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新NISA、相場がめちゃくちゃ下がっても「喜べる」秘密とは?「オルカン一択」にしない利点を元ファンドマネジャーがそっと解説#6

OTONA SALONE / 2024年7月18日 20時0分

24年年頭にスタートした新NISA制度。「オルカン」「S&P500」という言葉はすでにおなじみとなりました。しかし、「よくわからないなりに何とか始めました」という人だけでなく、「始めないといけないのはわかっているけれどどうしていいのかわからない」という人もまだまだいるでしょう。

 

「オルカン積んでるから俺はOK」と考えている人に、元ファンドマネジャーの澤田信之さんから「それが危険な場合もある」と確認事項が。さっそくご説明いただきましょう。

【元ファンドマネジャーが指摘「新NISAでやらねばならなかったこと」】#6

 

仮に市場に乱高下が起きても「驚くほど心が静かに過ごせる」最強の秘訣とは

こんにちは、元機関投資家・ファンドマネジャー、現在は文筆業兼個人投資家の澤田です。資産運用は順調ですか?

今回は「資産運用の5ステップ」の「4.コアサテライト戦略とアクティブ・パッシブ」についてお話しします。よろしくお願いします。

 

 【資産運用の5ステップ】

  1. 資産運用の公式 家計の損益計算書とバランスシート
  2. ライフプランとキャッシュフロー表
  3. アセットアロケーション
  4. コアサテライト戦略とアクティブ・パッシブ
  5. 実践(元機関投資家の資産運用)

 

前回は長期アセットアロケーション(AA)の重要性についてご説明しました。資産運用は長期に渡るものであるため、悩んだときに帰るべき場所が必要です。それが長期AAである、というお話でした。簡単な例を挙げて長期AAにたどりつく方法をご説明しましたが、今回はその後のメンテナンスについてご説明しますね。

 

一旦長期AAにたどりついた後は、基本的にその資産配分を維持できるように運用します。これを「リバランス」と呼びます。決して難しくはありません。市場の変動を利用して、配分が維持されるようにするだけです。

 

「老後2000万円問題」が話題になりました。長寿自体喜ばしいことですが、国の年金制度だけでは老後の資金が不足するので自助努力が必要だ、そのために現役世代から資産運用に税制メリットを与える、それが新NISAだ、といった流れだったと記憶しています。

 

たとえば「年金だけでは生活費が足りない」ケースで考えてみると

65歳で金融資産2000万円を達成された方がいらっしゃるとします。グローバル三分法の長期AAも達成されました。年金だけでは生活費が不足しており、キャッシュフロー表では毎年100万円の赤字がでることが予想されています。

 

この方を例にリバランスを考えてみましょう。来年不足する100万円を資産の売却でまかないます。とはいえ、期待リターンが2%程度(いったん課税関連は無視します)はあると考えられますので、実際の持ち出しは60万円です。

 

株価や為替の変動で長期AAから外国株が超過、日本株が不足している場合、ネットで60万円売り越しで、外国株売り、日本株買いの入れ替えをするだけです。結果として長期AAに近づきます。こういった売買のことを「ネット売り越しのリバランス」と呼びます。

 

現役世代でキャッシュフロー表がプラスの方も、ある程度長期AAに近づく過程で、年に一回程度このリバランスを行ってください。皆さんはとても有利な立場にあります。それは市場の下落を喜べるからです。

 

株価が下がるとみんな悲しそうです。持ってる株が下がるから当然ですね。ですがあなたは嬉しいのです。なぜでしょうか? そう、あなたはまだ株が買えるからです、昨日までよりも安い値段で。

 

スーパーできゅうりの値段が下がればみんな喜ぶのに、株が下がるとみんな悲しみます。もうこれ以上買えないところまで株を持っていたらその通りですよね、損をした、とか、これ以上損ができないから安値でも損切しなきゃ、というメンタリティになってしまいます。

 

しかしみなさんは長期AAというよるべを持っています。株価が下がったら長期AAに戻るように買えばよいのです、昨日より安い値段で。

 

逆に現在のように上がっているときにはこっそり売却しましょう。そのあとさらに上がっても、売らなきゃよかった、とはなりません。なぜなら、もっと売るだけですから。

 

このように長期AAにリバランスを加えると、価格の変動に対して途端に心が静かになります。これがドキドキしない資産運用の極意です。

 

「不動産を資産に組み込む」とはどのようなことなのか?「自宅も資産に入るんですか?」

ここまで、日本株と債券(預金)、海外資産を中心にAAのご説明をしてきました。ここで不動産について考えたいと思います。

 

結婚して子どもができたらマイホーム、というのはもう古いでしょうか。でも住宅ローンを組んでマンションを買うのを目標に貯金してらっしゃる方も多いと思います。

 

今は金利が低いうえに所得控除もあって、住宅ローンの残高がある方も多いと思います。分譲マンションはスペックも高く、新築だと間取りも選びやすいですね。一方で賃貸はライフイベント発生時のモビリティやコストが低いことが利点です。

 

投資の視点からすると、持ち家か賃貸かはどちらも似たようなものです。現在はたまたまマンション価格が上昇していますが、長い目で見れば耐久性の低下や維持にかかるコスト(修繕や管理費、固定資産税など)、社会的減損(スペックが新築に劣るなど)で、中古マンション価格は下落してゆくのが普通だと思います。

 

田舎の戸建てに比べれば資産価値も多少は高いと思いますが、持ち家と賃貸の間には裁定が働いており、純粋な投資の観点からするとどちらも似たようなリターンになると考えています。

 

純粋に投資の視点でだけ考えると、住宅ローンはそれそのものが結構なリスクです

しかし、資産運用の観点からすると大きな違いが発生します。それはマンション購入時のローンの存在です。

 

5000万円のマンションをフルローンで購入した場合、その時点でのバランスシートは不動産5000万円と借入5000万円で、純資産はゼロです。当然ですね、お金を返していくわけですから。

 

前述のとおり現在住宅ローン金利はほぼゼロですので、返済時の金利負担もあまり気にならないかもしれません。某ネット銀行のシミュレーションでは、35年5000万元利均等返済変動金利0.319%の月額返済額は12万6000円程度とあります。だったら今の家賃より安いし第一新築だし、と思いがちですが、金利が1%上がると返済額は月額14万9000円、2%上がると17万4000円にまで増加します。月額でも結構な額ですが、最終返済までの返済額の総額でみると、それぞれ1000万円ずつ増えているのです。なんと、金利が2%上がるだけで老後に必要だと言われている2000万円がすべて飛んでしまいます。

 

金利リスクだけではありません。なるべく長く、リスクをコントロールした運用をするのが資産運用の基本である、と説明してきましたが、住宅ローンを抱えることで返済期間中は資産運用に回すお金が減少します。しかもバランスシートはほぼマンション、長期AAに向けてリバランスをして、と説明してきましたが、ローンを組んでマンションを買うのはある意味その対極にあります。

 

住宅ローンというレバレッジを使って、マンションに全額投資とは、どんなにリスクレベルが高いヘッジファンドでも取らないハイリスクな投資戦略です。資産運用の観点からは賃貸派が圧勝ですね。なかなかそういう方はお見掛けしませんが、値上がりしたマンションを売却して、長期AAに基づいたポートフォリオで運用しながら賃貸住宅に住む、そんな考え方もアリだと思います。

 

金利という時間のコストを支払って未来の商品を手に入れるという意味で、住宅ローンなどのレバレッジはタイムマシーンのようなものです。今は無視できるような金利ですが、時間のコストが今以上に下がることは想像できません。昔のコマーシャルにありました、「よーくかんがえよう、お金は大事だよ」「ご利用は計画的に」。

 

「敢えて賃貸に住んでいる」人が不動産をAAに組み込むには「REIT」が検討できる

ここで賃貸派の方に、長期AAに不動産を組み込む方法をご紹介します。東京証券取引所に上場している不動産投資信託というファンドで、Real Estate Investment TrustからREIT(リート)と呼ばれます。50銘柄程度が上場していて、株と同じように取引されています。10万円程度から投資できますが、分散するにはREITのみを投資対象とする投信もたくさんあります。

 

グローバル三分法の主要投資対象として不動産1/3とご紹介しました。持ち家の方には頑張って1/3まで下げて頂きたいところですが、多くの場合不動産が超過すると思います。2000万円の1/3で保有できる不動産は限られていますから。ですが、賃貸派の方はREITを使って容易に不動産の比率を調整することができます。ぜひご覧になってみてください。私はアパート投資の代わりに、住宅のみを保有しているREITに投資しています。

 

さらに貪欲に前に行きたい人は「コアサテライト戦略」も

私はこうした、ドキドキしない資産運用をお勧めしています。機関投資家時代、毎日毎日ストレスがすごかった反省です。ですが、もっと期待リターンを高めたい方もいらっしゃるでしょう。そこで、コアサテライト戦略とアクティブ・パッシブ運用についてもご紹介したいと思います。年金基金や保険会社が採用している運用手法です。

 

コアサテライト戦略には2つの手順があります。まずは長期AAの策定、これはこれまで説明したとおりです。それに続いて、資産の一部をリスクの高い運用手法(ヘッジファンド)・資産クラス(オルタナティブ投資)に回します。

 

これはより高いリスクを取ってより高いリターンを目指す運用ですので、資産全体でやってしまうと本末転倒になります。オルカン一択よりリスクが高くなるかもしれません。個人投資家としては全体の10%程度をめどにしていただきたいと思います。

 

アクティブ・パッシブ

最後になりますが、投信の運用に関してアクティブ・パッシブ議論を耳にされたことがある方も多いのではないでしょうか。アクティブ運用とは運用担当者が投資判断をして「期待リターンを高める」運用、パッシブ運用とは運用担当者が投資判断を排して「コスト低減に努める」運用のことです。

 

アクティブ運用は調査や予測にコストがかかるので、ファンドの運用コストが高くなる一方(年率で1-2%)、パッシブ運用はコストは低い(0.1-0.5%)ものの確実にベンチマークに負けます。

 

平均するとアクティブ運用はコストが高い分パッシブ運用に負けてしまうのですが、とびぬけて高いパフォーマンスを続けるファンドも存在します。著名な所ではウォーレン・バフェットやピーター・リンチの名前があげられますが、日本にも高いパフォーマンスをたたき出しているファンドマネジャーが実在します。

 

アクティブとパッシブの議論は、株式投資の個別銘柄投資とインデックス投資に相似します。個別銘柄を選ぶことでインデックスに勝てるのか、勝てるとしてそれはコストを上回るのか、という議論です。

 

パフォーマンスの良いファンドを見つけることは、株価の上がる個別銘柄を探すことと同じです。個別銘柄投資で勝てると思う方は、アクティブファンド投資も選択肢に入れてよいでしょう。「オルカン一択」に辿り着いたあなた、あなたはそのままパッシブ運用を続けてください。タイパ、コスパは保証します。

 

次回はシリーズ最終回です。「実践・元機関投資家の資産運用」と題して私が個人投資家としてどんな運用をしているのかについてご紹介したいと思います。それでは皆様ごきげんよう、ドキドキのない資産運用を祈念しています。

 

次の記事(7/19 20時配信)>>>「資産運用は野菜を育てる農業に近い」のはなぜなのか?元ファンドマネジャーがそっと公開する「自分の資産内容」

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*連載INDEX▶元ファンドマネジャーが指摘「新NISAでやらねばならなかったこと」

 

 

≪文筆家・個人投資家 澤田 信之さんの他の記事をチェック!≫

 

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