【鈴木蘭々さん】「きょうだい児」として抱いていたのは「世間への怒り」、「お兄ちゃんをバカにするな!」【インタビュー】
OTONA SALONE / 2024年10月9日 19時0分
内閣府「令和4年版 障害者白書」※によると、身体障害、知的障害、精神障害合わせ約965万人の障がい者がいると報告されています。ただし、「きょうだい児」の数は正式には把握されていません。「きょうだい児」とは、障がいのある兄弟姉妹を持つ子どものこと。近年認知が進んでいますが、支援は十分ではありません。
ケアが欠かせないきょうだいがいる家庭で育つ「きょうだい児」は、本人、親とは違った悩みや苦しみ、問題を抱えていることが少なくありません。
「世の中すべてみんな全部ウソツキ」、社会が腹立たしかった
歌手で俳優の鈴木蘭々さんには、8歳上の軽度知的障害のお兄さんがいます。蘭々さんが18歳のとき、心筋梗塞で26歳の若さで亡くなりました。
先日、インスタグラムで亡くなったお兄さんとの幼少時代の写真をアップした蘭々さん。
「今でも亡くなった当日の事は忘れる事が出来ないほど私の心には強烈に残っていて
兄の過ごした障害者としての人生と死を通して私の人生感は一変してしまいました
沢山の考えるチカラみたいなものを私に残してくれた感じ」と語っていました。
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写真は、1歳の蘭々さんと、左が亡くなったお兄さん。
「不機嫌そうな私を心配して寄ってきてくれています。動物にも子どもにも老人にも誰にでも優しい性格の兄だったから多分今も
個性が強すぎてとっ散らかっている私達家族を(笑)こんなふうにずっと見守ってくれているような気もするし…
もうとっくに他の誰かに生まれ変わって今度は全てに不自由の無い身体で人生を楽しんでいるような?
気もします…
天国へ旅立ってしまったのは1993年だから31年も経つのかぁ…。」
――妹で8歳下のきょうだい児だったから感じていたこと、苦しかった、さみしかったなど振り返ってみたら思うことはありますか?
そういったことはなかったですね。障がい者が家族にいるのが、隣にいるのが当たり前という環境で育っているので。
――お兄ちゃんですもんね。
はい。家族でいると「そういう人なんだな」っていう感じの認識です。でも一歩、家庭というところから外に出たとき、世間の目、家族以外の目っていうものを意識するようになったときに、やっぱりうちってちょっと違うんだな、と。障がい者に対する世間の目線っていうのは非常に厳しいものがあるなっていうのは、子どもながらに感じていましたね。
――きょうだい児ならでは悩みはありましたか? プレッシャーや孤独、それこそ夢をあきらめたりという方もいらっしゃいますが。
そういうことはなかったですね。子ども時代はまだ世間もわからないし、家族に障害者がいるからって夢が絶たれるとか、そういう想像力も働いてないんで、そこら辺はぜんぜん感じたことはなかったです。
―― きょうだい児として、振り返ってみて1番つらかったことって何かありますか。
そうですね……ツライと言うよりは腹立たしいような……。そんな気持ちのほうが強かった記憶があります。
>>子どもから見た”大人”。兄に対する瞬間の表情…
兄に向けられる、大人の一瞬の表情・目線…
――やっぱり怒り……。
はい。子どもって大人というものに対して、どこかで「大人ならこうだろう」とか、「こうあってほしい」っていう希望を持ってるんですよね。でもそういうことが、ことごとく裏切られる感じはありましたよね。
それは近所の人であったり、まったく知らない街を歩いている人だったり。よく行く飲食店の人だったり、ときにはクラスメイトのお母さんだったり……。その人たちの、ほんとに瞬間的な、一瞬ではあるんだけど、表情であったり目線であったり言葉だったり、兄に対する世間の冷たい風当たりみたいなものは強く感じていました。
当時は今よりも障害者への理解が進んでいなかったような気がするし、子どもの発する言葉もときに残酷ですしね……その度に思ってました。お兄ちゃんをバカにするな!って。
きょうだい児は、親が兄弟姉妹のケアや入院などで孤独を感じたり、わがままも言えず悩んでいたり、ヤングケアラーになったり、さまざまな苦しみや不安を抱えていることも。近年、障がい者の支援とは別に、きょうだい児への支援が求められています。
【鈴木蘭々さんインタビュー記事】
■鈴木蘭々
1975年8月4日生まれ、東京都出身。「泣かないぞェ」「キミとボク」などヒット曲多数。2018年から歌手活動を再開。芸能生活35年を迎えた23年、初のベストアルバムを発売。基礎化粧品ブランド「NARIA COSMETICS」を立ち上げ、化粧品の開発や販売もする会社の社長という一面も。インスタグラム▶
●初のベストアルバム『鈴木蘭々All Time Best~Yesterday & Today~』
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