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「評価されるような結果が出せない。やっぱり自分はダメだ…」更年期の心の不調は“丸ごと肯定”が対策のカギになる!【精神科医が教える対処法】

OTONA SALONE / 2024年7月27日 21時31分

更年期には、イライラや不眠、不安、恐怖、情緒不安定、易疲労感、記憶力の低下、抑うつ感などの心の症状が起こることがあります。更年期の期間、そんな自分と付き合っていくにはどうすれば良いのでしょうか。

今回は、『心の病になった人とその家族が最初に読む本』の著者で、精神科専門医、指導医、精神保健指定医の広岡清伸先生に、更年期の心の不調に対するアドバイスをいただきました。

また広岡先生によると、心の病がきっかけで人生が豊かになるとのこと。更年期症状を乗り越える方法の一つとして教えていただきます。

前編記事「更年期の心の不調はどこからくる?「頭じゃわかっていてもポジティブになれない!」3つの原因とは?【精神科医が解説】」に続く後編です。

 

不安心は丸ごと受け止めてポジティブな対象にチェンジする

更年期の心の不調の原因は複数あり、色んなストレスを抱えがちな更年期女性。不調に対して、具体的な対処法を教えていただきました。

 

「私は、心が不調になっているときの心を『不安心』としてまとめてとらえています。不安心に対しては、きちんと手当をすることが大切。要となるのは、『不安心を丸ごと受けとめつつ、意識の対象をポジティブな対象にチェンジすること』です。

ストレス源となっている環境の問題と自身の心の不調の対策は、すぐにできそうな対策と、時間を要するような対策とがあります。時間を要する対策については焦らずに機が熟すのを待ちます。状況を変えようとすることは得策でない場合には、むしろ状況を変えることをあきらめて受容することで、意識をポジティブな対象に向けることができます」

 

●大きな視点で症状や状況を丸ごととらえる

「客観的に大きな視点で俯瞰(ふかん)して、症状や状況をとらえます。心の不調と身体的変化と生活環境変化を大局的に、丸ごと受容的にとらえます。そして不条理な人間社会で生き抜いている自分の存在には絶対的価値があると信じることです。自分自身の人生はこれまでもこれからも意味があり、価値があると信じることです。

更年期女性の心の症状は、心、情緒、自律神経、身体などの変化と生活環境の変化が、連動し合っていることを理解し、ネガティブな連動からポジティブな連動にチェンジできるようになることを目標にします」

 

 

ポイントは常に自分の人生には価値があると信じること

丸ごと受け入れ、ポジティブな対象にチェンジする際には、ポイントがあるそうです。

 

●結果を重視する世の中で原点を見失わない

「世の中では、いつも結果を重視し、結果からそこに至るプロセスを評価しますから、結果が得られないと、自信をなくし悲観しがちです。そして人生のプロセスは失敗だったと悔やみます。そのとき自分の命に意味がないように思えてきます。しかしこのような考えに翻弄されてはいけません。現代人は、その原点が見えにくくなっています。しかしその原点こそ、常に価値があることを信じて生き抜いて欲しいと思っています」

 

●思考がネガティブに傾いていることを自覚する

「更年期には、何ごとにもネガティブになりがちです。心が病んでいるときには、思考がネガティブに傾いていることを自覚しておくことが大切です。このようなときは、大きな決断をしないほうがいいです。反動的に理想を求めすぎて、非現実的になり、足下が地に着いていないと大変なことになります。『もう我慢しない』とこれまでの人生を否定して、新たな人生を歩もうとするのは危険です。例えば、家族に不満をぶつけ続けていると、長年守ってきた家族が壊れてしまいます。不用意な決断で環境を大きく変えてしまうのは危険です。後で後悔することになります。

自分のこれまでの人生、現在の人生、これからの人生は皆価値があると信じることが肝要です。決断は慎重にし、自分にとってメリットがあるか、デメリットであるのかを慎重に見極めて行動する必要があります」

 

 

自分でできるセルフケア方法~肯定的体験療法とは?

広岡先生は、精神科の臨床現場で「肯定的体験療法」という治療法を行っています。端的に言えば、「患者さん自身が医師や家族、または周囲の人たちに協力してもらいながら肯定的な体験をくり返すことで、自信を回復していく方法」だといいます。不安心を小さくするアプローチではなく、小さくなっており、弱っている平常心に焦点を当てる方法です。

 

●日常生活でポジティブな体験を積み重ねる

「肯定的体験療法は、ポジティブな体験を積み重ねてポジティブな心を豊かにしていきます。誰でも行うことができ、心が不調である更年期の女性も、行うことでセルフケアできます。精神科では、治療者が患者さんの心の病の手当てをした上で、患者さんを支援しながら、患者さん自身で肯定的体験療法を行います。

肯定的体験療法によって、徐々に更年期の心身の症状に過度にとらわれなくなり、更年期の症状が和らいでいきます。同時に更年期の心身の症状を抱えながらも、平常心でポジティブな日常生活を送れるようになっていきます。

 

生活の中で環境を変えてみる。おしゃれをしてみる。散歩する。日常生活を送る上で大切なのは、家の中に一日中いるのではなく、日中は外出し、別の環境や状況で趣味を楽しめるようになることです。具体的には、自然の癒やし、人間関係の癒やし、スポーツの癒し、音楽や芸術の癒し、遊びの癒し、ペット、美味しい食事などから、自分が心地よいと思うものを取り入れるとよいでしょう。

『対象のポジティブなところを意識することが大切である』ということを充分に認識できるようになると、その意志によってポジティブな対象を意識できることが増えていきます」

 

肯定的体験療法は、身近なところから始められそうです。まずは自分の好きなことから始めてみると良さそうですね。

 

 

心の不調を乗り越えて残りの人生をより輝かしいものにするためのメッセージ

最後に、心の不調に悩む更年期女性にメッセージをいただきました。

 

「更年期は、人生の内で最も過酷な時期です。不条理なことを多く経験します。この時期に更年期女性が心の不調を抱えながらも肯定的体験を積み重ねることは、生きている証を実感し、人間的な深みを持つことにつながります。

更年期女性の心には、ネガティブな心の成分とポジティブな心の成分が混在しています。それらの成分を丸ごと含めてこそ、自身の心に絶対的な意味と存在価値があるのだと思います。自身の心と自分を取り巻く環境を俯瞰してとらえられたら良いですね。このような心構えを持てるようになると、きっと心の不調を乗り越えられ、暗かった心に光が差し込み、残りの人生が輝かしいものになっていくでしょう」

 

更年期の心の不調と一口に言っても、人それぞれ大きさも種類も対象も異なるでしょう。今回教えていただいた内容をヒントにしてみてください。きっと、何かつかめるものがあるはずです。

 

 

【取材協力】

広岡 清伸先生

広岡 清伸(ひろおか・きよのぶ)先生
精神科専門医、指導医、精神保健指定医。広岡クリニック理事長。
富山県高岡市出身、早稲田大学中退、日本大学医学部卒業。
東京大学医学部付属病院研修医、堀ノ内病院、関東労災病院などを経て1992年に横浜市港北区に広岡クリニックを開設。患者の目線に立って治療する独自の「肯定的体験療法」が評判を呼ぶ。今まで診察してきた患者は1万人を超える。著書に『心の病になった人とその家族が最初に読む本』(アスコム社)、『日本の臨床現場で専門医が創る図解精神療法』(鳥影社)、『広岡式こころの病の治し方』(日経BP社)などがある。

『心の病になった人とその家族が最初に読む本』

 

≪ライター 野村 昌美さんの他の記事をチェック!≫

 

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