが期待できる、という意味での「期待」です。
単一国で見た資産クラス毎の期待リターンは高い順に、
株 → 不動産 → 債券 → 預金
となります。
国によって成長率が違いますので、低成長の日本に住む我々にとっては、
外国株 → 日本株 → 不動産 → 外国債券 → 債券 → 預金
の順番になります。
個人投資家の資金量でしたら外国不動産、外貨預金はまとめて外国債券のところに入れていただいて大丈夫です。この組み合わせをどうするかが、運用利回りの決定要因としてとても重要なのです。
じゃあ、オルカンだけでいいじゃない?
となると、ですよね、オルカンだけでいいと思いますよね。ところがそうではないところが今回の記事のミソです。
期待リターンが高いのは変動率(以下、リスク、と呼びます)が高いからです。株は上下20%くらい動きますし、外国株はそれに為替の変動も追加されます。
長い目で見れば、名目成長率がプラスの世界では株価は成長率以上に上昇しますし、債券もおよそ成長率程度のリターンをもたらします。為替市場も内外のインフレ格差を反映する程度の変動に落ち着くことでしょう。
ですが我々個人投資家は永久に運用を続けることはできません。子どもが生まれる、とか、不動産の購入をするなど自発的な性質のものに加え、就業先が倒産する、離婚をせまられるなど、強制的にライフプランを変更される可能性は常にあります。
株価が下落したり為替が円高に振れた時にそれが起きたら大変です。子どもの教育にはお金がかかります。特に海外留学や医学部はマンション並みの金額です。不動産の購入はローンを組む場合が多いですし、ましてやペアローンとなると離婚した時の資産分割に伴う現金の支払いたるやもう、想像するだけで恐ろしくなってしまいます。
ライフプランに基づくキャッシュフロー表は一見机上の計算に思えますが、こうした変更時の影響を見える化しておくには最良の方法だと思います。
そこでAA、アセットアロケーションが効いてくるというわけです
金融市場は実体経済の鏡です、ちょっと先を見通すクリスタルボールかもしれません。実体経済には景気循環があって、それを先取りする形で株価、金利、為替市場は変動します。
それを資産運用に反映するには2つの方法があります。景気循環を先取りしてAAを決める方法と、株価、金利、為替の相関関係を使ってリスク管理する方法です。前者は積極的、後者はリスク回避的な手法と言えます。
景気循環を利用して経済の先行きを予想する、そして金融市場の先取りをする、というとかっこいいですが、実際にはなかなか難しいです。景気予測をするエコノミスト、市場予測をするストラテジスト、という職業がありますが、どちらも予測を業としていながら実態はストーリーテラーに過ぎない場合も多いです。私も経験があるのですが、うまく言葉で説明できる状態になったころには市場はすべて織り込み済み、経済指標が予想通りでも市場は逆に動いている、なんてことも起こります。
そこで個人投資家の方にお勧めするのがリスク回避的な手法であるAAです。
金利が上昇するほどに景気が良ければ、株価も為替も上昇(円高)するでしょう。逆に金利を下げなければならないほど景気が悪ければ、株価は下落、為替は円安になることが多いと思います。この市場間の動きの特徴(相関性といいます)を利用して、同等の期待リターンの下でよりリスクの低い資産クラスの組み合わせを作ることができます。これを有効フロンティア、とか、最適ポートフォリオを呼びます。
オルカンは外国株95%、日本株5%、しかも外国株の中には新興国が10%程度含まれています。これは期待リターン最大、結果としてリスクも最大のファンドです。10年に1度程度発生している~~ショックの局面では50%以上の下落率になる可能性が高いでしょう。
そこにライフプランの変更がきたらどうでしょう。3000万円積み立てたお金、ちょうど子どもの留学費用に充てられると思ったら、時価評価は1500万円だなんて、アンラッキーでは済みませんよね。
私がお勧めする組み合わせは【株1/3、債券(預金)1/3、不動産1/3】です。これは財産三分法とよばれ、昭和の時代からある考え方です。株でキャピタルゲインを追求する一方で、債券(預金)で資産間の逆相関を使ったリスク低減および流動性を担保。不動産は居住用で家賃の支払いを避けながらインフレ対策もする。なかなか優れた組み合わせだと思いませんか? 実は私もこれを応用してFIRE後の資産運用をしています。
それでは次回までごきげんよう、ドキドキのない資産運用を祈念しています。
次の記事(7/17 20時配信)>>>最高値を更新する東証、あなたの新NISAは大丈夫?元ファンドマネジャーがそっと指摘する「乗り遅れている人」
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