「いいお母さん」だったのに不倫…。魔が差して、快楽のあとに女性が見たものとは(後編)
OTONA SALONE / 2024年8月12日 18時31分
ジェクス ジャパン・セックスサーベイ2020によれば、浮気・不倫経験があると答えた男性は67.9%、女性は46.3%。40代女性の32.9%が「特定の人物1人と(現在も)している」と答えています。婚外恋愛は、決して遠い対岸の火事ではありません。
では、過去に不倫を経験した人たちは、その後どんな人生を歩んでいるのでしょうか。
相手との関係や自身の生活の変化について、女性たちのリアルをお伝えします。
【不倫のその後・リバイバル】後編
不倫は卒業したのに……
真美がアルバイトを辞めたのは、その店主と不毛な関係を続ける自分がイヤになったことが最大の理由だが、もうひとつ、情事が終わり閉店からだいぶ経った時間にお店を出る真美の姿をママ友のひとりに見られたことも理由だった。
「あそこでアルバイトをしている」ことはあっという間にママ友に広がり、「時給の詮索もびっくりしたけど、『あそこのオーナーってイケメンよね』と変に男女の仲を探られたのがすごく嫌だった」と真美は吐き捨てるように言った。しかも実際に不倫関係にあれば、後ろめたさはいっそう募る。
女性たちはただの揶揄で「本当のところはどうなの?」と核心を言葉にせず真美に「告白」を迫っていたのだと思うが、そのストレスは真美にとって「今までで最大の嫌悪」を生み、それ以降はママ友たちとの接触を減らすようになった。
それが、かえって真美自身を疑心暗鬼に陥れる選択となった。
不倫を「探られる」不安 次ページ
不倫を「探られる」不安
「あなたのことじゃないよ」
この言葉を口にするのは何度目か、その日も真美は切羽詰まった声で電話をかけてきて「ママ友の◯◯さんが◯◯さんと不倫について話したって言っていた」と動揺を見せていた。
「うん……」
「あなたの名前が出たわけじゃないし、ただの世間話だったんじゃない?ほら、芸能人の◯◯が不倫していたってニュースが昨日あったじゃない」
と続けると、真美は無言でため息をついた。
ママ友たちのちょっとした話題でも極端に「自分のことだ」と当てはめる思考に真美が苦しんでいるのは、婚外恋愛や浮気についてからかわれてからみんなと距離を取り出したことが、逆に自分への疑いを強くした可能性から逃れられないからだった。
第三者として客観的に見れば、退店する自分を一度見られたくらいでそこまで思い詰めることに違和感があった。だが、正直に「何でそんなにみんなの話を気にするの?」と尋ねたとき、
「あの人たち、人の噂が大好きなのよ。これまでも話してきたでしょう?バイトしてるってわかってからいきなり時給の額を聞いてきたり、あの人がイケメンとか何で知ってるのかも怖かったし、不倫をでっち上げてでも私をネタにしたいのがよくわかった」
だから探られているのかも、と揺れる口調で真美は一気に答えた。
実際に不倫をしていたからこそ、その疑惑を強くはねのけることができないのだ。「自分が不倫をしていた証拠」なんて深い付き合いのない人間が手にする可能性は低いのに、自分と違って広い世界で活動する女性たちの行動力を知っている真美は、店主の男性に「私のことを尋ねるかも」とまで想像していた。
不倫の後始末は…… 次ページ
不倫の責任は誰がとるのか
真美の不安も焦りも理解はできるが、慌てたり取り乱したりするほどに周囲は不審感を強くするのであって、「あなたのことじゃないよ、何でもない顔でふーんって答えていればいいんだよ」と力強く何度も言った。それが自分のためと頭ではわかっていても、「実際はわからない」ことまで思考が及ぶ真美は、ママ友たちの間ですっかり萎縮していた。
「もうグループラインも既読スルーで放置してるんでしょ?話題が出ても反応したらダメだよ、そのままで距離を取っていくのがいいよ」
名指しで自分について書かれることはないが、ママ友たちと作ったグループラインで「浮気の話が出たら不安になる」と真美は話していた。だからつい否定する書き込みをしたくなる、そんな言動がかえって「やっている」とうがった見方をさせるわけで、無言を貫くのが自分への関心を薄くする最適解のはずだった。
「そうだよね、うん。返事はしてないの、園で会っても仲のいい◯◯さんたち以外には挨拶だけにしてるし、ランチ会も行かないし。それでいいんだよね……」
押し込めた声で真美は言う。覚束ない意識のままでママ友たちと顔を合わせるのは、距離を取ったのが自分からだったから余計に苦しくなる。それでも、一度そうしたのなら態度を変えないことで周囲は関心を失っていくし、新しいターゲットを探すはずなのだ。
「これも自分のせいだよね」
と、暗い声でつぶやくのを
「あなたのせいだとしても、いつまでもそのままじゃないでしょう。時間が経てば必ず変わるから」
と前と同じ言葉でふたたび答えた。
不倫の責任は自分に返ってくることを、真美は正しく理解していた。
どうして夫以外の男性に身を委ねたのか 次ページ
夫以外の男性に身を委ねた理由とは
真美は、3ヶ月の不倫について夫や子どもに深い罪悪感を持っていた。どうして夫以外の男性に身を委ねたのか、「夫にママ友のことを愚痴っても『仕方ないだろう』と言われるばかりで、それも苦しかった」と後で教えてくれた。だが、だからといって不倫していい理由には絶対にならないことは、こちらが言うまでもなく「馬鹿だった」と真美は口にした。
自分が決めた不倫について、開き直ることもできず夫のせいにする気持ちも持てず、「自分の責任」とわかっているからこそ、終わった後の後悔は深く大きなものになる。心の整理がつかない状態で、日々「嫌な存在の人間たち」をどうしても目にすることで、真美はいつまで経っても安心を取り戻せずにいた。
過去は変えられないし、消せることもない。だから今の自分で生きていくしかない。表現を変えてこう言うと、真美は「わかってる」とうなずく。隠し通さなければならない過去なら、その痛みをしっかりと受け止めて乗り越える力がないと、いつまでも「その自分」に振り回される。
噂好きな女性たちを気にするのではなく、過去の不倫を「終わったこと」として今の自分から切り離す意識を持てないことが、真美にとって一番の弱点だった。それは誰でもなく自分で培っていくものであって、集中するべきなのはいつだって今の現実なのだ。
「また電話して」
真美がその力を持てるまでは、こうして弱音に付き合うことになるだろう。着信を放置しないのはそれができると信じられるからで、いつかは前向きに現状をとらえるようになることを願う一方だった。
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