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40代50代「更年期にさしかかる女性」が知っておきたい「医療との上手な付き合い方」とは?【専門医が解説】

OTONA SALONE / 2024年9月13日 20時0分

「この20年の間、更年期障害の病態は変化がなくとも、メディアで取り上げられる機会は増え、それとともに行政、官公庁や政治家が課題に向き合いはじめました。結果的に、『働く女性の健康問題として何とかしなければ』という認識が社会に広がりました」

 

こう語るのは、長年に渡り更年期医療をリードしてきた東京医科歯科大学大学院教授の寺内公一先生です。幅広い、ときには込み入った症例と向き合うこともある更年期医療の第一人者に、詳しい話を伺いました。

 

更年期に差し掛かるみなさんがぜひ「知っておいてほしい」こととは

――更年期障害を取り巻く環境は、ここ数年で大きく変わったと思います。出版社サイドから見ても、女性ファッション誌が表紙に「更年期」と書けるようになったのは変化です。

5年ほど前から「更年期障害による経済損失は男女合わせて年間6300億円」などの情報が出るようになり、「この問題は社会全体で解決していかないとならない」認識が広がりました。ビジネスとしてこうした課題に取り組むフェムテック企業も増えたことは歓迎していますが、いっぽうで単なるビジネスチャンスと捉えた参入も見られ、すべてに同じように効果があるかは吟味が必要だと感じます。

 

私たち医業は、患者さんに向き合い、状態を診察しながらテーラーメイドに治療方法を考え行えることが存在理由だと思っています。いっぽう、患者さん側からすると方法は何であれ不調が治ればいいわけですから、検索すると出てくるさまざまな民間サービスで、自分の不調に向き合ってもらえることがわかるのはメリットでしょう。

 

更年期障害の患者さんは推定200万人存在すると考えられていますが、通院しているのは20万人。90%はセルフメディケーションで対応しているのです。この人たちがすべて「よい」サービスにつながっていればいいのですが、実際にはフェムテックを称してはいるけれどもアプリに症状を入力して終わりという低品質のものも存在します。

 

――まだまだ更年期障害の実情が正しく知られておらず、また、正しく説明されていないこともあるのでしょうか。

日本は医療へのアクセスが非常によい国です。だからこそ、患者さんたちも「ヘルスリテラシー」を強化し続ける必要があります。「低品質なサービス」に引っかかるリスクもあるため、ヘルスケアに限らず保険でも何でも同様ですが、どういう対策があって費用と時間はどのくらいかかるのかを把握しておくことがベターなのです。

 

更年期障害の治療のひとつ「ホルモン補充療法(HRT)」についても、何か特別な、条件をいくつもクリアしないと始められない高額な治療だと思っている人がまだまだいます。実際、閉経後女性のHRT実施率は2%程度です。しかし「標準治療」と呼ばれるこうした治療法は保険でカバーされ、かなり安価に提供されます。サプリメントを利用したセルフケアもよいですが、自分の体調に異変を感じた場合、もう少し気軽に標準治療を求めてもらってもいいのでははないかなと思います。

 

「病院に行きたくない」のはあなたのせいではない。仕組みの側にも落とし穴がある

――病院にかかることに対する抵抗はずいぶん減ったように思いますが、それでもまだ「行くのに勇気が必要」という声も上がります。

更年期医療の落とし穴はもう一つ、医療の仕組みの側にもあります。昨今ではよく言われるようになりましたが、長い時間をかけてカウンセリングを行っても管理料などの加算がないため、たとえば心療内科が行うような丁寧なヒアリングは現状の婦人科の現場では誰もができることではないのです。ですから、積極的に更年期障害に関わろうとする意欲のある医師を探して受診したほうが、求める医療とのミスマッチが起きないと思います。

 

「婦人科医が塩対応だった」「私の話を全然聞いてもらえず、はいはい更年期ね漢方薬出しておきますと流された」というようなご不満もまだまだ耳にします。日本女性医学学会に女性ヘルスケア専門医の地域別リストがありますので、確認してもらいたいと思います。更年期医療は敷居の高い話ではなく、女性ヘルスケア専門医も増えていますから、今後とも専門性の高い診療を提供するネットワークを広げていきたいと思います。

 

20年以上に渡って日本女性医学学会は更年期障害のカウンセリングに何かしらのインセンティブをつけたいと働きかけてきました。たとえば、器質性月経困難症のホルモン療法は特定疾患管理料が3年前につき、医療側の対応に変化が見られました。更年期障害も同様に繊細な問題で、治療には時間もかかりますから、ぜひ女性の皆さんも治療で元気を取り戻したら次に続く人たちのために声を上げていっていただきたいです。

 

――もうひとつ、風邪のときの体温のような客観数値がないため、「こんなことで受診していいのか」という迷いはみなさん常にお持ちです。

「こんな悩みでお医者さんにかかっていいんでしょうか」などは一切考えず、辛さがあるなら受診していいのです。たとえば70歳の女性が「年齢的に違うとは思うのですが、症状が合致するので、更年期かPMSなのではと悩み抜いて」とお見えになった例がありました。

 

先ほど更年期障害での受診者が20万人という話をしました。厚労省の調査では診断のついている人が20万人、いろいろな数値から推定すると有症状者が200万ではあるものの、受診していない人の症状が軽いと言っているわけではありません。ほてり・のぼせなどの血管神経症状、、抑うつ・不安などの精神症状で苦しんではいるけれど、受診してもよい治療は存在しないと思って我慢している人が大勢います。また、以前受診して嫌な思いをした、自分のことで病院に行く時間なんてない、更年期症状は命に係わるわけではないし我慢すればいいと思っている人もまだまだいます。自分の症状が病気であると認識しておらず、あとから「更年期障害だった」と気づく人もいます。

 

繰り返しますが「なんとなく調子が悪い」「軽いと思うけれどもいろいろな面で支障がある」という人はいちど病院にきてみるという発想でOK、てっきり更年期だからと思っていたけれど受診したらそれ以外の原因が見つかることもあります。調子が悪い、支障があるということを放置しておいてよいことはないのです。

 

更年期外来を受診する人たちの主訴でいちばん多いのはデータ上でも、肩こり、疲れなど、更年期特有ではない一般的な身体症状です。そんな方が8割くらい。5割くらいの方がほてりやのぼせを訴え、同時に抑うつ、不安、不眠を5割ほどが訴えます。

 

つづき>>>「これって更年期?それとも老化?」「この症状で病院に行っていいの?」線引きは

 

≪OTONA SALONE編集長 井一美穂さんの他の記事をチェック!≫

 

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