「半年前にしでかした失礼」を思い出してはつらくなる人が、脳の中で「無自覚にしている」これだけの行為
OTONA SALONE / 2025年1月18日 20時11分
昨年はどんな年でしたか? あまり思い出したくないことや、トラウマになりそうなこともあったでしょうか。
医学博士であり、メンタルコーチでもあるフリーデマン・シャウブ博士によれば、トラウマは「潜在意識」による「自己防衛反応の原因」になっていることが多く、潜在意識が自己防衛の必要はもうないと判断すれば、トラウマを手放すことができるそう。
でも潜在意識とは、普段私たちが意識していない感覚や意識のこと。そんな無自覚のもの、自分でなんとかできるの!?
潜在意識を自分でコントロールし、人生を好転させるにはどうすればよいのか、博士の著書『潜在意識を使えば、人生が変わる』(徳間書店)から抜粋・編集してお届けします。
過去のつらい経験から抜け出すには、潜在意識が自己防衛する必要をなくせばいい
●潜在意識はタイムマシン
私たちが過去の思い出に浸ったり未来に思いを馳せたりしているときも、潜在意識にとってはいま起きている出来事を体験しているのと変わりません。
半年前に義理の両親に失礼なことを言ってしまったと後悔しているときも、来年の夏に行く予定の地中海クルーズを空想しているときも、潜在意識はその出来事をいま起きていることとして認識しています。
過去の思い出を振り返り、いまならそこでどんな行動を取るかを考えることは、将来同じような状況になったときの自分をすでに体験しているのと同じことなのです。
●潜在意識は過去を書き換える
〝時間が心の傷を癒す〟という現象は誰もが経験していると思います。つらいことがあったり困難に直面したりしても、数ヶ月後、数年後に振り返ってみると、そこまでたいしたことではなかったように思えるのです。
では、記憶の捉え方や、記憶との関わり方を意識的に変えれば、心の傷を癒すのにかかる時間を早めることができるとしたらどうでしょうか?
(1)潜在意識は顕在意識のガイドに従う。
(2)潜在意識が持つ時間の概念は流動的で、記憶には実際になにが起こったかではなく、そのときどう感じたかが強く残る。
この2つを併せて考えると、ひとつの結論が導き出されます。それは、潜在意識にとって記憶は石に刻まれた事実ではなく、粘土のようにどんな形にもできるものだということです。潜在意識のこの柔軟性を利用すれば自己防衛反応に対処することができるのです。
子どもの頃に受けた虐待やネグレクトなどのトラウマは、私たちの潜在意識の自己防衛反応の原因になっていることが多々あります。また、私たちの多くは歪んだ過去の記憶からネガティブな固定観念を持っています。そんな私たちの考え方や感情的な背景によって、潜在意識は些細な事を大袈裟に解釈したり、ろくでもない話を真に受けて人生を変えるような災難を起こしたりすることもあります。
コンプレックスを手放すことができたとき、実体験から学んだこと
私がハイスクールに通っていた頃、クラスメイトの何人かが面白半分に、私の鼻の整形手術の費用をカンパしようと言い出したことがあります。それを聞いて私の自尊心はかなり傷つきました。当時付き合っていた彼女はチャームポイントだと言ってくれていたのですが、それ以来、私は自分の鼻がとても気になってしまい、本当に整形手術を受けようかと悩みました。
でもそれから数年後、私は視点を変えて、当時クラスメイトたちがこの鼻をからかったのは、成績が良くて彼女もいた私に嫉妬していたのだと自分に言い聞かせることにしました。するとこの新しい解釈によって、私はコンプレックスをひとつ手放すことができたのです。
過去に対する解釈を書き換えるといっても、こんなときは周りに助けを求めるべきだという経験則や、人には親切にしなければいけないという教訓になった出来事まで消し去る必要はありません。でも、あなたが過去のストーリーを更新することで、潜在意識がもう自己防衛反応をする必要がないと判断すれば、過去の影響が現在に及ぶことはなくなります。
トラウマを克服しただけでは不十分。新しく必要になる、潜在意識の「穴」を埋めるモノって?
●固定観念は上書きしない限り消えない
過去の傷を癒すだけでは、自己防衛反応から抜け出すことはできません。子どもの頃のつらい経験を引きずらなくなったとしても、潜在意識のフィルターが変わらない限りはなにも変わらないのです。
たとえば、子どもの頃に親から虐待を受けていた人が、自分自身に向き合うことでそのトラウマを克服し、さらには親を許すことができるようになったとします。この場合、虐待によって受けた心の傷は癒されたかもしれません。でも、誰も信用できない、自分はダメな人間だという固定観念は根強く残っていて、無意識のうちに目立つことを避けている場合があります。
過去の出来事に悩まされることはなくなっても、その出来事によって潜在意識に植えつけられた固定観念や自己防衛のための条件反射は依然として日々の生活に影響を与え続けているのです。
もっとも、そうした固定観念を消すだけではまだ十分ではありません。ある日、目を覚ましたら自分を縛っていた固定観念がパッと消えているのを想像してみてください。自分はダメな人間だ、相手に気に入られなければ自分を認めてもらえない、などという考えはもうありません。
でもそうなると、今度はどうなるか。潜在意識から見ると、それはアイデンティティにぽっかりと穴が空いた状態なのです。アイデンティティがないということは、自分が存在しないのと同じです。そのため、新しい考え方でその穴を埋めない限り、潜在意識はすぐにかつての慣れ親しんだ習慣に逆戻りしてしまいます。
●自己防衛モードにも上書きが必要
もしあなたが極寒のアラスカ北部に生まれ育ち、大人になってから暖かなフロリダに引っ越したとしたら、身も凍えるような寒さから守ってくれたウールのセーターや厚手のコートはもう必要ないと思うでしょう。とはいえ、裸で生活するわけにはいきませんから、ほかに着るものを用意しなければなりません。
自己防衛モードから抜け出すための最後のステップは、これまでの古い習慣を新しいものに置き換えることです。
■BOOK:翻訳〉 2200円(税込み)/徳間書店
■著者略歴:フリーデマン・シャウブ医学博士(Friedemann Schaub, M.D., Ph.D.)
ドイツのミュンヘン大学で医学博士号を、アメリカのワシントン大学で分子生物学博士号を取得。研修医としてミュンヘン大学病院の循環器内科に勤務したのち、ワシントン大学で研究員となる。博士の医学研究は『ネイチャー・メディシン』誌や『サーキュレーション』誌など、権威ある医学・科学雑誌に掲載され注目を集めた。著書『The Fearand Anxiety Solution』(未訳)は2012年インディペンデント・パブリッシャー・アワード金賞、USAベストブックアワード新刊自己啓発書部門最優秀賞を受賞。潜在意識の根本原因を探ることで、これまでに世界各国の数千人のクライアントが不安や怖れを克服するのをサポートしてきた。現在は妻のダニエルと共に南フランスに在住。多くの動物たちと暮らしている。
■訳者略歴:岡 昌広(おかまさひろ)
1976年東京生まれ。美容専門学校卒業後、美容師として都内のヘアサロンに勤務。金属アレルギーの発症により転職を考えていた折に、ある占い師の予見を受け翻訳者となる。『魔術の教科書』『魔女の指南書』『リモート・ビューイング』などの訳書がある。
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