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「40代50代は学びなおしを!」の圧がしんどい…100年学習時代に「三日坊主な人こそが成功する」深いワケとは?

OTONA SALONE / 2024年8月17日 11時15分

私たちの寿命は徐々に伸び、団塊ジュニア世代は10人に1人が100歳を迎えるとも言われます。ですが、残りの人生がもう50年となると、「何をして生きていけばいいの?」と戸惑うのも事実。

 

老後資金は2000万で足りるの? 明らかに足りない場合、もしや80歳近くまで働き続けないとならない? ならばやはり「リスキリング」をしなければならない?

 

しかし、「学習学」を提唱する京都芸術大学客員教授の本間正人先生は「学ばねばならぬというその気持ちそのものに、つらさがありませんか?」と問いかけます。「本来、学びとは楽しいことであり、努力をしなければならないことではないはずなのです」。

 

いったいどういうことなのでしょうか。

 

私たちはなぜ「学ばねば」といつまでも脅迫のように背負ってしまうのか?

――老後資金が足りないため、働き続ける必要がある。そのために新しくスキルを身に着ける学びが必要だ、というのが「リスキリング」だと捉えています。

そうでしょうか? 資本主義社会の中で、あらゆる労働は金銭換算されて評価されてきました。命を支えるということはお金に換えられない大切なことがらですが、「学歴」と「職歴」は社会の中で過大に、反対に「家事歴」「育児歴」「介護歴」は過小に評価されています。

 

社会を、地球をよくするという観点から、これらの経験は決して劣るものではありません。「家事」「育児」「介護」はまさに金銭に換算できない尊いことです。これらを続けてきた方には、私が5月に上梓した『100年学習時代』をぜひ手に取っていただきたいのです。いかにご自身のこれまでのご経験が胸を張れることかと気づくと思います。

従来「よい仕事」と評価されてきた時給と地位の高い仕事は、「言語情報処理能力」に立脚した仕事が中心です。弁護士、会計士、医師、政治家、大学の先生……。しかし、これらの仕事は今後の「AIと共存する社会」でその相対的優位性を落とします。例えば、従来なら高い報酬が約束されていたコンサルタントの企画書は、今後はAIで代替されていくからです。

 

――そう聞いても、「何かしらリスキリングをしないと低賃金労働にあえぐ老後になりそう」という恐怖感があります。「下流老人」などの煽り言葉を目にするので。

コロナ禍で「エッセンシャルワーカー」という言葉が世に出ました。当時は主に、感染リスクを伴う対面の仕事という文脈で使われましたが、エッセンシャルとは元来欠かすことのできない大切なこと、命に直結する仕事なのだと思います。ごみ収集、飲食店、商品の販売などは、人の命を支えるために欠かすことのできない仕事なのだということです。

 

エッセンシャルワーカーの仕事こそはAIに代替できない、もっとも尊い仕事です。しかし離職を招くほどに待遇が悪いのも事実です。

 

そんなに重要な仕事なのなら「もっと給与を支払え」と言っていいのか? 圧倒的に需要が供給を上回る仕事ですから、経済原則にあてはめればもっと高い報酬を得てしかるべしです。にもかかわらず、たとえば保育士には給与相場のようなものがあり、この仕事は安くて当然だという固定観念がいまだに社会の中に存在します。

 

「誰にでもできる仕事だから」と言われることがありますが、じゃああなたにできるのですか。そういういうことだと思いますし、いずれ是正されていくと考えています。

 

必要なのは「特に努力しなくても自動的にできてしまう」学びを見つけ出すこと

――学ばねばという強迫観念は捨ててよいということですね。そもそも「学び」という言葉そのものが強迫的だなと感じることがあります。

たとえば子どもはポケモンを500種類以上わくわくしながら覚えますよね。なのに、英単語はそうはいかない。これが学校教育の呪縛です。呪縛によって勉強とは「つまらないけれど我慢してやらないとならないもの」だと植え付けられてしまったのが日本の不幸です。

 

「未来のためにしたくもない学びをしないとならない」というのでは長続きしません。楽しいことが大事です。必要なのは他人との競争ではなく、「自己ベストの更新をはかること」。家事でも育児でも人間関係でも、自己ベストの更新をはかっている人はイキイキしています。なのに「これが必要だ」「これをやらなければならない」と言われると、急に「義務感」「やらされ感」が出ます。

 

そうではなく、「学ぶのって楽しいよ」という原点に立ち返ってほしいのです。興味関心を持っていて、努力せずとも自然にできる、それが学びの本質です。

 

――「努力してこそ学習」という、その感覚自体が「強制されて持たされてきたもの」だということですね。

学校教育の中では、学校が定めた種目の中で他人と比較され続け、点数がつきました。その延長線に仕事があり、学校教育の延長線上で仕事の報酬スケールが決まっている可能性すらあります。今後AIが伸びてくる社会で、これらは仕組みとしてすでにうまくいってないのです。

 

子どもはこうした矛盾を敏感に察知していて「こんな勉強、社会と関係ない」と言い出しています。それが不登校という事象なのではないかと思います。不登校はじつは子どもの問題ではなく、学校制度が社会のあり方にいまだ対応しないまま世界に何周も遅れ、自己変革のシステムも作動しない機能不全の表出です。

 

ですから、不登校のお子さんを持つお母さんは心配しなくて大丈夫です。問題はお子さんではなく学校の側にあり、いずれ社会の側が変革していきます。

 

ぼくは不登校を「登校選択」「在宅選択」という言葉に変えてほしいと思っています。「学校という仕組みが合わないので在宅選択をしました」と言えるようになってほしい。

 

教育機会確保法が施行され、教育機会は行政側が提供しなければならない社会になりましたから、これらはいずれ達成されます。ですから学校に行かないことを気に病む必要はありません。

 

「推し活」も「料理」も学びそのもの。学ぶということの定義を考えなおすべき時代がきている

――仮に余計な思い込みを捨てられたとして、どのようなことから学び始めればいいのか。何かしたいけれどどうすればいいのか、気持ちが焦ります。

まず、「学び」は学校で取り組んできたような「学問」に限らないという認識変更からスタートしてください。意外かもしれませんが、「推し活」も学習の一部です。席の取り方ひとつでも、このタイミングでこう確保するとよい席がとれるというワザがあります。また、時間とお金を管理する能力の高い人は遠くのコンサートを掛け持ちできるため、活動パフォーマンスが明らかに高い。つまり、「学び」という分野には「生活」と同じくらいの幅と深さがあります。

 

お料理、買い物なども最大の学びの一つです。仮にお料理を習ったことがなくても、毎日作り続けている人のお味噌汁がプロよりおいしいということはザラに起きます。これこそが、その人なりの自己ベストの更新を続けてきた価値だと思います。

 

男女共同参画が叫ばれていますが、政策決定に関わる地位にある人の多くが男性で、家事も育児も経験してこなかったのが現状です。少子化対策のためには男性の家事能力を高めることがとても大切なのに、政策上、ほとんど無視されています。

 

女性をふくめて、国会議員は家事・育児をしている人が極めて少ないうえ、女性議員も男性社会に適合して仕事に打ち込むほど評価されてきたため、なかなかルールが変わらないのです。議員は衆参両院で700人以上いますが、育児をしている女性はほとんどいません。学びの価値基準そのものを時代に合わせて変えていかないとなりません。

 

――こうした「自分にあった学び」を探すために、最初にやってみるといいことは何でしょうか。TODOリストを作ってみたり?

この第一歩が全員にふさわしいという共通解は、残念ながらありません。むしろ、こうした共通解があると感じることそのものが学校教育の弊害です。1年生が一斉にひらがなを学ばされた記憶ですよね。

 

推し活から始めても、自己分析から始めてもいいのです。たとえば、この夏休みに子どもがゲームや動画ばかりに熱中して勉強を全くしないとお怒りのお母さまは多いのですが、子どもが実際どのようなゲームをしているのかを詳しく把握している方は極めて少数です。

 

逆に考えてみてください。それだけ長い時間見続けられるのはなぜなのか。もしかして、「その奥にあるテーマ」がお子さんにとっての探求のテーマなのかもしれません。もしかしてお子さんは、動画の背景で人間関係の損得や駆け引きを見つめているのかもしれませんし、背後に流れる音楽に耳の焦点が合っているのかもしれません。こうしたテーマに着眼して対話してみることもいいのだと思います。

 

常に親の側が答えを持っていないとならないと思い込みがちですが、探求学習に於いてはこうして子どもを先生にすると見えてくるものがあります。ぜひいちど聞いてみてください。

 

つづき>>>知らなかった……「何を始めても三日坊主でいつも続かない」とあきらめる人が「見落としている」最高の能力とは?

 

≪OTONA SALONE編集長 井一美穂さんの他の記事をチェック!≫

 

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