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40代50代「これって更年期?それとも老化?」「この症状で病院に行っていいの?」線引きは【専門医が解説】

OTONA SALONE / 2024年9月13日 20時1分

「この20年の間、更年期障害の病態には変化がなくとも、メディアで取り上げられる機会は増え、それとともに行政、官公庁や政治家が課題に向き合いはじめました。結果的に、『働く女性の健康問題として何とかしなければ』という認識が社会に広がりました」

 

こう語るのは、長年に渡り更年期医療をリードしてきた東京医科歯科大学大学院教授の寺内公一先生です。幅広い、ときには込み入った症例と向き合うこともある更年期医療の第一人者に、詳しい話を伺いました。

 

前編記事『40代50代「更年期にさしかかる女性」が知っておきたい「医療との上手な付き合い方」とは?』に続く後編です。

 

いちばん多い悩み「これって更年期?それとも老化?病院に行っていいの?」の線引きは

――必ずしも明らかに更年期らしい症状、たとえばホットフラッシュやのぼせを目安として受診するというものでもないのですね。

日本女性の更年期ひとつの特徴は、強いホットフラッシュに苦められる欧米の人たちに比べ、ほてり・のぼせ・発汗ばかりが前面に出てくるわけではない点です。気分も落ち込むし、疲るし、ふしぶしが痛んで、肩もこってと、さまざまな症状が長い年数続くのが日本女性の更年期障害です。ほてり・のぼせだけという訴えは比較的少なく、またこれらの身体的な症状は乗り越えやすいという側面もあります。もしかして、ほてりやのぼせがあってもくよくよせず乗り越えている女性が受診しない90%側なのかもしれません。

 

ほてり・のぼせなどの症状にはHRTが有効です。漢方も使われるほか、現在開発が進んでいる薬の中に、ホルモン製剤ではなくほてり発汗に有効な薬があり、いずれ日本にも導入されると思います。不快な症状がある場合、我慢したりあきらめたりせず、医療につながっておくと、このようないい薬が出てきたときにすぐ治療に進めます。医療側も、ホルモン製剤に抵抗を持っていた人に勧めやすくなるため期待をしています。

 

「この症状は更年期なのかどうかを教えてください」と質問されることがあります。これは判断が難しく、「ここからここまでが更年期」というようなことにはなかなかなりません。たとえばストレスは更年期障害を強くする因子ですが、そのストレスも家の中のこと、仕事の責任、身体の老化などが複合していて、身体の中にさらにホルモンの影響があります。ホルモンのゆらぎが大きな割合を占めている人もいるし、そうでない人もいます。ホルモンの寄与が大きい場合はHRTが効きますが、小さい人は解決しないことがあります。

 

ひとつの手がかりとして、ほてりやのぼせ、発汗が前面に出ている人は、ホルモンの寄与が大きい傾向があります。つまり、HRTが効きやすいと考えられます。同様に、抑うつ、不眠もホルモンの寄与があることがわかっています。このように、一人ずつ寄与が違うため、何をしてもよくならないという人が現れます。診察を続けるうちに、精神的な問題がかなり大きな割合を占めていることがわかってきた場合は、婦人科だけでは解決せず、精神科の先生と一緒に診ていく場合がありますし、血液検査をしてみたら甲状腺の異常が明らかになり、甲状腺の先生に治療をお願いすることもあり、いろいろなパターンで治療は進みます。私たち医師も最初から黒か白かの判断ができるわけではないのですから、ましてや当事者である患者さんが自分で判断するのはかなり難しいと思います。

 

――婦人科や更年期外来を受診して「更年期障害ではないです」と言われてしまったらどうしようと気おくれする人もまだまだいます。目安はありますか?

更年期外来が対象とするのは、40代から50代の女性で、月経に不順が見られる頃から閉経後くらいの時期にあり、他の明らかな病気がぱっと見でなさそうで、かつ精神身体的に多彩な症状を呈する人です。たとえば「めまいはあるけれど月経は順調で、他の症状は何もないです!」という方を更年期と捉えるのは難しいのです。ですが、めまいがあり、なおかつ気分も落ち込むという人は、まず更年期という間口で捉えてから診療していきます。

 

ここで大事なのは、話を丁寧に聞くことです。不調の原因はわからないままなのに、話を聞きながらいろいろアプローチを続けていくうちに不思議と症状が落ち着いてくるという人もいるのです。「不調の原因は何だったのか」突き止めるのが大事だと思ってしまいがちですが、そうではなく、「体調がよくなること」が大事なのです。

 

HRTを続けるうちにだんだんよくなってきましたと言われる場合、HRTに効果があったのか、病院で話をしたそのことが効果を持ったのか、この判定は難しくなってしまいますが、更年期に限らず心身疾患的なものはどれも同じで、はい薬を飲んでと漢方薬が出ることよりも、クリニックの受付から薬局の薬剤師さんまで含めて診察に関与する一同がしっかり真剣に対応してくれたという満足感が大事かもしれません。医療に限らずどのようなサービスでも、ここは気が合わないなと思いながら通い続ける必要はないのです。

 

更年期を乗り越えるためには、社会的なサポート、また自助的な人間関係構築も必要です

――病院での治療以外に、更年期を過ごすにあたって必要なことは何なのでしょうか。

社会に変容も起きています。例えば、60、70代の男性は家事を何もせず、妻が不調なのに「俺の飯はまだか」と言い放つようなことがまだまだあります。いっぽう、昨今の20代、30代の男性は育休も取得するようになり、40代ならば夫が更年期外来についてきたり、夫が「妻がおかしい」と連れてくるパターンもあります。ヨーロッパに比べればまだまだですが、ゆるやかにそうして女性の不調に寄り添う男性も増えてきています。

 

更年期障害は周囲が優しくしてくれればしてくれるほどいい病気ですから、「ストレスフルなパートナー」が減っていることはとてもいいことです。家族にとどまらず、周囲にソーシャルサポート、味方してくれる人を常に作っておいてください。女性のほうがこうした人間関係の構築は上手いのです。「更年期のことを友人に話したら受診を勧められて、思い切って来てみました」という人も多く、こうした友人からの解決策提案はとても大事です。悩んでいますということを包み隠さず友人に共有することで情報をもらえる、互助の関係性があるのですね。いっぽう、男性は仕事のネットワーク重視ですので、定年になったら人間関係ごとなくなり孤立しやすい傾向があります。

 

社会は「自助」「共助」「公助」の3段階で構成されます。医療はこのうち「公助」ですが、「共助」も重要。しかし、50歳になってサポートのネットワークを持たない人がすぐに作れるかというと、難しい。こうした、共助ネットワークがあればその中で吐き出せたであろう気持ちの持って行き場を見つけられず来院する人もいます。更年期の入り口ごろから意識的に「共助」を育てていくのもいいことです。

 

受診の目安は「いつもと違ったら」です。一般的には「その状態が2週間続いたら」と言います。慢性不眠は3か月以降を言うことが多いのですが、自分なりに自助をしても改善しない場合は数週間から数か月でも来院してください。重症度はなかなか自分では判断できないものだと思いますので、まだ大丈夫と思っているようならもう受診すべしと心得ればいいでしょう。

 

お話/東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 茨城県地域産科婦人科学講座 教授 寺内公一先生

*24年10月1日より東京科学大学

2016年より東京科学大学(旧・東京医科歯科大学)大学院医歯学総合研究科女性健康医学にて教授を務める。更年期障害や骨粗鬆症を専門とし、数々の賞を受けている。

 

≪OTONA SALONE編集長 井一美穂さんの他の記事をチェック!≫

 

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