意外かもしれないけれど。普通に働いて、普通に暮らせば「人生のお金」は帳尻が合うようにできているんだよ
OTONA SALONE / 2024年7月11日 11時41分
大学生のアキさん、高校生のルミさん、2人の娘を持つ個人投資家・文筆家の澤田信之さん。「予測を業としてきた自分にも、彼女たちがこれからどのような時代を生きていくのかまったく判断がつかない」と語る澤田さんが、「生きる視点」を子どもたちに伝えるメッセージ書評です。
【父から娘へ書評#4『最新リスク管理マニュアル』松丸俊彦】後編
リスクの「ありかた」は人によって違う。なぜなら、人生そのものが完全に違うから
前編で資産運用のリスクは価格変動だといいましたが、これは一般論で、人によってリスクは異なります。それは人生の経路、ライフプランが異なるからです。お金持ちの家に生まれて一生働かない人もいれば、プロ野球選手になって若くして大金を得る人、ペアローンで億ションを買って離婚する人もいれば、カードローンで15%の金利を払っている人もいます。
人はあまりにもそれぞれなので、一般論だけでは実感がありません。資産運用は入り口のハードルが高く見えるので、そうすると何もしないという人が増えてしまいます。そこで、アキとルミにピッタリの運用を考えてみました。
2人のネット証券口座には暦年贈与で積み立てたお金が入っています。これまではジュニアNISAで僕が運用してきました。アキは海外居住者だからしばらく凍結しておくとして、ルミの方で考えるね。
まず考えたのは、口座に入っているお金の使途、つまり性質です。大学卒業までの学費に充てるかどうか、それで運用期間が変わります。6年間で払い出す前提だと、値下がりした時に学費が払えなくなることがリスクです。そうなると、学費に相当する部分は期間を合わせた債券や預金で運用して、それ以外を日本株や外国株に投資するのがピッタリです。資産運用の世界ではキャッシュフローマッチングとかサープラスマネジメントと呼ばれる手法です。
ですが幸いなことにルミの口座のお金は相続の前渡しで、学費は別にとってあります。学費の上昇率は一般のインフレを超えていますし、理工系の学部を志望する場合は文系よりも学費が高いので、それも織り込んで多めに確保してあります。でも、もし医学部や、アキのように海外を志望する場合は早めに相談してください。時間が長くあるほど、いろいろ考えることができます。
制約のないお金、という前提で考えてみるね。アキはいま高校生で、たぶん大学に進学して、そのあと自立して生計を立てることを希望することでしょう。日本人の給料は平均で年収額面500万円弱、社会負担率(税金とか健康保険とか)40%として、自由に使えるお金は300万円位です。
そのうち250万円(月20万円くらいだね)をいろんなかたちで使って毎年50万円残るととすると、だいたい65才で2000万円貯金ができる、というイメージです。これを見てどう思うかな。2000万円貯まるじゃん、と思うか、小遣い月20万円すごっ、と思うか。
つまり、普通に働いて、普通に暮らせば、人生は帳尻が合うようにできている、ってことです。
人生のお金はごくごく簡単な式で把握できる。でも、気を付けるべきこともある
人生のお金を数式で表すと、
資産=収入―支出+(運用資産×運用利回り)
です。資産を増やすには収入を増やすか、支出を減らすか、運用資産を増やすか、運用利回りを上げるか、この4つしかないのです。
収入や支出はライフプランで大きく変わります。ここでいう運用資産は親からの贈与が中心になりますので、なるべく早く、なるべくたくさん親のスネをかじって、資産運用に回してください。国もそれを支援する税制を用意していますので。
最後の運用利回りについてはちょっと勉強が必要です。
まず期待リターン。株は上がるか下がるかは短期的には分かりませんが、長い目で見れば上昇するようにできています。借入や設備投資で利益を出すのが株式会社の目的で、個別の当たり外れはあるにせよ、インフレ的な資本主義経済下では全体として株式会社は利益を出し、結果として株価は上昇するようにできているからです。
名目成長率が高い国、将来成長が期待できる産業、優秀な経営者や質の高い社員がいる会社、これらを選べればベターですが、とりあえずは日本株に投資しましょう。新聞やネットニュースで情報も十分得られますし。
次にリスク、いろいろな資産を組み合わせることによって全体の価格変動を抑える手法をアセットアロケーション(資産配分)といいます。株と債券は別々の動きをすることも多いので、債券にも投資することが第一です。
不動産投資もいいよね、まずは自分の住まいを確保することが優先だけど、アキが海外に定住するようならルミには今僕が住んでいるマンションあげるからとりあえずは考えなくていいよ。資産が増えてきたらREIT(不動産投資信託)という投資対象もあるからその時教えるね。
僕は目途として、株式1/3、債券1/3、不動産1/3、外貨建資産1/3で運用しています。足すと1越えちゃうのは、株、債券、不動産それぞれの中に外貨建が混ざっているのでその合計が1/3ってこと。株は年に20%くらい、債券も4%くらい、為替も15%くらいは値動きするんで平均すると10%くらい動きそうなものだけど、経験則的には5%くらいの値動きで済んでいます。さっきのアセットアロケーション効果だね。
ルミはあと2年ジュニアNISAだから、その間はこの方針に基づいて僕が運用します。大学に入ったら全部委ねるんで、よろしく。
お金という保険が、人生の選択肢を「裏打ち」してくれます
これはルミのお金です、ストパーかけても整形しても、サイゼリアに行っても何も言いません。
でも覚えておいてね、お金で解決、というとなんだかズルい感じがするかもしれないけど、みんながお金を大事にしているからこそ、お金が解決してくれることが世の中にはたくさんあります。このお金はルミの保険だと思って、運用していってください。お金があれば、人生の選択肢も増えますし。
それでは、また
チチより
『元公安、テロ&スパイ対策のプロが教える! 最新リスク管理マニュアル 激増する国際型犯罪から身を守るために』松丸俊彦・著 1,870円(10%税込)/徳間書店
から
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