父から学んだ「末期のがん患者にかけるべき言葉」とは?「大丈夫?」「痛くない?」「眠れてる?」「食欲は?」心配の声かけだけでは逆効果
OTONA SALONE / 2025年1月8日 11時25分
こんにちは。神奈川県在住、フリーライターの小林真由美です。ここ数年のマイテーマは「介護」。前回に続き、今回も義母と同時期に経験した「もう一つの介護」について書きたいと思います。その対象となったのは、当時83歳の父です。
日頃から趣味を楽しみ、適度に運動もこなし、地域の活動にも参加。まだ残る黒々とした髪をいつも丁寧に整え、身だしなみには人一倍気を使っている。そんな姿を見ていたからなのか、「介護はまだまだ先」と勝手に思い込んでいた私。でも、そんな父を突然介護することになるなんて。そして、数ヶ月後に「別れの日」が訪れてしまうとは、夢にも思いませんでした。
【アラフィフライターの介護体験記】#9
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▶家族では無理だった。医師や看護師が父を笑顔にできた理由とは
「緩和ケア」で心の痛みが和らいだ父
実は訪問診療の病院については、介護申請を行う前からいくつか検討していました。その結果、自宅から車で5分ほどと近く、周囲の評判も良い「がん看護専門看護師」(※2)がいる第一希望の「緩和ケア内科」で診てもらうことになったのです。
(※2)看護系の大学院を修了し、専門看護師認定審査に合格することで取得できる日本看護協会の資格を持つ看護師。看護師として5年以上の実務研修(うち3年以上は専門看護分野の実務研修)が必要。
当日、父は少し緊張している様子でしたが、訪れた医師と看護師に会うとすぐ、落ち着いたように見えました。それは私と母も同様で、優しく柔らかい声や表情、動作などに、ほんの一瞬で安心感を得ることができたのです。
バイタルチェックなどを終えると、医師から部屋に飾ってある写真や賞状(父の趣味関連のもの)についての問いかけがありました。すると、父が本当に久々に笑顔を見せ、自分がこれまでやってきたスポーツやサークル活動などについて、楽しそうに話しはじめたのです。その姿を見て、私はあることに気付きます。この頃、私や母が父に投げかけた言葉といえば、「大丈夫?」「痛くない?」「眠れてる?」「食欲は?」など、すべて体調を案じる内容。家族としてはそれを知る必要があるので当然ですが、父としては、ちょっとウンザリしていたのかもしれません。
しかし、私や母が急に父に趣味の話をしても、「今さら何で」と思うハズ。だからこそ、こういった医師や看護師の存在と、緩和ケア(がんの症状のほか、身体的な痛みや精神的な苦痛を和らげるためのケア)が必要だったと感じています。
それから、「今、困っていることや不安なことはありますか?」と聞かれた父は「眠れない」「食べられない」「便が出ない」と悩みを伝えます。その後、これらの症状を改善するための薬(食事の代わりとなるドリンク)の処方とともに、「自分の好きなことをして過ごすススメ」についての話がありました。そのときの「眠れなかったら、無理をしなくていい。その代わり、昼寝をしたり、体をゆっくり休めたりしてほしい」という医師の言葉に、父は安堵の表情を浮かべ、その夜は久しぶりに熟睡したようです。
▶1分1秒でも、父との時間が惜しい。私がした決断は
「もう、コレしかない!」限られた父との時間に「今、何をすべきか?」で出した答え
訪問診療が始まってから、父の“悩み”は少しずつ解消されていきました。食事についても、おそらく医師や看護師と話し、心がラクになったのでしょう。私も少しずつ、父と他愛もない会話を交わせるようになりました。父の幼少期の話など初めて聞くようなこともあり、「まだまだ知らないことがたくさんある。今のうちにいっぱい聞きたい」という想いが、私の中で日に日に強くなってゆきます。同時に「時間が足りない」と感じるように!
自宅と実家は、電車で往復2時間の距離。この時間があれば、もっと母のサポートもできるのに、という気持ちもあり、しばらく実家に滞在することを両親に提案しましたが「煩わしい」と却下される始末……(自分の時間も大事に、という2人の優しさもあると予想)。そんなある日、父から「毎日忙しそうだし、そのうちサポートの人もお願いできるから、もう少し来る頻度を減らしたら?」と言われます。そこで私ははっきりと、「今、何をすべきか?」の答えが分かったような気がしました。
「私が実家に通っているのは、お父さんやお母さんのサポートのためじゃない。お父さんとの残された時間を後悔のないように過ごしたいから、“自分のため”に来ている。でも忙しいのは事実で、それがお父さんにも分かってしまうほど。だからもう、コレしかない! 実家の近くに引っ越そう」。
1分1秒でも時間が惜しい今、「引っ越しなんて無謀」ともう1人の自分が説得に当たる中、夫と父、母に正直な気持ちを伝えると、3人ともが「賛成」してくれるまさかの展開に! お義母さんの住むマンションとの移動距離も考慮しながら、さっそく家探しが始まりました。
そんな中、少しずつ父の体は弱ってゆきます。体重は40㎏台となり、家の中での歩行が厳しくなっているようでした。週単位で変わる体調に戸惑っていると、父から「頼みたいことがあるから明日来てほしい」と連絡がくるのですが……。これはまた、次回お話ししたいと思います。
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