【離婚とお金】夫婦合算の年収が750万円の場合、「養育費」はいくらもらえる?「住宅ローン」の残金はどうなる⁉【行政書士が解説】
OTONA SALONE / 2024年10月12日 21時1分
借家と持ち家。どちらに住んでいる人が多いと思いますか?
総務省の統計(令和5年、住宅・土地統計調査)によると持ち家(全体の60%)は借家(35%)の約2倍です。
今回の相談者・椎野真央さん(仮名)は中学生、小学生の子どもを抱える子育て世代ですが、5年前、夫の強い希望で借家から持ち家に引っ越しました。せっかく手に入れたマイホーム生活でしたが、夫の独りよがりな性格にうんざりし、口をきかなくなり、夫婦の関係が完全に冷え切っていました。
前編では結婚生活がついに破綻した経緯をお届けしました。真央さんと夫は離婚することに決めたのですが、問題は持ち家の処遇です。
夫は「僕が住む」の一点張りでしたが、真央さんは違いました。「夫に渡すくらいなら、いっそのこと、売ってしまいたい」と考えていたのです。
行政書士、ファイナンシャルプランナーとして夫婦の悩み相談にのっている筆者が、離婚と住宅ローン残金の処理について語ります。
◀この記事の【前編】を読む◀ 離婚のきっかけは、フルリノベで中古物件購入。まだローンが残っているなか、離婚することに……。__◀◀◀◀◀
<家族構成と登場人物、属性(すべて仮名。年齢は現在)>
夫:椎野英也(44歳)→会社員(年収500万円) ☆今回の相談者
妻:椎野真央(42歳)→派遣社員(年収250万円)
娘:椎野理央(13歳)
息子:椎野勇也(11歳)
【行政書士がみた、夫婦問題と危機管理 ♯2】後編
資産価値が購入時よりも下がっていることが判明
真央さんは「うちはいくらで売れるのかな」と思い、無料の査定を申し込むべく、駅前の不動産屋の門を叩いたのです。しかし、担当者がはじき出した金額は1,900万円。まだ住宅ローンは2,360万円も残っており、これでは460万円の赤字。460万円を現金もしくは借入で用意しなければなりません。
真央さんは愕然としましたが、「いや、おかしいでしょう。買ったときにリフォームしたんですよ。そのことが反映されてないじゃないですか?」と指摘。しかし、担当者は「いや、反映しています。かなり個性的な間取りにしたようですね。これじゃ、買いたいって言う人は限られますよ」と回答。
そこで真央さんは「いや、リフォームする前だって2,000万円の価値があったんですよ。それより安くなっているじゃないですか?」と質問。しかし、担当者は「お買い上げから5年が経過していますよね。いくらリフォームしても劣化する部分があるんですよ」と返答。
さらに「そもそも駅から徒歩で25分も離れていますよね。だから、お買い上げのときに安かったわけで……。今回もあんまり人気が出ないんじゃないかな。ただでさえ離婚した夫婦が住んでいたって縁起が悪いのに」とダメ押しされたのです。
そして、「ローンが残っちゃうのは頭金を入れていないから、ローンの期間がマックス(35年)だからですよ。途中で売ろうなんて考えちゃいけない物件なんです」と念押しをされ、真央さんは肩を落として帰宅するしかありませんでした。
マンションを購入したとき、真央さんは専業主婦。しかし、長男が小学校に上がったタイミングで働き始めました。現在は派遣に登録し、オペレーターとして活躍し、毎月20万円以上、稼いでいます。
それでも二人の子どもを抱える真央さんにとって460万円は大きな金額です。もちろん、同額の貯金を持ち合わせていないし、こんな大金を貸してくれる親戚、友人も見当たりません。そもそも夫が進んで購入したマンションなのに「なんぜ私が460万円も工面しないといけないの!」と憤ります。
夫のわがままで購入した物件のマイナス分。どうにかできる⁉
筆者は行政書士、ファイナンシャルプランナーとして夫婦の悩み相談にのっていますが、真央さんが筆者の事務所へ電話をかけてきたのは、マンションの件で出口が見えなくまった矢先でした。
結婚している間に築いた財産は夫婦の共有です。(民法762条)
真央さんは夫婦は結婚15年目に持ち家のマンションを購入しました。夫が10割の所有権を持ち、夫が債務者となって住宅ローンを組んでいます。真央さんは登記上の権利を持っていませんが、法律上は真央と夫の共有です。
しかし、離婚することで共有の状態は終わります。夫婦の共有財産を分け合わなければなりませんが(民法768条)マンションも分与の対象になります。夫婦の財産が預貯金だけなら分かりやすいです。仮に残高が500万円なら250万円ずつ分ければ良いからです。
しかし、マンションの場合、建物自体はプラスの財産ですが、一方で住宅ローンはマイナスの財産です。しかも、真央さんの場合、マンションを売っても利益は生まれません。残るのは460万円の住宅ローンだけ。
筆者は「住むところを失った挙句、230万円のローンを払ってと頼んでも、旦那さんは首を縦に振らないでしょう」と指摘しました。
養育費の金額を決めてからの交渉に
そこで筆者は「まず住宅ローンより先に養育費を決めましょう」と提案。未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合、どちらが子どもを引き取るのか……親権の所在を決めなければなりません(民法819条)。
真央さんは「夫は何も言っていないのですが、娘や息子のことは私が全部やっているし、親権を主張することはないと思います」と言い切ります。
仮に真央さんが子どもの親権を持つとして、非親権者は親権者に対して養育費を払わなければなりません(民法766条)。
具体的な金額ですが、家庭裁判所が公表している養育費算定表にお互いの年収を当てはめて計算します。今回の場合、夫の年収は500万円、妻は250万円なので養育費の相場は子2人で毎月7万円です。
筆者は「これは旦那さんがどこに住んでいても基本的には変わりませんよ」とアドバイス。
このことを踏まえた上で真央さんは再度、夫に投げかけたのです。
「理央(長女)と勇也(長男)の養育費も払ってもらわないと! ローンと合わせると毎月14万円を超えるけれど、本当に大丈夫なの?」と。
夫の手取りは毎月24万円。マンションの維持費(固定資産税、修繕積立金、駐車場代)で毎月3万円、マイカーローンで毎月3万円を差し引くと夫の生活費は毎月4万円しか残りません。これで食費、水道光熱費、携帯代などを捻出するのは不可能です。
もし、夫がマンションを退去し、実家に戻ったらどうでしょうか? 毎月7万円の住宅ローンの分だけ負担が軽くなります。両親に多少の生活費を入れたとしても生活は成り立つでしょう。
そこで真央さんは「離婚したら住宅ローンだけ返済してくれれば結構です。養育費を払ってくれなくても」と提案したのです。
今回の場合、養育費の相場と住宅ローンの返済額はほぼ同じです。真央さんの手取りは毎月18万円です。真央さんの方で維持費を負担しても、まだ15万円も残るので、二人の子どもを育てていくことは可能でしょう。真央さんは養育費の代わりとして住宅ローンを返済して欲しいと頼んだのです。
離婚するのは夫婦の都合
とはいえ、このマンションに並々ならぬ愛着を持つ夫です。「(マンションの)権利を持っているのは僕だ!」「リフォームの計画を立てたのは誰だと思っているんだ!」「いっそのこと、離婚しなけりゃいいだろ?!」と3ヵ月間にわたってダダをこね続けたのですが、最後に真央さんは「理央と勇也のことを第一に考えてください」と頭を下げたのです。
もし、真央さんがマンションから出て行った場合、同じ学区内に賃貸が見つかる保証はありません。二人は小学校、中学校を転校しなければなりません。5年間、住み慣れた家、使い慣れた部屋、通い慣れた道を失うのです。
離婚は両親の都合です。子どもに何の影響も与えずに別れるのは無理ですが、その影響を最小限にとどめなければならないのが親の努めです。「子どものため」という言葉が心に響いたのか。
夫はここに至って「そこまで言うなら。でも9年後には出て行けよ!」と涙声で話し、真央さんの提案を受け入れ、マンションを立ち去ることを約束したのです。
こうして長男が成人するまでの9年間、真央さんはマンションに住み続けることが保証されたのです。不動産の所有者は夫のままなので「妻子が住むこと」を一筆、交わしました。また夫は養育費を払わない代わりに住宅ローンを返済するので、ローンの債務者は夫のままです。
ここまでは真央さんが離婚するにあたり、赤字で手放せないマンションを子どものために残すまでの奮闘を見てきました。
築年数が経過している、駅から離れている、頭金を入れない、そして35年の住宅ローンを組んでいる。このような物件は高い確率で不良債権になり、好きなときに売却できないので、本来はそのことを承知で購入しなければなりません。
とはいえ何も知らずに購入してしまったら仕方がありません。今回のように住宅ローンの月額(76,000円)を低く抑えたので、とりあえず、現状維持(不動産の所有権や住宅ローンの債務者を変更せず)をする選択肢がありました。せっかくのマイホームが夫婦にとって手かせ、足かせになるのは残念ですが、売れないなら売れないなりに何とかしなければなりません。
≪男女問題専門家(行政書士、ファイナンシャルプランナー) 露木幸彦さんの他の記事をチェック!≫
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