「2040年、AIが当たり前の時代でも”なくならない仕事”があります」【池上彰の未来予測・後編】
OTONA SALONE / 2024年7月12日 20時0分
変化の激しい時代を生き抜かねばならない子供たちを育て、
遠い未来だった「老後」が少しずつ現実味を帯びてきているオトナサローネ読者にとって、
自分たちの将来はもちろん、子供たちが生活する未来の姿を想像するとなおさら不安が押し寄せます。
そんな永遠に解消されないような不安の中で生きている私たちに、よりどころとなるような未来のお話があります。
新刊『池上彰の未来予測 After 2040』(主婦の友社刊)で、池上彰先生がつづっている未来の話から、
自分たちが、日本が明るい未来を迎えるためには、今後どう行動していけばいいのかを、一緒に考えていきましょう。
「未来はこれから創るものです。そう悲観的にならなくて大丈夫ですよ」。帯に掲げられた、池上彰先生のこのメッセージに心が少し救われます。
未来も変わらず、AIに取って代わられない仕事がある
もちろん、今あるすべての仕事がAIがこなせるわけではない。テクノロジーが進化した未来でも、なくならない仕事がある。
「コロナ禍で『エッセンシャルワーカー』が注目されました。医療や物流業、食料品などの小売業や、保育職や介護職など、社会を維持するために必要不可欠な仕事に従事する人たちです。
こういう仕事こそ、AIには取って代わられない仕事だと思います」
しかし、そこで問題になってくるのが人材確保だ。
「しかしエッセンシャルワーカーの多くの業務に体力勝負な部分があるということと、給与水準がホワイトカラーよりも低いということで、エッセンシャルワーカーの仕事は人気がなく、人手不足が深刻な状況になっています。
2040年に向けて、社会に必要不可欠なエッセンシャルワーカーの給与水準を大幅に上げる必要があります」
テクノロジーが進化するほど求められるのは“人間力”
テクノロジーの進歩により、エッセンシャルワーカーの仕事の機械化も今後進んでいくという。その中で、より必要とされる人材の特徴がある。
「一方、エッセンシャルワーカーの仕事も、徐々にですが機械化が進みつつあります。たとえば介護現場では、入浴支援をするリフトなどのロボットや、寝たきりの人の『床ずれ』を防止するために自動寝返り機能のついた介護ベッドなどがあります。ただ導入費用が高いため、介護現場に今はまだあまり普及していないという課題があります。
エッセンシャルワーカーにとって重労働な業務を、ロボットが担ってくれるようになれば、明るい未来だといえます。
とはいえ介護される側としては、すべてが機械化されて人と接する機会がなくなってしまってはつらいでしょうし、気持ちに寄り添ってくれる介護職の人に会いたくなるでしょう。そのためこれからの介護職には、患者さんの気持ちを理解できる人間力のある人がいっそう求められます。
医療職も同様です。病気を治すことばかり考えて、患者の気持ちは二の次だという医師、患者ではなく病気だけを見ているというタイプの医師がいます。
患者は自分の話を聞いてほしい、医師に自分のほうを見てほしいと思っています。しかし、自分の症状を理路整然と説明できず話の脈絡もなかったりする高齢の患者などに、若い医師がイライラしている、などという光景がよく見られます。ちょっと我慢して、お年寄りの話を一生懸命聞いてあげる、手で脈をとってあげる、と
いう『人間力』が、医師には大事なことなのです。それこそが、AIではできない仕事だからです。
2040年、AIの導入や機械化がより進んだ未来にこそ、人間には人間の感情に関わる部分の仕事が残り、それがより大切になっていくわけです」
テクノロジーの進化を代表するAI。それに仕事が取って代わられたとき、人間ができる残された仕事が感情に関わる部分というのは、私たちが人間である価値につながる、希望の持てるお話ですね。私たち自身も子供においても、昔と変わらず、情緒や人間力を育てることが、未来の仕事や活躍につながるかもしれません。
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『池上彰の未来予測 After 2040』(池上彰著/主婦の友社刊)
<著者プロフィール>
1950年、⻑野県松本市⽣まれ。慶應義塾⼤学卒業後、1973年にNHK⼊局。報道記者としてさまざまな事件、災害、消費者・教育問題などを担当。1994年からは11年にわたりニュース番組のキャスターとして「週刊こどもニュース」に出演。2005年よりフリーのジャーナリストとして執筆活動を続けながらテレビ番組などでニュースをわかりやすく解説し、幅広い⼈気を得ている。また、5つの⼤学で教鞭をとる。『池上彰が⼤切にしているタテの想像⼒とヨコの想像⼒』(講談社)『池上彰のこれからの⼩学⽣に必要な教養』(主婦の友社)など著書多数。
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