「王子様を待つだけなんてイヤ!」守られるのではなく、守る立場になりたい!「彰子」は新しいタイプのお姫様!?【NHK大河『光る君へ』#40】
OTONA SALONE / 2024年10月22日 11時0分
*TOP画像/彰子(見上愛) 大河ドラマ「光る君へ」 40話(10月20日放送)より(C)NHK
平安の女たち、平安の男たちを描いた、大河ドラマ『光る君へ』の第40話が10月20日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、作品の内容や時代背景を深掘り解説していきます。
彰子の”女”であるがゆえの格闘…父・道長に自分の思いを伝えるも
道長(柄本佑)は病に伏せる一条天皇の姿を前に次期皇位について考えを巡らせます。彼は自身の地位をより確固たるものとするため、実の娘である彰子(見上愛)が生んだ敦成(濱田碧生)を後継にすることを検討します。しかし、一条天皇(塩野瑛久)も彰子も彼の第一子である敦康(片岡千之助)を後継にすることを望んでいます。このことがきっかけで、道長と彰子の間に亀裂が生じました。
彰子は道長が自分に相談もせず、次の東宮を敦成に決めたことに感情がかき乱されます。
道長は彰子に帝がこの決断を納得していると伝えますが、彰子は病で気持ちが弱っている一条天皇を父が追い詰めたのだと勘ぐります。それというのも、一条天皇から敦康を次の後継にすると聞いていたからです。
「私は 敦成の母でもありますが敦康様の母でもあるのです」という台詞にも表れているように、彰子は敦成のことを実子の敦康と同じくらい愛しています。敦康を思うと4歳の敦成を先に東宮にすることに耐えられないのでしょう。
彰子は「父上は どこまで 私を軽んじておいでなのですか!」と言い放ったように、道長が自分の気持ちを軽んじていると感じています。賢く、洞察力のある彼女は、幼い頃に入内した自分の境遇も道長の思惑も理解できているのでしょう。
彰子は一条天皇のもとに気持ちを変えてもらえないか説得に出向こうとしますが、道長にあっけなく妨げられます。
「政を行うは 私であり中宮様ではございませぬ」
この一言は彰子の心を傷つけ、彼女を深い悲しみに突き落としました。
「中宮なぞ 何もできぬ」「いとしき帝も 敦康様もお守りできぬとは」と涙を流し、「藤式部 何故 女は 政に関われぬのだ」と疑問を口にします。まひろ自身も若かりし頃はこの問いにさんざん悩まされてきましたが、彰子もかつてのまひろと同じように女であること、女であるゆえの無力さを嘆いています。
めんどうなことは男に任せて、蝶や花やとちやほやされることだけが女の幸せとはいえないと思います。女にだって誰かを守りたいという強い思いや、守り切れないときに無力さを感じることがあります。
彰子は現代的なお姫様…新たなプリンセス像の系譜につながっている!?
ここ10年ほど前から、お姫様のイメージが国内外において大きく変化しています。このことはディズニーアニメ映画のヒロインにもうかがえ、メリダやアナ、モアナなどのように自力で道を切り拓いていくプリンセスが増えています。なお、彼女たちには色白で、ブロンドのロングヘアという外見的特徴もありません。
本作における彰子はこうした新たなプリンセス像の延長線上にあると考えられます。
彰子が現代的な新しいお姫様であることは彼女の着物の色にもうかがえます。一昔前までは、お姫様といえば赤やピンクのドレスや着物を身にまとっているイメージがありました。彰子についても薄紅色の着物を当初着ていましたが、まひろに「私が好きなのは、青。空のような」(第33話)と伝えたことをきっかけに青い着物が彼女のトレードマークになりました。
薄紅色の着物を身にまとっていた彰子はいつもうつむいており、道長や周囲から何を言われても「仰せのままに」としか答えませんでした。また、彼女は親や周囲の言うままに動いており、自分の心に従って何かをするようなことはありませんでした。彰子のこうした振る舞いは平安時代の一般的な姫の振る舞いであるほか、国内外における数々の作品に描かれてきた姫たちの振る舞いに通じるものがあります。
彰子の心が大きく変化したのは、一条天皇(塩野瑛久)に告白した35話の一幕です。彰子と一条天皇は正式な夫婦関係にあるとはいえ距離がありました。ふたりの関係は彰子の勇気ある一声によって変化していきます。彰子が藤壺を訪れた一条天皇に「お上、お慕いしております! 」と伝えたことでふたりの間のわだかまりが溶け、心が通じ合うように。そのあとしばらくして、彰子と一条天皇は子宝にも恵まれます。彰子は一条天皇との間に子を授かり、宮中でも安定的な地位を獲得しますが、それは勇気ある行動があってのことでした。
平安時代において女性が男性に告白することは一般的でなかったほか、告白は男性が女性にするというのが従来の物語では主流でした。一昔前のこうした常識を彰子は打ち破り、自分の力で帝の寵愛と幸せを手にしたのです。彰子の姿は男性に手を差し伸べられて幸せになる姫たちとは大きく異なるといえます。
本作は男たちがつかさどっていた平安時代で、女たちが社会を陰ながら動かしていたことが分かる描写も見所の1つとなっています。男の尻に敷かれているはずの女たちの賢さや行動力、心の強さに、私たちが鼓舞されることも。彰子が今後どのように振る舞うのか楽しみですね。
▶つづきの【後編】では、親ガチャで職業がほぼ決まっていた平安時代の「職業」についてお届けします。__▶▶▶▶▶
≪アメリカ文学研究/ライター 西田梨紗さんの他の記事をチェック!≫
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