「髪が抜ける」ことを体験してはじめて気が付いた。「みんな何か、それぞれ大きなものを抱えている」【円形脱毛症体験記】#12
OTONA SALONE / 2025年1月6日 20時50分
2013年に多発型円形脱毛症を発症し、半年で約2/3の髪の毛が抜けた角田(つのだ)真住さん。髪を失うことは想像以上にとても衝撃的で、心まで打ちのめされてしまうものです。
治療を止めた現在は、「ここが生えると違うところに脱毛斑ができて」の繰り返し。円形脱毛症は根治に至る治療法は確立しておらず、軽快・増悪を繰り返します。ヘアロスを受け入れ、起業して「ヘッドスカーフ」のブランドを立ち上げました。ヘッドスカーフを「脱毛を隠すためではなく」ファッションとして楽しんでいます。
現在、ヘアロスで悩んでいる方に向けて、ヘアロスの受け入れ方を伺いました。
ヘアロス #19
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髪がない=不幸? どうやって生きていけばいいの
私は多発型円形脱毛症で半年で髪の3分の2が抜けました。髪がごそっと抜けてしまうことがやっぱり怖かった。自分が壊れていく。「このままで、どうやって生きていけばいいのか」と戸惑いを覚えました。でも約10年経った今思うのは、ヘアロスになってものすごく不幸になったか、日常生活で不便だったかというと、そうでもないんですよ。
「髪の毛がないことに対する偏見」が怖い、不安ですよね。漠然とした不安って、「暗い夜道で柳の木を見たらお化けに見えるけど、 昼間に見たら柳だよね」みたいなものかなって思うんです。でも「ヘアロスでも幸せになる」ことは、私はできると思います。
髪の毛がないこと=不幸じゃない。実はいちばん大事なのは、自分の心の持ち方。もっと社会を信頼していいんじゃないかと思います。決して不幸ではなくて、症状を持ったまま、自分らしく、笑顔で暮らす。ヘアロス当事者の私たちが思うよりも周りはずっとずっとやさしくって、「自分ってかわいそうな人」になっちゃいけないなと私は思います。
人って「一度に2つのことは悩めない」と私は思っているんですね。悩める量って決まってると。髪の毛がないことに悩むより、前に進むような、違うことを悩んだ方がいいなと私は思ったんです。当時、英語の勉強をしていたので、悩むぐらいだったら英単語の1つでも入れた方がいい。自分のするべきことに集中する。私は他のことに悩んだ方がいいみたい。
>>ヘアロスを受け入れらたら世界が変わる
ヘアロスを受け入れらたら世界が変わる。想像力のある社会へ
店舗でカウンセリングもしているのですが、多くの方が、はっきりとした言葉にはならないんですよね。なんとなく不安、なんとなく視線が気になる、みたいな。嫌なことを言われたり、されたわけではないんだけど、もやっとすることはある。気持ちを明確にして、「なにに対して怖いと思っているのか」を突き詰めていっては、とお話をしたりしていますね。
同じことを言われたとしても、そのときの自分の受け取り方次第なんです。受け取るこちらの状態によって、まったく違うものになるんですよ。「ヘアロス」を自分で受け入れられないときは、普通のことも嫌なんですよね。
脱毛してからママ友と話してるとき、1人遅れてきたんです。彼女は明らかに髪の毛を切ってショートヘアになってるのに、誰もそのことに触れなかったことがあったんです。そのとき、ものすごくいたたまれなくなったんです。でもそれって私の気持ちが「この人たちに私はどう受け止められているんだろう」って思っていたから。でも、今はなんでそんなことで不安だったんだろうと思います。ヘアロスを受け入れたとき、自分のなかに落とし込めたときは、なんでもないことなんですよね。
みんな、なにかしら、どうすることもできないもの、悩みを抱えてますよね。私はヘアロスと別のものもたくさん抱えています。髪に限らず、人の弱さとか、思いやれるような社会になるといいなとすごく思います。私は髪だけど、隣の人はもっと違うものかもしれないし、一緒なのかもしれない……そういう想像力があるとやさしい社会になるかなと思います。
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写真提供:すべて角田真住さん
■角田真住
合同会社アルモニア代表 。37歳のときに多発型円形脱毛症を発症。自身の経験経験を同じ病気に悩む女性のために生かしたいと合同会社Armonia設立。円形脱毛症による脱毛だけでなく、抗がん剤の副作用による脱毛など、治療や疾患で見た目に悩みを持つ方に向けたヘッドスカーフのブランドを立ち上げる。脱毛症への理解を進めるため、講演活動も精力的に行う。ヘッドスカーフブランドHP
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