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冬目前の霜降の頃、まさかの「りんご」が料理素材に?この時期「組み合わせると最強」の食材とは【田野岡メソッド/二十四節気のかんたん養生】

OTONA SALONE / 2024年11月26日 11時55分

こんにちは、再春館製薬所の田野岡亮太です。

私は研究開発部に属し、さまざまな商品に携わってきました。その過程で、たとえば漢方原料が土地土地で少しずつ性質を変えること、四季のうちでも変わることを知り、やがて人間の心身そのものが気候風土に大きく影響を受けていることに深い興味を持つようになりました。中医学を学び、国際薬膳調理師の資格も獲得、いまもまた新たな活動を続けています。

1年に二十四めぐる「節気」のありさまと養生について、ここ熊本からメッセージをお送りします。

 

【田野岡メソッド/二十四節気のかんたん養生】

たくさんある熊本名物。さつまいもと菊いもが旬

11月に入るといよいよ収穫の秋です。先日は通勤路の脇でさつまいも掘りの風景を見かけました。熊本には農産物の名産品が多くありますが、さつまいももその一つです。

熊本には「いきなり団子」という郷土名物があります。輪切りのさつまいもを小麦粉で包んで蒸した素朴なおやつで、熊本空港でも売られています。

「いきなり」とは「簡単・手早く・すぐに」という意味の熊本弁です。短時間で簡単につくることができる、急な来客でもすぐに出せる、というのが名前の由来だそうです。「蒸す」は調理に油を使用しないので、消化作用をする脾の機能にとって優しい調理方法です。改めて考えてみると、調理方法にまでこだわりがつまった郷土料理ですね。

 

今回も前回同様、旬の食材のありがたさを薬膳・中医学で紐解いてみます。少し難しい説明も含まれますが丁寧に書いてみたいと思います。まず、「さつまいも」です。さつまいもは身体に摂り込まれたらどんな働きをするのか…がこちらになります。

 

■さつまいも

【脾腎】脾と腎の働きをケアする。
【補中、益気】自然の“甘み”で脾の機能に働きかけます。
【滑腸、通便】その結果、大便の通りを良くします。

 

さつまいもは身体に摂り込まれた後、脾と腎の経絡に入るとされています。秋から冬への季節の移り変わりの“変化”の時季の脾の機能には嬉しい働きかけです。呼吸は肺と腎の共同作業と中医学では考えています。秋~冬にかけては、寒さ・乾燥を得意としない肺の機能をケアしてあげたい時季なので、腎への働きかけは肺の呼吸の働きを助けてくれますね。脾と腎の機能に働きかける食べ物がこの時期に最盛期を迎えるのはとても理にかなっていて感心します。

 

消化作用の脾の機能にさつまいもが働きかけた結果、「滑腸、通便」腸のコンディションが良くなり、大便の通りが良くなります。大腸のコンディションが良くなると、大腸と表裏関係の肺の機能にも良い影響があらわれます。さつまいもの名産地であり、郷土料理としてよく目にしていますが、“旬”という視点で改めて見ると、この時季に嬉しい効能を届けてくれる食材と紐解くことができ、自然の恵みに感謝するばかりです。

 

スーパーフードとも呼ばれる“菊いも”も熊本県は生産が盛んです。菊に似た花を咲かせた後、地上部が全て枯れるといよいよ収穫の時期です。菊いもは身体に摂り込まれたらどんな働きをするのか…がこちらになります。

 

■菊いも

【脾肺】脾と肺の働きをケアする。
【通便】大便の通りを良くします。

 

菊いもは身体に摂り込まれた後、脾と肺の経絡に入るとされています。さつまいもと同様で、やはり秋に収穫を迎える食材は脾と肺の機能にやさしいですね。熊本の菊いも生産者様にお話を伺った際、「菊いもは畑から養分を吸収する能力がとても高いから農薬を使うと吸収してしまうかもしれない。だから、米ぬかを1年以上醗酵させて作った酵素肥料を使っているよ」と聞くことができました。旬を迎える自然の恵みには、農産物の特性を理解して愛情をこめて育てていらっしゃる“人”の力があるんだなと感じた瞬間でした。

 

この時期の旬、もちきびとりんご

脾の機能にやさしい雑穀に“もちきび”があります。北海道から東北の地域で栽培が盛んとのことで、岩手県のもちきび生産者様を昨年のこの時期に訪問させていただきました。もちきびは身体に摂り込まれたらどんな働きをするのか…がこちらになります。

 

■もちきび

【脾肺】脾と肺の働きをケアする。
【補中、健脾】自然の“甘み”で脾の機能に働く。
【補肺】肺の働きを補います。

 

もちきびは身体に摂り込まれた後、脾と肺の経絡に入るとされています。炊飯した雑穀は噛むとほのかな甘みを感じることが出来ます。「補中、健脾」消化作用の脾の機能は、この自然の甘みを嬉しく感じるのでおなかのコンディションが整います。「補肺」脾の機能が整うので、胃~小腸~大腸の通りが良くなる…その結果、大腸と表裏関係の肺の機能も補われると考えることが出来ます。食材の効能を紐解くと同じような説明になりますが、「季節の変化で生じる身体の不調に対して、自然は何通りもの方法を準備してくれている」とも解釈できます。中医学を学びながら、自然の偉大さを改めて感じます。

 

果物ではりんごをおすすめしたいと思います。りんごは身体に摂り込まれたらどんな働きをするのか…がこちらになります。

 

■りんご

【脾胃大腸】脾胃と大腸の働きをケアする。
【生津、潤肺】肺を潤わせます。
【益胃、消食、健脾】消化機能の働きをケアします。

 

りんごはこれから収穫量が増えるのでスーパーで目にする機会が増えると思いますが、やっぱりこの時季にケアしたい「消化作用の脾胃」「身体に潤いを摂り込む大腸」に働きかけてくれます。“旬”を並べてくれているスーパーは、その時季の身体の薬箱のように感じます。

 

りんごは「料理する」のもまたいい。使い勝手のよい素材です

りんごを洗ってそのまま食べる丸かじり、薄い輪切りにするスターカット…など食べ方もいろいろありますが、料理の食材として使ってみても美味しいです。「れんこんと鶏肉のりんご煮」です。れんこんのしゃきしゃき感とりんごのとろっとした食感のコントラストを是非味わっていただきたいレシピです。

 

鶏もも肉をごま油で炒めてかられんこんとにんじんを軽く炒め合わせ、ひたひたのお湯にお醤油とお酢少々、お砂糖少々。中火で煮たてて10分、最後にりんごを加えてから強火で水分を飛ばします。りんごが煮汁を吸ってうまみの塊になります。

 

熊本県はれんこんの産地で、同僚かられんこんをもらったことがありました。そのお返しに…ではないのですが、れんこんと鶏肉のりんご煮を作って渡したところ、「りんごをこんな風に使うなんて初めて知った!」と驚かれたことがありました。冬瓜より形は残りますが、煮汁のうまみとりんご本来の甘みと酸味を感じる…なんともいえない味がします。特売のりんごを見つけた時にでも、ちょっと試していただきたいレシピです。

 

秋に旬を迎える食材は、秋にケアをしたい肺・大腸・毛穴に働きかけてくれます。今回は少し難しく話してしまいましたが、スーパーで「あ!旬だな」「この時季の特価!」のPOPを見かけたら、「おなかの薬だな」と思って手に取っていただけると良いと思います。

 

次回からは冬ですね。

 

 

≪OTONA SALONE編集長 井一美穂さんの他の記事をチェック!≫

 

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