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「大宰府」は雅な都の暮らしを支える場所だった。平安時代、中国経由で日本に入ってきた贅沢品とは?

OTONA SALONE / 2024年12月9日 21時31分

*TOP画像/隆家(竜星涼) 大河ドラマ「光る君へ」 47話(12月8日放送)より(C)NHK

 

『光る君へ』ファンのみなさんが本作をより深く理解し、楽しめるように、40代50代働く女性の目線で毎話、作品の背景を深掘り解説していきます。今回は平安時代における「大宰府」について見ていきましょう。

 

大宰府は「貿易の場」としても「社交の場」としても栄えていた 次ページ

大宰府は「貿易の場」としても「社交の場」としても栄えていた

まひろ(吉高由里子)は夫の宣孝(佐々木蔵之介)が働いていた大宰府を乙丸(矢部太郎)とともに訪れました。この地を訪れた当初、まひろはにぎやかで、見慣れないものがあふれるこの地を目を輝かせて歩いていましたね。まひろの好奇心を掻き立てた大宰府は、当時においてどのような場所だったのでしょうか。

 

九州地方に所在する大宰府は都に次いで栄えていたといっても過言ではなく、西海道の中央政府のような役割もありました。

 

この地の中心には鴻臚館(こうろかん)が置かれ、当時において重要な拠点として機能していました。鴻臚館は朝鮮半島や中国からの使節の接待を目的につくられましたが、遣唐使などの対外使節が廃止されると外国との貿易の拠点になります。船で博多湾に届けられた荷物は鴻臚館において検査を受け、保管されていました。

 

また、大宰府内には工房があり、墨、紙、筆、瓦、土器の製造、綾などの高級絹織物の生産や染色が行われていました。これらのものは都に運ばれ、貴族たちが使っていました。

 

さらに、この地は国境を守ることを重要な任務としていました。朝鮮半島の新羅との最前線にあるため襲撃が懸念されていたためです。平安時代初期から中期、九州沿岸は外国の海賊から襲撃を多々受けています。

 

襲撃事件の1つが、「光る君へ」にも描かれている刀伊の入寇(といのにゅうこう)です。刀伊の入寇は平安時代における最大の対外危機ともいわれていますが、大宰権帥の任にあった隆家の活躍によって事態は収束しました。

 

乙丸のお土産!「平安時代の紅」の付け方って? 次ページ

宣孝も乙丸も愛する女性の大宰府土産に「紅」をチョイス。まひろが「茶」の苦みに顔をしかめるシーンも

「光る君へ」には大切な人への贈り物として紅(口油)が登場しています。かつて、宣孝はまひろに大宰府の土産として紅を贈っていました。本放送では、乙丸がきぬに紅を贈るシーンがありましたね。

乙丸(矢部太郎) きぬ(蔵下穂波) 大河ドラマ「光る君へ」 47話(12月8日放送)より(C)NHK

 

前回の放送回には乙丸が紅をうれしそうに購入するシーンもありました。このシーンでは、乙丸が売り子の女性から使い方を教わっていましたが、この女性は下唇にのみ紅をつけていました。当時、紅はこのように下唇のみにつけるのが一般的だったようです。

 

平安時代、紅は高価なものであったため、誰もが手にできたわけではありません。当時の紅は中国経由で入ってきたもので、紅花の色素を乾燥させたものでした。

 

また、前回の放送回ではまひろが隆家(竜星涼)からを出され、その味にとまどい、顔をしかめるシーンがありました。茶は平安時代、鎌倉時代に中国から渡来したものですし、大宰府では外国人の接待も行われていたので、この地では常備されていたのかもしれません。

 

都で茶を飲んだ記録としては、遣唐使の永忠が「嵯峨天皇にお茶を煎じた」という815年頃の記録があります。紫式部の時代においては都で茶を口にできる人といえば、天皇や宮廷の儀礼に参加する上流貴族に限られていました

 

私たちにとって身近な紅も茶も中国から入ってきたもので、かつては稀少かつ高価なものだったのです。

 

参考資料

大森正司『おいしい「お茶」の教科書: 日本茶・中国茶・紅茶・健康茶・ハーブティー』PHP研究所 2010年

地域批評シリーズ編集部、 岡島慎二、 土屋コージン『日本の特別地域 特別編集72 これでいいのか 福岡県』マイクロマガジン社  2016年

山下景子『日本美人の七十二候』PHP研究所 2016年

 

 

≪アメリカ文学研究/ライター 西田梨紗さんの他の記事をチェック!≫

 

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