「それは愛情じゃなくて、支配だから」妻に染みついた、夫の機嫌をうかがうクセは「マニュピュレート」というモラハラが原因だった
OTONA SALONE / 2024年8月2日 15時30分
夫婦問題・モラハラカウンセラーの麻野祐香です。自分を大切にしてくれ、本当に優しい人だから結婚をしても幸せになれると信じていたのに、結婚した途端に優しい姿が全て嘘だったとわかり苦しんでいる女性がたくさんいます。
モラハラだとわかっていても、経済的理由や子どもの養育の問題、夫のモラハラが治り優しくなってくれるかもしれないという期待から離婚を決断できない方が多くいます。離婚を決意しても、実際に離婚の手続きを進めようとすると夫から拒否をされ調停や裁判にまで発展し、次第に心を病んでいってしまいます。モラハラの闇はとても深いものです。そんなモラハラについて長年に渡りカウンセリングを続けてきた私なりの対策をお伝えしています。
今回は妻の味方のふりをして、いつの間にかモラハラ夫に心理操作をされ孤立してしまったM子さんのお話です。
気付かぬうちに妻を支配する「マニュピレーター」モラハラ夫
結婚前は本当に優しかったとモラハラ夫のことを皆さんが口を揃えて言います。M子さんの夫ももちろんそうでした。
『結婚当初から、「M子、君の味方は僕だけだ。他の人は君の本当の気持ちなんてわかってくれないよ。」夫のその言葉は、初めは甘い愛情表現のように感じていました。私はその言葉を信じ、夫の愛に包まれていることに安心していたのです。仕事で疲れて帰宅した時、同僚の愚痴を夫に言うと「だから言っただろう。君の味方は僕だけなんだから。」と私を抱き締めてくれました。私は夫にこんなに愛されている、夫以外の人は私の敵なんだと思い込んでしまい、その日をきっかけに夫以外の人と付き合うことを避けるようになっていったのです。次第に夫の言葉が私の生活を支配し、私は会社でも友達付き合いをしなくなり、結局仕事も辞め個人的に誰とも連絡を取らなくなりました。』
怒鳴ることをせずに巧妙に人をコントロールする人のことを、モラハラ加害者を分類するときに「マニピュレーター」といいます。マニピュレーターとは元は心理学用語で、相手を精神的に支配したいという欲求が異常に強い人のことです。暴力や激しい言葉を使わずに、支配し、周囲の人間関係を断ち切らせることができます。
【マニュピレーターの特徴】
1. 巧妙な操作
言葉巧みに他人を操り、自分の意図通りに行動させます。直接的な命令を避け、質問形式や提案の形で相手を操作します。
2. ガスライティング(※)
妻が考えていることを全て否定し、自信を失わせます。「それは君の思い違いだよ」「そんなことはなかったよ」などと言って、妻の記憶や感情を否定します。
3. 罪悪感を利用する
妻に罪悪感を抱かせることで、自分の要求を通します。「君がそんなことをするから、僕はこうなるんだ」というように責任転嫁がとても上手です。
4. 外面は良い
初対面では非常に親切で魅力的な人物に見えてしまうのです。周囲から最初はいい人と思われますが、親密になると徐々に本性を現します。
5. 依存を作り出す
妻を自分に依存させるために、周囲との関係を断ち切るように誘導します。「君には僕しかいない」「他の人は君を理解しない」という言葉を巧みに使います。
6. 支配的な行動
妻の行動や人間関係をコントロールしようとします。誰と会うか、何をするか、どこに行くかなどをしつこく聞いてきます。
7. 豹変する態度
優しかったのに、突然冷酷になるなど、態度が急激に変わります。妻はこの変動に混乱し、自分が悪いのではないかと思い込んでしまいます。
8. 責任転嫁
自分の過ちや失敗を決して認めず、他人にのせいにします。「君がこうしたからこうなったんだ」というように、自分に責任はないと主張します。
9. 冷酷さと共感の欠如
他人の感情や苦しみに対して共感を示さず、冷酷な態度でいます。自分の利益のためなら、他人を傷つけることも平気です。
マニュピレーターは、人を操作することが本当に得意なのです。
※編集部注「ガスライティング」:相手に自分の常識や考えは間違っていると思い込ませ、精神的に追い詰める心理的虐待の一種。
夫の操作で自分での意思決定もできなくなっていた
『私は夫の言葉だけが本当のことだと思い込んでいました。夫が言うとおり友達や家族と連絡を取ることを一切やめ、夫の存在が私の全てになっていました。夫の言葉は時に優しく、時に厳しく、私の心を上手に操っていました。自分の意思で行動していると思い込みながらも、今思うと夫の巧妙な操作で夫の思惑通りに動いていたのです。友人たちとの絆が切れ、私は完全に夫の支配下に置かれていたのです。
夫は私が何かを提案すると、冷たく否定し、「そんなことも分からないのか」と馬鹿にすることが増えてきました。「君は本当に無能だね。何もできないんだな。」といつも冷たい目で私を見るようになったのです。私はその言葉に何度も傷つき、次第に自分が本当に無能で役立たずだと信じ込むようになっていました。
更に夫は私が何か失敗すると、そのことを執拗に責め立てるのです。「こんな簡単なこともできないなんて、本当に情けないよ。君には何も期待できない。」その言葉が私の自己肯定感を地の底まで落としていったのです。』
マニュピレーターと一緒にいるといつの間にか支配されるようになります。
マニュピレーターが他人を支配したいと思う理由は5つあります。
1. コントロール欲求
マニュピレーターは他人を支配することで、自分が人より優れていると感じたいのです。他人をコントロールすることで、安心感と高揚感を得ます。
2. 自己肯定感の補完
実は劣等感や不安を抱えているため、他人を見下し操作することで自己評価を高めようとします。他人を従わせることで、自分が優れていると感じるのです。
3. 感情的なコントロール
感情を適切に表現できないため、他人を操作して不安や怒りを軽減します。自分自身が安心するための手段としても支配を行います。
4. 権力とコントロールの維持
他人を操作することで権力があると思い込み優位に立ちます。相手を依存させることで長期的にコントロールする目的があります。
5. 心理的な問題
内面的な不安を抱えているので、他人をコントロールすることでそれを軽減しようとします。
マニュピレーターの行動には、支配欲求や自己肯定感の補完、感情のコントロール、過去の経験、権力の維持、心理的な問題などが複雑に絡み合っています。彼らの行動は、被害者が自分の意思で決定し、自由に考える力を徐々に奪ってしまうのです。
本記事では、マニュピュレーターの夫に次第に支配されていってしまったM子さんをご紹介しました。マニュピュレーターの特徴やどうしてそういった行動にでるのかの背景について解説していただきました。
▶続きの【後編】を読む▶ 自分が支配されている自覚のないM子さんは、気づくことができるのでしょうか。そして、夫の支配から逃げられるのでしょうか。 __▶▶▶▶▶
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