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体目当ての男に翻弄されて…。勝ち組だったはずの彼女の転落劇とは【不倫の精算 ・リバイバル】(後編)

OTONA SALONE / 2024年8月11日 21時31分

後ろ指をさされる関係とわかっていても、やめられない不毛なつながり…

「充実した暮らし」だけど埋まらない部分

「だって、ねぇ、45歳の女の体に夢中になるって、すごくない?」

不倫がはじまった当初、大げさに目を見開いて明るい声をあげるDさんには、夫を裏切っている罪悪感はなかったように思う。

 

一度寝てしまえば次の約束もホテルに行くのが当然であり、スポーツ教室が終わったあとでこっそり向かったり、ときには「我慢できずに」クルマの中で行為に至ったり、彼との濃密な時間について報告を受けるたび、快楽を純粋に楽しんでいるような、初めての経験に心を踊らせるような高揚感ばかりが伝わってきた。

 

「気をつけないとね」

 

それしか言えない。夫から贈られたダイヤモンドのリングは依然として左手で光っていたが、手入れされた指先は年齢を感じさせない若々しい輝きを持っていたが、彼女がいまどんな危険な状態かを考えると、「良かったね」なんて相槌づちは返せなかった。

 

不倫相手は、小さな製造工業で働く独身の男性で、彼女より8歳も年下だった。

高い収入に努力の成果であるキャリア、優しい夫に趣味と充実した暮らしを送っているはずの彼女が、どうして夫以外の男性におぼれるのか。

 

「私をよろこばせようと、必死になってくれるの。

早く早くって急かすのを見ていると、かわいいなと思うし、私もまだまだ頑張れるなって」

無邪気な笑顔を見せるDさんを見ていると、どうしても違和感があった。

 

そして思い出すのが、夫とのベッドの事情をDさんから聞いたことがない事実だった。「求められる自分」を見たがるのはそのせいか、とひそかに勘ぐったりもしていた。

 

外から見れば「充実した暮らし」も、本人にしか埋まっていない部分のことはわからない。

そこを確認できないまま、Dさんの声を聞いていた。

 

楽しい火遊びのはずだったが… 次ページ

追われるはずが「追う側」になっていた。それどころか

Dさんの状態が変わったのは一月ほど前からだった。

ある日、真剣な声で会ってほしいと言われ急いで駆けつけると、彼女の口から出たのは意外な言葉だった。

 

「彼がね、急にそっけなくなったの。

前々からベッドでも盛り上がらないなと思っていたんだけど、最近は私がする一方で、彼はごろんと横になるばかりだったのよ。

それでもまぁ我慢はしていたんだけど、今日はホテルに入るなり『帰る』って。

もうびっくりして。

ドアを閉めて靴を脱ごうとした途端に『帰る』よ?

何を言っても聞いてくれないから、仕方なくすぐに出て彼を送ってきただけど、つらくて」

明らかに彼は「終わりのサイン」を出している。

 

「翻弄される側」になってしまって… 次ページ

いちど「翻弄される側」になってしまったら、逆転はない

その少し前からDさんは、彼が早く帰りたがったり、約束をドタキャンしたりと、自分を雑に扱い始めたことに気がついていたそうだ。

 

以前なら「気まぐれかしらね」と笑い話で済ませていたのに、だんだんとDさんの口は重たくなった。やがてベッドでのマンネリの話、ついには彼がお金をいっさい出さなくなった話と、暗い話題へと変わっていった。

 

その変化は、「誘わせた側」として関係を楽しんでいたのが、いつの間にか「翻弄される側」になっている恐怖だった。

 

Dさんは主導権を取り戻すかのようにデート代を全部払ったり、スポーツ用品をプレゼントしたりと、懸命に彼の気を引こうとしていた。

 

それでも、彼のそっけなさはひどくなる一方であり、いずれ音信不通になるであろうことは、そばで聞いていて容易に想像がついた。

 

Dさんにその可能性を告げなかったのは、男性に「尽くしている」状態のいま、悪い結末を知れば暴走するおそれがあったからだ。

 

ストーカー状態になっている自分に気づけない、別れられない

「もう諦めたら」

「すっぱり別れたほうがいい」

 

何度かDさんにそう言ったが、そのたびに

「どうしてよ、たかが不倫なのにこんな終わりなんてイヤよ。

最初はあっちから尻尾を振って寄ってきたくせに、飽きたからポイなんて許せないわよ」

と、彼女は苦しそうに顔を歪めていた。

 

スポーツ教室に来なくなった彼は、LINEをしても返信は遅く、電話をしても必ず留守番電話でかけ直してくることもなくなった。Dさんを遠ざけようとしていることは明白だった。

 

その事実を必死に否定するDさんは、一度だけ彼の工場まで行って退社を待ったそうだ。

「会えなかったけど、うれしくないかな、待ち伏せなんて。

驚かせたかったんだけど……」

そう打ち明けてくれたとき、ここまでのめり込んでいる自分への違和感をまったく持っていないことに驚いた。それがいっそうこちらの焦燥を深くした。

 

「ねぇ、もうやめようよ。

逆のことをされたらどうする? どう思う?

不倫相手が会社に来て待ち伏せって、怖いよ」

 

そう言ったこちらを強い目で睨みつけ、Dさんは「もういい」と不機嫌そうに黙った。

それ以降、今日まで彼女からの連絡はなかった。

 

その後。久しぶりの連絡で、彼女に会ってみたら、なんと… 次ページ

敢えて言おう、不倫とは「依存」ではないかと

「本当に別れたい」

という言葉が出てきたとき、「やっとか」という思いとともに、彼女の精神状態がとても不安になった。

 

運ばれてきた料理をぼぅっと眺めるだけで口をつけない彼女はただ疲れていて、行動する気力が尽きていることがわかるからだ。

 

しばらく音沙汰がなかったことを詫びることもなく、Dさんはぽつりと

「ねぇ、あなたが言う依存って、これなのね」

とつぶやいた。

 

はっと箸を持つ手が止まる。

そうだ、彼女は明らかに依存していたのだ。

 

その言葉をはっきりと使ったことはなかったが、「振り向かない不倫相手に我慢してまで尽くすこと」がどれほど不毛な行為か、悔しいという感情の裏にある「また私を求めてほしい」本音は何を意味するのか、Dさんは悟っているようだった。

 

「……」

Dさんは動かない。

 

不倫は後ろめたい関係だからこそ、縁を切りたくなれば簡単だし、切られた側は後を追うことはできない。

 

結婚指輪を外さないといけないほど追い詰められ、その反面別れたいのは夫ではなく不倫相手であり、この矛盾に苦しむのは、一番ほしかった「求められたい自分」がもう与えられない現実を受け入れられないからだ。

 

振り向いてもらえなくてもそれを堂々と責められないのも依存が加速する原因であり、今が本当に瀬戸際なのだ。

ここで踏みとどまる覚悟を持てればと思う。

 

 

 

この記事は2021年2月に初回配信されました。

 

 

≪恋愛相談家 ひろたかおりさんの他の記事をチェック!≫

 

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