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「幸せ家族なポストばかり、耐えられない!」レスで自己肯定感を喪失した44歳夫。SNS時代の「理想の夫婦像」とは

OTONA SALONE / 2024年11月17日 22時15分

昨年末、25年ぶりに実施された『性機能障害の全国実態調査に関する報告』では、驚くべき結果が明らかになりました。50歳以上の年齢層では、41.7%もの男性がEDを経験しており、また「セックスレス」―すなわち性交頻度が1カ月に1回未満―が全体の70.4%に及ぶというのです。これにより、日本は少子化にとどまらず、無子化に向かう「レス社会」に突入していることが示唆されています。

 

静岡市在住の白尾さん(仮名)もまた、この「レス社会」における一人です。44歳の楽器メーカー勤務の彼は、専業主婦である42歳の妻と15歳、11歳の子どもと共に暮らしていますが、長年にわたって人知れず夫婦間の性に悩み、内に秘めた孤独を抱えていたそうです。どのように立ち直ったのか、当時の状況から現在までを赤裸々に語っていただきました。

【無子社会を考える#21】前編

見えない孤独

「家では、ずっと精神的に満たされていない感じがしていました……」

 

インタビューの最中、白尾さんがこぼしたこの言葉には、自分でも気づいていなかった深い孤独感が滲んでいました。日中は仕事に集中し、順調にキャリアを築き、周囲からの信頼も厚いそうです。しかし、夜、家庭に戻ると、自分が浮いているような感覚に苛まれたといいます。

 

「妻と初めて会った時から、僕にとって彼女は特別な存在でした。結婚当初は、仕事で疲れて帰ってきても彼女がいるだけで気持ちがほぐれるような、そんな温かさがありました。でも、いつからかそのぬくもりがどこかへ消えてしまったみたいで……」

 

彼はこう続けます。「食卓に座っていても、何を話していいかわからない。妻も僕も、ただ料理を口に運びながら黙っていることが増えて、子どもたちが話題を振ってくれないと会話が成立しない状態がつづきました」

 

特に夜、子どもたちが眠った後のリビングには、彼と妻だけが残ります。しかし、かつてはお互いの一日の出来事を語り合った時間が無言の空間に変わり、白尾さんの心にはぽっかりとした孤独が広がっていたといいます。話しかけようとするたびに、「この言葉で何かが変わるのだろうか?」という疑問が頭をよぎり、結局何も言えずにその場を過ごしてしまうことがほとんどだったそうです。

 

「妻との距離が、手を伸ばせば届きそうなのに、決して触れることのできない場所にあるように感じました」

 

当時を振り返る白尾さんの寂しげな表情がその苦悩の深さを物語っているようです。

 

 

レスと自己肯定感の関係

白尾さんが語る「満たされなさ」には、レスによる自己肯定感の低下が深く関わっていました。

 

「自分ではそれなりに仕事でも成果を出しているし、子どもたちのことも支えている。でも、家に帰って妻の無関心を感じると、自分の価値がわからなくなる時が増えていきました」

 

一見、仕事に充実しているように見える白尾さんですが、妻から愛されていないという感覚が、彼の中に強い自己否定の念を生じさせていたようです。かつては頼りにされていたと感じていた白尾さんも、次第にその感覚が薄れ、どこか自分が不要な存在とさえ思うことがあったといいます。

 

「会話レベルでも求めることさえも怖くなってしまうんです。拒絶されるかもしれないという恐れが、自分から距離を置く悪循環に陥っていました」

 

家族と過ごす場所で、自分の存在が薄れていくような感覚は、社会的な成功や友人関係だけでは埋められない虚しさを生み出します。白尾さんが抱く孤独感は、日本の男性が家庭で「夫」としての役割を求められ、自分の価値をパートナーとの関係に重ね合わせてしまうことで、いっそう深まっているのかもしれません。

 

 

SNSがもたらす理想の夫婦像との比較

白尾さんが自分の家庭について感じる何か足りないという思いは、SNSで理想的な夫婦像を目にするたびに、さらに強まってしまったと言います。

 

「妻も私もSNSをよく見ているんです。特にフォローしている投稿を見ていると、僕たちが足りないものがそこには全部詰まっている気がしてしまったんです」

 

SNSには仲睦まじく寄り添い合う夫婦の姿や、完璧な家族の瞬間が切り取られ、彼らの日常として発信されています。何気ない「いいね」やコメントの一つひとつが、理想の家庭を証明するものとして認識され、白尾さんにとっては、自分たちがそれとは違うと感じるたびに、自信が削られていくようだといいます。

 

「仕事も頑張っているし、たまに休日には家族で出かけたりもしている。でも、あのSNSで見るような楽しさや仲の良さが、僕たちにはどうしても感じられない。家族のために努力しているはずなのに、それがどこか空回りしている気がしてきて、次第に重荷に感じてしまったんです」

 

彼にとって家庭は安らぎの場であるはずが、SNSで目にする他人の姿が、自分たちの日常に「不十分さ」を突きつけるかのように映ることが増えていきました。

 

どれだけ家族のために尽くしても「これでいいのだろうか?」と考え込んでしまう日々が、次第に白尾さんを精神的に追い詰めていったようです。

 

 

自己肯定感を取り戻すための自分だけの時間

そんな中、白尾さんが自分を取り戻すための手段として見つけたのが、趣味の時間でした。彼は家族や仕事以外の場所で「自分だけの時間」を過ごすことが、自分自身にとっての救いになっていると言います。

 

「悩みから避けるように釣りに行くようになりました。誰もいない湖で、一人でボートを浮かべていると、今まで家で感じていた孤独が、少しずつ癒されていく気がするんです」

 

自然の中で釣り糸を垂らしながら、静かに自分の時間を過ごすことで、白尾さんは家で抱える心の重荷を一時的に解放できるのだと言います。また、趣味に没頭することで気持ちがリフレッシュされ、家に戻ると以前よりも少し穏やかに家族と向き合えるようになったと語ります。

 

「もちろん、性の問題が解決したわけではありません。でも、自分自身の心を少しずつ満たしていくことで、家庭に戻ったときの自分が徐々に変わり始めている気がしたんです」

 

自分を取り戻すきっかけにもなった“自分だけの時間”は、白尾さんにとって、決して夫婦関係を諦めたわけではなく、まずは自分を立て直し、その上で家庭を見つめ直すための第一歩でもあるのです。

 

 

▶つづきの【後編】では、自分の家族・家庭に抱いていた違和感を解消するために、白尾さんが取り組んだこととは? 他人との比較を手放せば、自己肯定感あがるのか?……についてお届けします。__▶▶▶▶▶

 

≪家庭関係研究所 山下あつおみさんの他の記事をチェック!≫

 

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