「発達障害でも医師になれた!」ADHDの著者はどうやって「勉強スイッチ」を入れたのか?きっかけは小6のとき
OTONA SALONE / 2024年12月24日 20時36分
小さなころは学習障害でご両親をずいぶん悩ませたという、内科医師で小説家の香川宜子氏。≪前編≫の記事では、「勉強のきっかけ」をつかんだ小学校3年生までのお話をご紹介しました。
この≪後編≫では、そのあとどのように勉強が得意になっていったかを追っていきたいと思います。著書『「できんぼ」の大冒険 発達障がい・学習障がいの勉強スイッチ』(徳間書店)から抜粋・編集してご紹介します。
6年生での転校がショック療法になり、成績が1番に!
級長の「ブーチャン」はいけずな子で、私の算数のテスト用紙をひったくると「62点。フ~ン、アホでえ」と明らかに馬鹿にしてくる。それも毎回のこと。そのブーチャンの態度に周囲も嫌気がさしており、成績優秀グループのプクピンは、ブーチャンから私の答案用紙を取り返してくれた。
学校にも慣れ、自信をつけ始めていた私はただ黙ってはいなかった。ある日、腹に据えかねた私は「ブーチャンを抜いたる」と宣言したのだ。「へ~~、やれるもんならやってみな」、ブーチャンは私の額を小突いたのだった。
それからというもの、目標ができた私は、毎日コツコツと勉強をした。その方法は間違えた問題やできなかった問題を見直してできるようにしていくというものである。思えば、これこそが初めて復習に向き合ったことでもあった。
誰も復習とはどうしたらいいのか教えてくれないから、自分でできなかった問題をノートに書き写して正解を書いて、『できなかった問題集』を作り、空で暗記するほど何度も何度もできるようになるまで解いて覚えていった。
6年生最後の算数は、かなり難しい問題だったと思うが、復習のおかげで私は96点を取り、ブーチャンは85点だった。当然の如く、ブーチャンは私の算数の用紙を取り上げた。ブーチャンは言葉に詰まったかと思うと、目を真っ赤にして唇を噛み締めていた。その時のブーチャンの悔しそうな顔が今でも忘れられない。
その時、『勉強をすれば、上がったり下がったりしながらも、徐々にではあるが、いつかは必ずできるようになる』という感触を知ったのだ。酒井先生は、私の答案を高らかに持ち上げて、クラスメイトに伝えた。「うちのクラスから算数の1番が出ました。松本さんです。よく頑張りました」
私はみんなに拍手される中、先生から答案用紙を受け取った。帰ると父母は大喜びだった。こんなに家族が喜ぶのなら、もっと前から勉強すればよかったと思っていた。
中学、高校と進むにしたがって、小学時代の「読み書き計算」力不足がネックに
私は単純な計算ミスをしてせっかくできていた問題をごそっと落としたりすることも多々あり、2位以上の壁は厳しいものだった。
どれだけ慎重にしていても、解けたことに有頂天になって最後で計算ミスをしてしまうとか、これはできると思ったら嬉しくなって、最後まで問われている内容を読まずに早とちり解答をしてしまうことも多かった。お調子者というべきか、慎重さに欠けるというべきか……。
すべては小学校の時の「読み書き計算」に対して非常に曖あい昧まいであったことに起因していた。小学校時代の読み書き計算不足は、中学生まではまだなんとか努力で賄まかなえたが、高校では問屋が卸おろさなかった。
もっと複雑な計算力と思考力が必要になる数学は、単純に努力では間に合わない事態になる。国語の長文読解もしかり。結局はもっと揺るぎのない強固な土台構築が必要であったということが、高校生になるとよくわかる。
それともう一つ、この頃は病名もなくわからなかったのだが、このような私の傾向はいわゆるADHD気質(注意欠如・多動性障がい)の子どもの特徴だったことがわかった。
現在では5人に1人がADHDだと言われている。その傾向が軽症であっても本人も家族も生きづらさを感じながら、私のように自殺ギリギリで踏みとどまっているご家族もあるかと思われる。今はインターネット上の情報や、よい薬、精神療法などの取り組みもあるので、ぜひ児童精神科専門の先生に相談してみてほしい。
ADHD傾向の人は、むしろ医師に向いているかもしれない
私は勉強が大変だったとしても、医師になって心からよかったと思う。当時はわからなかったが、私はADHDだった。ただ、ADHDもアスペルガーも悲観的なことばかりに目が向くが、結構楽しい人生が待っているから、悲観しなくてもいい。
外科系はチームワークが必要だが、他の科はほぼ自分がすべての判断に責任を持って、コ・メディカルの力を借りていく仕事だから、集団の中で生きにくかった者は、精神的には伸び伸びと仕事ができるのだ。
開業医だってできるし、勤務医で通すこともできれば、大学病院で出世したり、研究の道に入ることだってできる。科もいろいろあって、同じ医師でも、自分が合う科にいくことができる。僻地診療や海外後進国で治療に当たることもできる。医師免許ひとつで、多様な生き方ができるのだ。
■小学校低学年の著者が苦労する様子を紹介した≪前編≫はこちら。
>>>≪オトナサローネ編集部 佐々木めぐみさんの他の記事をチェック!≫
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