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「私が貯めた1000万、夫になんて分けたくない!」42歳の妻が、浪費家の夫と離婚。損をしないために知っておきたいこと【共働き夫婦の財産分与】

OTONA SALONE / 2024年11月3日 21時0分

結婚している間に築いた財産は、夫名義でも夫のもの、妻名義でも妻のものではなく、夫婦の共有…それが法律(民法762条)のルールです。しかも、夫婦が離婚するとき、相手の財産を「渡してください!」と言うことが認められています(民法768条)。そう聞いてもピンとこないでしょうが、それもそのはず。

 

法務省が公表している「財産分与を中心とした離婚に関する実態についての調査・分析業務報告書(令和3年)」によると、財産を請求しなかった理由として一番多いのは「制度を知らなかった(14%)」です。

 

なぜでしょうか? この条文はもともと「妻が専業主婦」という前提で作られているからです。専業主婦には収入がないため、結婚生活を続けていれば良いですが、いざ夫婦関係がおかしくなったら大変です。もし、「夫名義の財産は夫のもの」という法律だとしたら、妻は離婚するとき、無一文で放り出され、最悪の場合、路頭に迷ってしまうでしょう。だからこそ、夫の財産の半分を請求することができます。

なぜなら、妻は夫婦の財産のうち、半分の権利を持っているからです。妻は家庭内で家事や育児を一手に引き受け、そのおかげで夫は家庭外で仕事を続け、安定した収入を得る…いわゆる内助の功がその理由です。これを離婚の財産分与といいます。

 

前述の統計によると離婚する際、夫婦の財産を2分の1ずつ分け合ったケースは全体の15%、2分の1以外の割合で分け合ったケースも15%。もっとも多かったのは「割合を意識せず、双方が必要な財産を取り合った(24%)」です。

 

時代は昭和から平成、そして令和と移り変わっています。令和の時代において専業主婦(458世帯)は共働き(1,177世帯)の半分しかいないので「男は外で働き、妻は家を守るべき」なんて時代遅れです。さらに働く女性は10年間で10%以上(340万人)も増加し、現役世代(25~44歳)の就業率はほぼ同数(女性78% 男性83%)です。(令和4年、男女共同参画白書)

 

このように男女間の「性差」がなくなるジェンダーレスが進んでいる昨今で、「夫の財産の半分は妻のもの」という考えそのものが時代錯誤なのです。しかし、法律の条文は相変わらず、現代の事情を反映していません。筆者は行政書士、ファイナンシャルプランナーとして夫婦の悩み相談にのっていますが、今回の相談者・福原心菜さん(42歳。結婚6年目。仮名)は「財産分与」で悩む女性の一人。なぜなら、夫はより8歳も年上で稼ぎが多く、節約して貯金を作ったからです。

 

法律の通りに「財産分与」をすると、妻の貯金のうち、夫は半分の権利を持っているので、逆に夫へ貯金を渡さなければなりません。キャリアの女性は離婚するとき、「もらう側」から「渡す側」になる可能性があるのです。節約家の妻が損をし、浪費家の夫が得をするのはいかがものでしょうか。

 

前述の統計によると離婚時、財産分与をめぐって夫婦間で争いになった夫婦は全体の11%。一方、争いにならずに離婚した夫婦は88%です。頑張って働き、努力して貯めた貯金を失わずに離婚するには、どうしたら良いのでしょうか?

 

なお、本人が特定されないように実例から大幅に変更しています。また夫婦の年齢や金銭感覚の違い、離婚の経緯、財産分与の条件などは各々のケースで異なるのであくまで参考程度に考えてください。

 

 ☆今回の相談者

<家族構成と登場人物、属性(すべて仮名。年齢は現在)>

夫:福原英一(34歳)→会社員(年収500万円。貯金不明)

妻:福原心菜(42歳)→会社員(年収600万円。貯金1,100万円) 

【行政書士がみた、夫婦問題と危機管理 ♯3】前編

shutterstock.com

節約が当たり前…で育った妻と、浪費家の夫

「彼は平成生まれなのに、昭和の亭主関白みたいな感じなんです!」と心菜さんは嘆きます。彼女の悩みの種は金銭感覚が全く違うこと。なぜでしょうか?お互いが産まれ育った環境が違っているからです。

 

まず心菜さんは4歳のとき、両親が離婚。母親はシングルマザーとして心菜さんを育て上げたのですが、住居は毎月2万円の県営住宅。母親はパートを掛け持ちし、何とか年収200万円を稼ぎ、ひとり親の手当を加え、どうにか暮らしていたのですが、途中で父親からの養育費振込が途絶えてしまい…心菜さんは子どものとき、金銭的に厳しい生活を強いられたので、「節約するのは当たり前。日常茶飯事って感じです」と振り返ります。

 

今でもスーパーのネットチラシが更新する曜日を暗記しており、スーパーまでの距離とガソリン代を計算し、もっとも安く買えるお店を選んでいます。なるべく朝一番に行き、消費期限が近い見切り品を手に入れます。またメルカリやヤフオクで不用品をポイントに換え、ポイントで中古品を買うように心がけています。心菜さんは二度と貧しい思いをしたくない一心で高校を卒業後、携帯販売会社に正社員として就職。エリアで一位の成績をあげるなど実績を積み重ね、エリアマネージャーに昇進したのです。

 

心菜さんは質素倹約が苦にならず、独身の間に600万円の貯金を作ったのですが、「うちだけが特別じゃない。どこの家もそうだと思っていました」と言います。心菜さんの身に染みついた習慣は結婚しても変わりませんでした。心菜さんがマネージャーに昇進してから6年間。給料は手取り24万円のまま、ずっと据え置きの状態。一方で物価は毎年のように上昇しているので、出費を最大限、切り詰めることを引き続き、努めてきたのです。

 

 

一方の夫はどうでしょうか?実家は多少の不動産を持っている地主。父親は平日に会社員、休日に農業に重視する兼業農家。会社員の給料以外にもアパートの賃料を得ており、比較的、お金に余裕がある家庭に育ったようです。心菜さんは「義母さんは専業主婦だし、両親が揃っているのってうちとは違う感じです」と羨みます。買いたいものは何でも買っていい。夫にとって当たり前のことですが、それは大人になってからも同じでした。

 

最初に金銭感覚の違いで喧嘩になったのは結婚3ヵ月目のこと。夫が新車を購入したのですが、心菜さんに何の相談もありませんでした。車種はトヨタの86で価格は400万円。頭金なしでフルローンを組んだと言うのです。心菜さんが「ちゃんと考えているの?」と注意をすると、夫は「俺がローンを払うから迷惑をかけないよ」と知らん顔。

 

もっと大きな問題はスポーツカーだということ。スーパーに買い出しに行こうにもラゲッジが狭くて十分な荷物を詰めません。全幅が広いので駐車場も停めにくいし、車高が低いので乗り降りをしにくい。心菜さんは「私が運転することも考えているの?」と苦言を呈したのですが、「だったら運転しなきゃいいじゃん!」と他人事のように言うのです。

 

筆者が「その後、どうしたんですか?」と尋ねると、心菜さんは「50万の軽を買いました」と答えます。独身時代の貯金のうち、50万円を叩き、自分用に中古の軽自動車を用意するしかありませんでした。

 

 

妻をおいて海外へゴルフ。悪いと1ミリも思っていない夫

次に喧嘩になったのは結婚4年目。毎年、夫婦水入らずで過ごしており、まだ子どもはいないので、今年も同じだと楽しみにしていました。しかし、夫は「会社の奴らとグアムに行くから!」と切り出したのです。心菜さんを日本に置いてけぼりにするつもりなので「どういうつもりなの?」と怒ったのですが、「心配するなよ。ゴルフ仲間だから」と不倫を否定したのですが、心菜さんが心配したのは旅費の金額。

 

年末年始というハイシーズンの海外旅行です。100万円では足りないでしょう。心菜さんは「どこにそんなお金があるのよ!」と詰め寄ると、夫は相変わらず、「まぁ、いいじゃない。お前に迷惑はかけないからさ」とのらりくらり。

 

 

こうして夫婦の溝はますます大きくなっていったのですが、心菜さんの堪忍袋の緒が切れたのは結婚6年目。家族カードに見覚えがないクレジット決済があったのです。その額は6万円で請求元は居酒屋。心菜さんは「これって何?不正利用ってこと?!」と尋ねると、夫は「後輩と飲みに行っただけだよ」と言うのです。

 

夫がマネージャーをつとめるチームが全店三位の成績をおさめたので、夫が幹事となって慰労会を開いたそう。会社から5万円が支給されたものの、16人の飲食代はあわせて11万円なので足りませんでした。そこで「あとは俺が払っておくよ。心配するな!」と声高に言い、後輩たちは「ごちそうさんです!」と喜んだのですが、夫はアルコールが入ると気が大きくなるタイプなのです。

 

「何回、同じことを言ったら分かるの?後輩の子だって、ごちそうになるのを期待してないでしょ?!」と注意したのですが、夫は「はいはい、わかりました」と心菜さんの話に聞く耳を持たなかったので、今まで抑えていた感情が爆発。「ごめんなさい。今までずっと我慢してきたけれど、もう無理。これ以上、一緒にやっていけない!」と離婚を切り出したのです。

 

いくら言っても改善されない夫の散財の裏には…

心菜さんは何度も挽回の機会を与えたのに何回も同じトラブルが繰り返されました。これは心菜さんが今後も同じトラブルに悩まされることを意味します。筆者は「なぜ旦那さんは言うことを聞かないのでしょうか?」と投げかけると、心菜さんは「私のことを馬鹿にしているんですよ!」と怒ります。その背景には実家の経済力の違いがあったのでしょう。

 

筆者は「結婚生活を上手くやっていくには同じ目線に立つことが欠かせません」と励ましたのですが、夫と妻は血のつながらないのだから当然です。心菜さんは「彼は私のことを見下していたのではないでしょうか」とため息をつきます。夫は心菜さんを甘く見ているから言動を改めようとしないのでしょう。お金のことで何かあっても実家に何とかしてくれると。何かあっても実家を頼れない心菜さんとは決定的な違いがあったのです。

 

突然、別れを切り出された夫はどのような反応をしたのでしょうか?「お前みたいなケチ臭いババァはこっちから願い下げだよ。早く俺の前から消えてくれ!」と今まで打って変わって汚い言葉を並べ立てたのです。心菜さんもまさか夫が二つ返事で離婚を了承するとは思っていませんでした。

 

 

▶つづきの【後編】記事『夫より収入も貯金も多い、42歳の妻。共働きで離婚をするとき、「財産分与の話し合い」の前に知っておきたい3つのこと』を読む__▶▶▶▶▶

 

 

 

 

 

 

≪男女問題専門家(行政書士、ファイナンシャルプランナー) 露木幸彦さんの他の記事をチェック!≫

 

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