「私には何もないな」と思っていたけれど。49歳がノー塾・丸腰のまま「ワインエキスパート」資格に挑むまでの紆余曲折
OTONA SALONE / 2024年10月10日 20時0分
日々が飛ぶように過ぎていく中、自分のあり方に漠然と迷う40代50代。まるでトンネルのように横たわる五里霧中ですが、そんな中「ほんのちょっとしたトライ」で自分のあり方を捉えなおすには、「最初の一歩」に何をしてみればいいのでしょうか。大好評の「私を変える小さなトライ」を再スタート、読者の皆さんから寄せられた体験談をご紹介します。
アイさん
東京都在住、49歳、ワインショップの販売員。夫、中3と小5の子どもとの4人暮らし。ワインエキスパートの資格を取得し、好きな仕事に生かしている。
【私を変える小さなトライ#7】前編
若いころから好きだったワイン。近所のイタリアンに通い始めて、ワイン熱が再燃
こんにちは。49歳のアイです。ここまで皆さんのトライを拝読して、年を重ねても小さな自己改革を続けていける同世代の皆さんの思いを同志のように受け止めて、励まされました。今日はぜひ、私のトライもお話させてください。私は「ワインエキスパート」という、ワイン関連の資格に独学で挑戦しました。
なぜワインエキスパートに挑んだのか。
ほとんどの挑戦者がそうであると思いますが、私も若い頃からワインが好きでした。村上龍さんの『ワイン一杯だけの真実』(幻冬舎文庫)というワインをテーマにした短編集を読んだ時に、有名なワインの名前が出てくるのに興味を抱いて、ワインの本を買ったり、そこに出てくるワインを買って飲んでみたりしていました。旅行に行くにしても、パリに住んでいる友達に、世界一高価なワインといわれる「ロマネ・コンティ」のブドウ畑まで連れていってもらうなど、当時からワインが趣味でした。
でも、子どもが生まれてからは子育てで忙しくなって、ワインからはしばらく離れてしまって。ワイン熱が復活したのは40代になってから。近所のイタリアンレストランに月1回通うようになって、イタリアのナチュールワインもおいしいな〜って。そのお店でソムリエさんと仲良くなって、ワインの話をする機会ができたんです。
「資格をとって、仕事にすればいいじゃない」。元上司のアドバイスが背中を押した
下の子が小学校に入って以降、週に何日かパートタイムの仕事をしていましたが、今から2年前に転職しようかどうか悩んだことがありました。でも果たしてよい仕事が見つかるのか、わざわざ転職する必要があるのかと思い悩んで答えが出せず、思い切って昔アパレル販売をしていたころの上司に相談してみたんです。
その人は「キャリアアドバイザー」の資格を持っていました。そんな彼女に私の悩みをつらつら聞いてもらううちに気づいたんです。私、キャリア形成という面を意識してこなかったから、転職するにしても履歴書に書けるような特技が何もないなって。これまで漠然と人生を過ごしたままもう40代後半になってしまった、どうしたらいいんだろう。
そんな私に彼女はこうアドバイスしてくれました。「あなたの好きなことは何? ワインが好きなら、資格をとって仕事にすればいいじゃない?」
確かに。このアドバイスは目からうろこでした。飲食店の仕事は帰りが遅くなるからできないけれど、ワインショップの販売であれば、できるかもしれない。何より、若いころあれだけ好きだったワインを仕事にできる可能性が生まれるだなんて。そんなにテンションの上がる挑戦、もう人生に二度とないかもしれない。やってみよう。こうして、趣味ではなく転職のために「ワインエキスパート」の資格を取ろうと決めたのです。
ワインの資格というと「ソムリエ」が思い浮かぶと思いますが、ソムリエは3年以上の実務経験が必要です。私のようなワイン好きの人は「ワインエキスパート」を受験します。とはいえソムリエより難易度が低いわけではなくて、合格率は30〜40%と結構難しいんです。1次試験のペーパーと2次試験の実技があり、勉強時間の目安はおよそ160時間と言われています。簿記2級が勉強時間と合格率の面で近しいでしょうか。
休みの日は12時間、集中して勉強。地図を手書きして、ひたすら暗記
ワインの資格をとる場合、スクールに通う人が多いですが、スクールだと10万円くらいはかかってしまいますし、時間帯は夜の授業も多い。私は自分のペースで勉強したいと思って、独学で挑みました。行きつけのイタリアンレストランのソムリエさんに教えてもらって、『受験のプロに教わるソムリエ試験対策講座』(杉山明日香著)という参考書を買いました。
ところがいざ勉強を始めてみると、フランス語が驚くほど頭に入ってこないんです。そもそもすべてのことが若い頃に比べるとなかなか覚えられません。やっぱり無理なんじゃないのかなと何度も心が折れかけました。結局のところ、40代以降の資格トライって、いかに早く自分にとって効率のよい暗記方法にたどり着けるかで心が折れるかどうかが決まる気がします。私は結局、自分にとっては「手書きに勝る暗記法なし」と気づきました。なので単語や地名を覚えるために、ボルドー地方の川の名前と右岸と左岸の産地などをすべて地図に手書きしました。それがTOPの画像です。加えて、ベーシックですが「語呂合わせ」の活用。ボルドーのメドック地区の格付けは1級から5級まで書き出して、語呂合わせで覚えました。替え歌にしているYoutuberさんもいるので、大変助かりました。
お休みの日には、12時間ぶっ通しで勉強しました。もちろん、家事は効率を上げて対応。夫にも本気度は伝わったみたいで、応援してくれました。私は独学で挑戦しましたが、フルタイムで働いている人はむりやりにでも勉強する時間をとるために、スクールに通うのがオススメとソムリエさんは言っていましたし、その意味もよくわかりました。そもそも自分のためだけの時間を取るのが大変なので。
参考書以外には「ワイン受験.com」というサイトの模擬試験を最後の1、2カ月、ひたすら何度もやりました。解いた問題は7611問、正答率は76%でした。合否ラインは65%以上といわれているので、1次試験は通るかなと思いつつも、不安感を払拭するために、ひたすら勉強する。そんな日々でした。
ここまでの前編記事ではアイさんのワインエキスパートへの道のりについて伺いました。続く後編記事では、資格取得がもたらした変化とこれからの夢について教えてもらいます。
つづき>>>「この年でもできるんだ」。合格したら「いちばん変わったこと」って果たして何だった?
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