「母の呪い」で30歳まで経験なし。団塊世代ジュニアの「高齢処女」にも届けたい、「50歳婚も楽しいよ」漫画家・影木栄貴さん(前編)【インタビュー】
OTONA SALONE / 2024年8月26日 6時30分
『50婚 影木、おひとり様やめるってよ』(KADOKAWA刊)を出版した漫画家の影木栄貴さん。DAIGOの姉、内閣総理大臣の故竹下登の孫としてとしてご存知の人も多いと思います。恋愛経験が少なく、初めてちゃんと男性と付き合ったのは28歳、初体験は30歳だったそう。多くの女性と比べて初体験がここまで遅くなったのには、幼少期より母から言い聞かされていた「呪い言葉」にあったそうです。
>>DAIGOロスから「一緒に老後を過ごせる相手がほしい」、漫画家・影木栄貴さんが語る「50歳結婚のススメ」(中編)
団塊世代ならではの「母の呪い」に囚われていた
――著書に、影木さんは小さい頃からお母様に「男性と二人っきりになってはいけない」とか「結婚するまでセックスをしてはいけない」言われて育ったと書かれていました。そんなお母様の言葉は、今思えばある種の呪いだったと感じていますか?
そうですね。実際母の言葉の呪いにとらわれて、30歳まで男性経験がなかったわけですし。そうやって母の言いつけを守ってきた私に、20代後半で母が突きつけてきた「あなた、まだ彼氏いたことないの?」という言葉。それを言われた時の衝撃は今でも覚えています。
そこから時が経ち、大人になってから「こうなったのはお母さんのせいだからね」とは母に言いました。「あなたの言葉のせいで私はこうなって、いまだに実家にいるわけですよ」と(笑)。もちろん、そうやって母と笑って話せるようなったのは、ある程度の年齢になってからですが。
――世代間の考え方の違いもありますしね。
そうなんです。母のような団塊世代は、まずお見合い結婚が多い。しかも若いうちに結婚して、子どもを2、3人を産んでいるのは当たり前という世代。彼ら彼女らの子ども、いわゆる団塊世代ジュニアに対する性教育が、昔のままなんですよ。「男は怖い」とか「婚前交渉はダメ」とか。
そうやって時代に合わせてアップグレードされることなく、団塊世代の価値観を子どもにそのまま伝えてしまったことで、私のようなガチガチの呪いの箱に閉じ込められる人が出てきたのだと思います。
――男性は怖いものと言われて育った女性は、大人になっても男性に苦手意識を持っている人が多い気がします。
はい。実際私がそうでした。私自身小さい頃から頻繁に痴漢にあったり、漫画を持ち込んだ出版社の編集長から不倫に誘われたり、男性から不快な思いをさせられた経験が何度もあります。
母の言葉プラス、そのような嫌な経験が積み重なって、男性というものを今でもどこかで疑っている自分がいるのだと思います。恋愛対象や性的な対象として男性を見る時に、どうしても「気持ち悪い」と思うことがあったり、拒否反応が出てくることがあるんですよね。親族や結婚の可能性がない男性は平気なんですが。
久しぶりのセックスを前に、婦人科に相談に行ったことも
――30歳で初体験をしたわけですが、それ以降も交際相手がいない期間が長く、久しぶりの彼氏ができた時は、婦人科に相談に行かれたそうですね。
はい。婦人科に行って医者に「久しぶりに男性と経験をすることになりそうですが、身体的に問題はありませんか?」と聞いたんです。その時聞いたドクターが男性だったのですが、まともに取り合ってもらえず、すごくがっかりしました。マンガ『逃げるは恥だが役に立つ』では、アラフィフ処女・百合ちゃんが「50代で初めての性行為をする場合、問題点というのはあるのでしょうか?」ってドクターに相談していたのに。
私は真剣に悩んで言っているのに、ふざけて言っていると思われたみたいで。やっぱり男性にはわかってもらえない部分はあるのかなと思って、それ以来、婦人科は女性医師を選ぶようになりました。
――男性不信に関して、旦那さまに対してはどのような気持ちですか?
相手が夫であっても男性が苦手という根本的な部分は変わっていないし、結婚したからといってすぐに治るものではありません。
ここからは著書にも書いていないのですが、私が結婚後ずっと別居婚を続けている理由は、それもあるんです。男性が苦手な私が結婚生活を長く続けるためにとった方法が別居婚。まずは物理的に距離をとって、そこから徐々に距離を詰めていって、私も男性に慣れていって、最終的に家族になれたらいいなと思っています。
40代・50代女性は結婚よりキャリアをとった人が多い
――2020年の「50歳時の未婚率」は女性が約18%※。この先この割合はどんどん高くなっていくと予想されています。
私の周りでも40代・50代の独身女性はたくさんいます。その大きな原因として、時代が大きく関係していると思っていて。私達の世代って本当に社会からサポートを受けられていません。
まず育児をしながら働くということ自体が難しかった。産休や育休の制度も整っていない会社が多かったし、保育園も全然足りていませんでした。世間の空気としても、出産したら仕事を辞めなくてはいけない、という風潮もまだまだ残っていましたよね。
なので、私の周りにいる優秀なキャリアウーマンの友人たちも、未婚で子どももいない人が多い。女性にとってとても大変な時代だったと思うんです。
※国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」より
キャリアを選んだ女性にこそ、50婚をおすすめしたい
――今の40代・50代は就職氷河期ど真ん中ですもんね。結婚と天秤にかけて悩んだ結果、キャリアの方を選んだという人もいると思います。
はい。女性が社会に進出し始めた代償として、40代・50代で独身という人が多く生まれてしまいました。そんな彼女たちは、結婚にこそ縁がなかったかもしれませんが、バリバリ働いて自分が生きていくだけには十分のお金を稼いでいるし、精神面でも自立しています。それはとても魅力的だし誇っていいこと。
この本は、「今は未婚だけど、これからでも結婚をしたい」と思っている人に読んでもらいたくて、結婚を経験してもらいたくて書きました。「仕事ひと筋で50代になってしまった女性へ。50代での結婚もなかなか楽しいのでどうですか?」っていう影木からのお誘いです(笑)
>>DAIGOロスから「一緒に老後を過ごせる相手がほしい」、漫画家・影木栄貴さんが語る「50歳結婚のススメ」(中編)
親の言うことは絶対じゃないって気づいたのは28歳。婚前交渉をダメだと思っている腐女子が40代になり、婚活・結婚するまでの道のり。自分では動き出せないあなたの背中を、少しだけでも押してくれる、そんなエッセイです。
『50婚 影木、おひとり様やめるってよ』(KADOKAWA刊)
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■影木栄貴(えいき・えいき)
漫画家。1996年『運命にKISS』(新書館)でデビュー。以後、少女漫画、BL漫画、百合漫画、エッセイ漫画などで活躍中。現在は原作・原案を多く手掛ける。代表作『LOVE STAGE!!』(KADOKAWA)はアニメ化、映画化、タイではドラマ化もされた。母方の祖父は第74代内閣総理大臣の故竹下登、弟にBREAKERZのボーカル・DAIGO、義妹は北川景子。
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