レスになったキッカケはED治療薬。「妻のことを思って、服用したのに」47歳男性の悩みと、夫婦の幸せの絆

世界でも類を見ない人口減少社会を迎えている日本は「失われた30年」と呼ばれるように、年々、経済が弱体化したことも少子化の要因となっていわれています。

 

それと同様に深刻な課題のひとつが日本人の没性交渉の常態化です。

 

25年ぶりに実施された『性機能障害の全国実態調査に関する報告』（2023）によれば、年齢別EDの有病率は50歳以上が41.7％、また性交頻度が1カ月に1回未満（1カ月間に1度も性交がない）を「セックスレス」としたところ、全体の70.4％が該当しました。日本は少子高齢化と同時に、恐るべきレス社会に突入していたのです

 

こうした社会課題について男性側の視点から執筆を続けるライター・山下あつおみ氏が、レスを抱えた夫婦問題についてレポートする【後編】です。

 

【無子社会を考える#19】後編

 

◀この記事の【前編】を読む◀性欲はあったが、勃ちづらいのが悩みだったトモユキさん。勇気を振り絞って、ED治療薬を使うことを決断したものの……。＿＿◀◀◀◀◀

 

 

本当の問題 は？  信頼の欠如から生まれていた

その日を境に、トモユキさんと奥さまの肉体関係は途絶えました。
ところが、奥さまに胸の内を話したことで、夫婦は新たな関係を築くきっかけになったようです。

 

「妻との間に距離ができてしまったのは、単に夜の生活がうまくいかなかったからじゃなくて、僕が彼女にちゃんと気持ちを伝えられなかったからだと思います。妻は僕のことを心配してくれていたのに、僕は自分の悩みを隠していたんです」

 

トモユキさんは、奥さまとのコミュニケーション不足が問題の根底にあることに気づいたそうです。
彼は、自分が「男性としての役割」を果たせていないと感じ、奥さまに申し訳なさを抱えていましたが、それを彼女に正直に伝えることができずにいたのです。

 

結果として、その不安や焦りがさらに問題を大きくなったというわけです。

 

 

夫婦の絆を取り戻すための第一歩。会話の大切さに気づく

「その後、僕は少しずつ自分の気持ちを妻に話すようになりました。最初は恥ずかしかったし、プライドも邪魔して、なかなか素直になれなかったんですが、妻は僕の話をちゃんと聞いてくれました。自分の体のことや、薬を使った理由、レスに対する不安、全部を正直に伝えました。
そしたら、彼女も自分の気持ちを話してくれたんです。彼女はずっと、僕が健康を害してまで無理をしていることに勘付いていて、実は心配だったと言ってくれました」

 

この正直な会話が、トモユキさんと妻の関係を変えるきっかけとなりました。二人は、今まで言葉にしてこなかった思いを共有することで、お互いに対する理解を深めていきます。

 

「それまでは、お互いに子供が欲しいという気持ちもどこかにあって、無言のうちに期待していたことがあったんです。僕は妻がもっと肉体関係を求めていると思っていたし、妻は僕が男性としての役割を果たせないことを悩んでいると感じていた。でも実際には、そんなことはなかったんです。お互いが漠然と不安を抱えていて、それを共有できていなかったんです」

 

 

レスの解消ではなく、絆の再構築が目標に

トモユキさんと妻は、その後も肉体関係を持たないままですが、それを大きな問題と感じることはなくなったそうです。

 

「夫婦の営みがないからといって、僕たちの関係が壊れているわけじゃないんですよね。むしろ、今はお互いを支え合っていると感じています。夜、一緒にベッドに入って抱き合うだけで、十分に安心感があります。今までのようなプレッシャーがなくなったことで、二人の関係はより自然なものになりました。」

 

トモユキさんは、レスが続いているにもかかわらず、夫婦関係は以前よりも良好になっていると感じています。

 

「今では、無理に体を重ねる行為を再開しようとは思っていません。僕たちには、もっと大事なものがあると思うんです。それは、日常の中でお互いを理解し合い、支え合うことです。体の関係にこだわらず、夫婦としての絆を築いていくことが、僕たちにとって最も大切だと感じています」

 

 

夫婦の新たな形。 体の関係に頼らない絆

レスは、現代日本の家庭において深刻な課題の一つです。しかし、トモユキさんのように、その状況を乗り越えて新たな夫婦の形を見つけた例もあります。こうしたケースは、従来の考え方とは異なり、体の関係に依存しなくても、より深い絆を育むことができるという視点を教えてくれるように思います。

 

現在のトモユキさんは、夫婦としての親密さが、必ずしも体を通じたつながりに限定されるものではないと感じるようになったそうです。

 

「人生において、妻と一緒に過ごす時間が何より大切です。お互いの温もりを感じ、支え合うことで、言葉にできない安心感を得ています」

 

このように力強くトモユキさんは話してくれました。

 

 

未来への展望 。さらなる絆の深まりを目指して

トモユキさんは、今後も奥さまとの関係を大切にして、二人で過ごす時間やコミュニケーションを深めることに力を入れていく考えのようです。最後に夫婦としての今後の展望についても教えていただきました。

 

「今はただ、妻と一緒にいるだけで満足しています。夜、一緒に抱き合って眠る時間が、僕にとって一番の幸せです。これからも、二人で支え合いながら、より良い夫婦関係を築いていきたいです」

 

トモユキさんの経験は、秘め事に悩む多くの夫婦にとって、重要な示唆を与えてくれるかもしれません。

 

 

レスが夫婦にもたらす“チャンス”とは

今回のトモユキさんのケースは、レスを単なる「問題」として扱うのではなく、むしろ夫婦関係が新たなステージへと進むきっかけとなり得ることを示唆しています。レスの状態に直面したときこそ、互いの絆を見つめ直し、心のつながりを深める機会を考えるチャンスかも知れません。

 

この問題が社会全体でより深く議論され、適切な支援や理解が進むことで、レスという言葉の枠を超えた新しいパートナーシップの形が見えてくることもあるのです。

 

それは、ただ肉体的な関係を回復させるという一元的な解決を求めるのではなく、夫婦がどう共に歩み続けるか、その根本にある「関係性」を再定義する試みといえるのではないでしょうか。

 

最後に、トモユキさん、今回のインタビューにご協力いただき、誠にありがとうございました！

 

 

 

 

 

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