【医師が解説】話題の肥満症治療薬「GLP-1」はやせる? 副作用はないの⁉ 更年期ダイエットのコツが知りたい
OTONA SALONE / 2024年8月23日 18時1分
ホルモンバランスが崩れ、代謝も落ちがちな更年期。このまま肥満まっしぐらに進んでいくなんていや! ここは思い切って、肥満症に対する薬を使ったメディカルダイエットを決意したい…でもそれ、有効な選択なんでしょうか?
今回は話題の内臓脂肪減少薬「オルリスタット」や、肥満症治療薬「GLP-1」について正しい知識と活用方法、更年期ダイエットにもおすすめかどうか、ダイエット成功のコツについて、日本生活習慣病予防協会の理事長、日本肥満症予防協会の副理事長などを務める医師の宮崎滋先生にお話を伺いました。
前編記事『【更年期ダイエット】いま話題の「内臓脂肪減少薬」でやせる? 医師にホントのところを聞いてみた!』に続く後編です。
肥満症治療薬「GLP-1」とは?
続いては、肥満症治療薬「GLP-1」。現状、市販薬ではなく、医療機関での治療で使われています。肥満にはGLP-1が良いという口コミを聞き、興味を持っている人もいるのではないでしょうか。
使用経験者からは「昔はコンビニのお弁当は白米含めすべて完食が当たり前だったのに、服用し始めて満腹感を感じてごはんを食べきれなくなった」(40代前半・女性)という実感コメントも。
正しい知識とダイエットへの効果を確認しておきましょう。
GLP-1の基礎知識
ーーGLP-1を配合した肥満症治療薬は、どのようなメカニズムでやせるのでしょうか。
「GLP-1は、食事をとった際に膵臓からのインスリン分泌を促進する小腸で作られるホルモンであり、糖尿病治療薬として使用されています。また、食欲中枢へ働きかけ食欲を抑制する作用や胃腸活動を抑制する作用などもあります。GLP-1を配合した肥満症治療薬を使用すると、食欲抑制による食事量の減少、胃腸活動の抑制による満腹感の持続、血糖値の上昇抑制による脂肪分解促進などが起こり、体重が減少します。
また、他の肥満症治療薬として、マジンドールという食欲抑制作用を有する薬もありますが、依存性等の観点からBMI35以上の高度肥満症患者への使用しか認められておらず、服用は3ヶ月までという使用制限があります」
ーーGLP-1を配合した肥満症治療薬の正しい使い方を教えてください。
「GLP-1受容体作動薬の中で、現時点で肥満症治療薬として国内で承認を受けたのは『セマグルチド』のみです。
セマグルチドの対象者は、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの疾患が2つ以上あり、食事療法・運動療法の十分な効果が得られず、薬物治療の対象者として一定条件を満たす肥満症の患者に限定されています。肥満症治療薬なので、単なる痩身やダイエットを目的として保険診療の処方はできません。
またセマグルチドは週1回の自己注射が必要です。注入器には注射針が装着されており、1回分の薬液が充填されています。注入器を皮膚に押し込むと注射針が刺さり、自動的に薬液が注入され、皮膚から離すとロックがかかり、再度注入することはできません。注入終了前に皮膚から離さないように注意が必要です。
自由診療として、糖尿病治療薬であるGLP-1受容体作動薬がダイエット目的で使用されている実態がありますが、栄養障害、重症低血糖、急性膵炎が発現する可能性があり危険です。
やせている方がさらにやせることを目的として使用することで免疫力低下、骨粗しょう症、不妊などを引き起こす可能性もあるので、肥満症と診断された方だけに用いるべきです。また、投与をやめると高頻度でリバウンドが認められており、肥満症専門病院で専門医や栄養士による適切な診断、治療、適切な生活習慣改善指導を受けながら服用することが重要であると考えます」
更年期女性にはおすすめできるもの? 副作用は?
ーー更年期の女性がやせたいと思ったときには使えるのでしょうか。
「GLP-1受容体作動薬を単なる痩身を目的として使用した場合は、前述のリスクがあるため、安易な自由診療でやせ薬として用いるべきではありません。
また、食事量の減少によって不足したエネルギーを補うため、筋肉が分解される結果として、筋力や身体機能が低下するサルコペニアという状態を誘引し、将来的に転びやすくなったり、寝たきりになったりするリスクも高まることも考えられます。
中長期的に健康な暮らしを送っていくためには、食事の質と量を意識し、やせやすい食事習慣を身につけること、適度な運動を日常に取り入れ、健康的なライフスタイルを目指すことが大切です。脂肪を落とす魔法の薬はありません」
――更年期女性のダイエットへのアドバイスをお願いします。
「まずは、自身の食事習慣と運動習慣を見直し、間食の量を減らす、階段を使うなどの小さな取り組みから食事習慣と運動習慣の改善を開始し、健康的にやせる生活習慣を身につけましょう」
内臓脂肪を減らしたい、食べ過ぎをやめてやせる方向、健康になる方向に舵を切りたいと日々、感じている人は、肥満症治療薬の存在も正しく認識しながら、自分に必要なダイエットを進めていきたいですね。
【取材協力】
宮崎 滋先生
日本生活習慣病予防協会(理事長)、日本肥満症予防協会(副理事長)
結核予防会 総合健診推進センター所長、東京逓信病院顧問、日本肥満症予防協会副理事長。編著書は『ダイエットの方程式』(主婦と生活社)、『肥満症教室』(新興医学出版社)など多数。
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