「本当に大事にしないとならないことができなくなった」ある日突然円形脱毛症に見舞われると何が起きる?【円形脱毛症体験記】#10
OTONA SALONE / 2025年1月5日 20時0分
髪を失う……その悲しみ・つらさは、当事者にしかわからないのかもしれません。大げさではなく、人の目が怖くなり、自信を失い、未来さえも見失いかけます。
角田(つのだ)真住さんは、36歳のときに多発型円形脱毛症を発症。自身の経験をもとに、円形脱毛症や抗がん剤治療の副作用による脱毛患者に向けた「ヘッドスカーフ」のブランドを立ち上げました。
アピアランスケアには、医療用帽子や医療用ウィッグという選択肢があるなか、なぜ「ヘッドスカーフ」を選択したのか伺いました。
ヘアロス #17
多発型円形脱毛症、治療を辞めた理由
初めて円形脱毛症に気付いたのは36歳、第2子が1歳のとき。寝る前、ふと頭をもむと、ロングヘアの後頭部にツルツルがあることに気づきました。「これなんだろう」……主人に「これどうなってる?」って見せたら、「ハゲてきてる」と言われました。
気付いたときで、サイズは500円玉くらいでしたね。「すぐ治るらしいから、ひとまず病院行ってみたら」とすすめられ、「ストレスなんて感じていなかったけど、子育てはやっぱり大変だしな」くらいの軽い気持ちで、かかりつけの皮膚科へ。病院に行くと500円玉サイズの脱毛斑以外に、小さい脱毛斑がいくつもできていました。不思議なもので、前日のシャンプーのときには気づいてないんですよね。
治療はステロイド外用薬と紫外線療法。その後ステロイドの内服を始めたんですが、私には合わなくて体調を崩してしまって、1週間くらいで止めました。くらくらして気持ち悪くて起き上がれない感じでしたね。
治療をしてるのに、治らないし、脱毛斑は増える。円形脱毛症の治療は対症療法で、根治に至る治療法は確立されていないことを聞いていたので、その時点で治療はもうやめようと決めました。
「治療したら必ずよくなる」なら治療は続けました。でも、一生懸命努力をしてるのに、その効果がまったく出ない。「努力至上主義」なので、努力してもできないものがあるんだなって思いましたね。やるせなさというか、戸惑いがありました。
治療って、すごく時間と体力が取られるんです。紫外線療法で週1通院しなきゃいけないのが嫌だったのもありますね。移動時間に待ち時間、治療に時間が取られるじゃないですか。効果があるならいいけど、私の場合は効果もなかったし。「本当に自分がしたいことに時間を使いたい」って思ったんですよね。
当時、1歳児と4歳児の子育て中で、英語の勉強もしていたんです。家事と育児の空き時間を見計らって勉強の時間を作っているのに、その時間が治療に取られる。それが嫌でした。
「本当に大事にしなきゃいけないものを大事にできなくなった」っていうのが私はいちばん嫌でした。
髪を失う恐怖、ウィッグに振り回される日々
最初のころは髪がごそっと抜けてしまうことがやっぱり怖かった。半年で髪の3分の2が抜けました。自分が壊れていくような感じ。治療しても、髪は生えないし、脱毛斑は新しくできる。
ヘアロスの人でスキンヘッドにする方もいますが、剃るというのは怖くてできなかったですね。自分じゃなくなるような気がして。
医療用帽子は、見た目に抵抗があって試していませんが、普通の帽子でカバーしたこともありました。でも頭皮に生地が当たってチクチクするんですよね。
フルウィッグの医療用ウィッグをしていた時期もありました。約10年前ですが、当時は部分ウィッグってあんまりなかったように思います。フルウィッグよりも高くて、オーダーできるメーカーで見積もりしてもらったら40万円くらいした覚えがあります。人毛も人工毛も使いましたよ。結局、いいところも、悪いところもわからないから色々買うしかなかった。
でも、ウィッグをしていると、どうしてもウィッグが気になっちゃうんです。子どもを公園に連れていきたい、目いっぱい子どもと一緒に楽しみたいのに、「ウィッグが暑いから早く帰りたい」とか、「ブランコに乗るとウィッグずれるかも」とか。自分のこと、ウィッグのことでいっぱいになるんです。「なんでこんなことに振り回されなければいけないんだろう」「本当に大事なものを大事にできなくなっているのでは」と思うようになりました。
また、もともと肌が弱いので、医療用ウィッグで蒸れたり、頭皮をかいてしまったりで肌荒れしちゃったんです。ウィッグは頭皮環境にもよくないなと思いました。
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写真提供:すべて角田真住さん
■角田真住
合同会社アルモニア代表 。37歳のときに多発型円形脱毛症を発症。自身の経験経験を同じ病気に悩む女性のために生かしたいと合同会社Armonia設立。円形脱毛症による脱毛だけでなく、抗がん剤の副作用による脱毛など、治療や疾患で見た目に悩みを持つ方に向けたヘッドスカーフのブランドを立ち上げる。脱毛症への理解を進めるため、講演活動も精力的に行う。ヘッドスカーフブランド
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