父が余命3カ月宣告。「すい臓がん 治る 奇跡」の検索が止められず、「抗がん剤はしない」と決めた父を追い詰める結果に。「家族がガンになった時、どうすればいいの?」
OTONA SALONE / 2024年12月20日 20時55分
こんにちは。神奈川県在住、フリーライターの小林真由美です。ここ数年のマイテーマは「介護」。前回に続き、今回も義母と同時期に経験した「もう一つの介護」について書きたいと思います。その対象となったのは、当時83歳の父です。
日頃から趣味を楽しみ、適度に運動もこなし、地域の活動にも参加。まだ残る黒々とした髪をいつも丁寧に整え、身だしなみには人一倍気を使っている。そんな姿を見ていたからなのか、「介護はまだまだ先」と勝手に思い込んでいた私。でも、そんな父を突然介護することになるなんて。そして、数ヶ月後に「別れの日」が訪れてしまうとは、夢にも思いませんでした。
【アラフィフライターの介護体験記】#8
▶前回の記事を読む▶▶ 「自覚症状なし」父の「すい臓がん」が発覚したのは、母だけが気づいた「ある症状」がきっかけだった。親が突然「がん」になったらどうすべき?
▶予期せぬ形で、父の余命が告げられた
父の「治療しない」を受け入れられず、「すい臓がん 治る 奇跡」の検索がやめられない私
自宅近くの川沿いの桜がほころび始め、いつもなら「満開予想」をチェックして、お花見の計画を立てる春。しかし2023年は、そんな桜の存在を忘れるほど大きな出来事がありました。
2月の半ば頃から食欲がなくなってきた父。徐々に「黄疸」のような症状が現れたことから、病院へ。検査の後、医師から告げられた病名は……。
「すい臓がん」。すでにがんは広がり、主要な血管や神経に浸潤しているため、大きな手術は難しい。年齢的に手術や化学療法は体の負担になることから、「何もしない」という選択肢もあるということでした。
さらに、私が医師に「もしこのまま何もしなければ、あとどれぐらい……」と思わず聞いてしまったことで、「はっきりとは言えませんが、3ヶ月、かもしれません」と宣告され、父は自らの余命について知ることになります。
その後、「抗がん剤をやる」と一度は決意したものの、黄疸の処置で入院し、1週間後に自宅へ戻ってきた父は、「抗がん剤はしない。もうね、病院には行かないよ。このままずっと、家にいる」と私たちに気持ちを告げました。
▶高額サプリの購入を考えていた私に、母が強い口調で…
高額サプリの購入まで考えるほど、冷静さを失っていた……
父はある種の覚悟を持って医師の言葉を受け止め、「残された時間があと3ヶ月だとしたら?」と真剣に考えていたようでした。その結果、「体に負担がかかるかもしれない治療を受ける」のではなく、「住み慣れた家で、このまま穏やかな時間を過ごす」という道を選んだのだと思います。
しかし私は、そんな父の意志を受け入れることができませんでした。その後も情報収集に時間を費やし、治療を受けるよう、何とか父を説得しようと試みます。気が付けば「すい臓がん 治る 奇跡」といったワードでネット検索。「がんが治る水」「がんが消えるサプリメント」など科学的根拠のない情報も目にし、「この金額なら出せるかも」と本気で購入を考えてしまうほどでした。
でも、そんな様子を見た母がめずらしく強い口調で私を諭し……。そこから再び家族で話し合い、父の想いを尊重することに。その瞬間、安堵の表情を浮かべて「ありがとう」と言った父。そこで、私はこの数日間、父に大きなストレスを与えていたことにようやく気づくのです。
▶「あんなに野球好きだった父が…」
あんなに野球好きだった父が、無表情で「WBC」を観戦。「心のケア」はどうすべき?
翌日は、総合病院での「抗がん剤治療の事前説明+血液検査日」となっていましたが、治療をしないと決めた今、「先生(医師)にこれまでのお礼を伝える日」に変更し、私も父と母に同行しました。
受付ロビーのテレビでは、ちょうど「WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)」が放送されており、大盛り上がり! 診察を待つ人のみならず、思わず足を止めてしまう医師や看護師の姿も見えます。
そんな中、あんなに野球好きだった父がテレビに目を向けつつも、その表情は「無」。最初のうちは「先生に会うから緊張してる?」とも思いましたが、診察後もその様子は変わりませんでした。
家に帰ると、父は疲れた様子で寝室へ行き、そのまま眠ってしまったようです。一日を振り返ると、口数も少なく「鬱状態なのではないか?」「この先、心のケアはどうすべき?」と不安が募ってゆきました。
がんに関する本を読むと、「家族は第二の患者」という言葉を目にします。がん患者の家族は不安や落ち込みを感じることが多く、本人と同じぐらい心のケアが必要だそう。私も「まずは、自分の心を落ち着かせなければ……」と感じていました。
▶▶次のページ 「私は死ぬならガンで、と思っています」私たちを救ってくれた看護師が伝えたかったメッセージとは
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