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【不倫の精算1】「ひとりはイヤ」誰とでも寝るほど孤独がつのる

OTONA SALONE / 2017年12月29日 18時30分

【不倫の精算1】「ひとりはイヤ」誰とでも寝るほど孤独がつのる

年末年始の街に漂う幸福なムードとは裏腹に、恋人が家族と幸福に過ごす時間をひたすら耐え、連絡を待ち続ける「不倫女性」。
どうして彼女たちは妻ある男を愛してしまったのか。なぜ夫ある身で他の男性に身をゆだねたのか。
彼女たちは、幸福なのか。不幸なのか。
そこにあるのは欲なのか。純粋な愛なのか。
恋愛の裏のただひたすら聞き続けたひろたかおりが、「道ならぬ恋」の背景とその実情に迫る。

 

「ひとりでいるよりはマシでしょ」

 

–「ひとりでいるよりはずっとマシでしょ。どうせヒマだしさぁ」

A子(38歳)は、何本目かのタバコに火を付けながらすっと視線を逃して笑った。

郊外のカフェ。その日は雨が降っていたので店内で話すことを提案したが、喫煙したいという彼女の希望で外の席に座った。

A子は独身でひとり暮らし。仕事は看護師をしている。

不規則な勤務で夜勤もあり、休みが合わない友人たちはほとんどが結婚していって会う機会は本当にたまにしかない。今はその約束すら億劫だという。

テーブルに置かれたスマホの画面に何度も目を向けながら、A子は続けた。

「こうなったら、不倫でも何でもいいから自分に関心を持つオトコがいるのかどうかが気になって」

そのときLINEの通知音が鳴った。「彼」からだ。

A子は素早くスマホを取り上げると、たたっと画面を開いて返信していた。ネイルの塗られていない爪はそれでもとても綺麗に手入れをされていて、着けているリングも小ぶりなストーンのはまったデザインが華奢な指によく似合っていた。

夜勤明けの休みで少し疲れた顔をしているが、メイクの手は抜いていないし着ているものも質の良さを感じさせるカシミアのセーター。まだ30代半ばでも通るスタイルのA子がタバコを吸う姿は、一見するとどこかの女社長のようにも見える。

A子の彼は既婚者だ。同じ病院に勤めている技師で、関係が始まったのは3ヶ月前、仲の良い同僚が開いた飲み会に来ていたのが出会いだった。

A子にとっては4人目の彼になる。

 

婚活で誰にも相手にされない惨めさ

 

「この人ともいつ終わるかわからないけど」、と前置きして馴れ初めを話してくれたA子だったが、最初から不倫することを望んでいたわけではない。

去年までは、婚活をがんばっていた。結婚相談所に登録したり県や市が主催する婚活パーティに参加したりと、積極的に出会いの場に足を運んだ。

仕事が好きで収入にも不満がなく、特に結婚相手が欲しいと思ったことはなかったが、婚活を意識したきっかけは入院している患者さんだった。

それまでは仏頂面でろくに口もきいてくれないような人が、お見舞いにくる身内や孫を見て笑顔になる姿を見ていると、「家族」の存在の大きさを実感する。そして我が身を振り返ったときに「私にはこんな人はないんだ」と気がついたことが、焦りを生んだ。

年齢が上がるにつれ、老いた未来を考える時間が増えた。このままお見舞いにきてくれる家族もいないまま、ひとりぼっちで入院することになったらどうなるのだろうか。そんな漠然とした不安が膨らむ。

病院で働いていると、誰もこない入院患者ももちろん見る。その「差」を目の当たりにするだけ、自分はこうはなりたくない、と強く思うようになった。

だが、意気込んで始めた婚活は上手くいかなかった。

まず年齢で引っかかる。想像した以上に37歳の自分が参加できる婚活パーティは数が少なく、何とか参加できるものがあっても自分より若い女性ばかりに男性は寄っていった。

結婚相談所で紹介される男性は年上のバツイチだったり初婚でも年収が自分より低かったり、どこか「難アリ」な人ばかり。それでも担当者には「これが精一杯」という顔をされる。

看護師で年収も高いから申し込みはくるだろうとタカをくくっていたが、そうでもない現実が彼女をひるませた。

「相手に希望することでね、『家事が全部できる人』『料理のうまい人』って書いたのがいけなかったのかも。単純に希望だったんだけど、アラフォーでそんなこと書いたら家事能力ないって思われるよね」

何度かお見合いのチャンスはあった。でも、「私の収入をアテにしたのが丸見えのモテそうもないチビ」だったり「交際経験0みたいないかにも世間知らずな派遣社員」だったり、がっかりする時間ばかりだった。

何よりショックだったのは、こちらが良いなと思ってマッチングを申し込んでも、相手からは「NO」と言われること。会ってもいないのに自分を拒否される惨めさが、婚活の無意味さを痛感させた。

「婚活も上手くいかないなら、もうどうすればいいんだろうって」

そんなとき、以前から声をかけられていた医師のことを思い出した。女遊びが有名な人で、彼女の周りでも何人か「食われて」いた。

「相手は結婚してるし、昔は不倫なんて考えられなかったんだけどね。何か自分が馬鹿にされてる気分で」

不倫に抵抗はあった。でも、そのときのA子は、とにかく「誰からも相手にされない現実」から逃げ出したくて必死だった、という。

結局、断り続けていた食事の誘いを受け、そのままベッドを共にする関係になった。

 

「最後はひとり」の現実は変わらない

 

だが、最初に関係を持った医師とはすぐに終わる。「あまりにも近場の女に手を出しすぎる」のが原因で、同僚と彼を「共有」するのが耐えられなくなったのだ。

ここで目が覚めれば良かったのだが、

「既婚者って楽なことに気づいて。お互いその気ならすぐ付き合えるし、嫌になったら別れるのも簡単だし。追ってこないじゃない? こじれないから楽なの」

気がつけば、今度は別の病棟で勤務する年下の既婚男性と肉体関係を結んでいた。「きっかけさえあれば進むのは早い」のが社内不倫。この男性とも4ヶ月ほどで別れたが、最後は別の男性と「二股」状態だったという。

婚活ではまともに相手にされなかったのに、既婚者だと簡単に求められる。それは、「自分に関心を持つオトコがいるかどうか」の証明にはなったが、本当に彼女が欲しい幸せからは程遠いものだ。

社内不倫はリスクが高い。バレればクビにはならなくても意図しない病棟の勤務に飛ばされるのは必至だし、相手の配偶者から慰謝料を請求する可能性だってある。それを指摘すると、

「うん、そうなんだよね。わかってるんだけど、病院以外での出会いなんて本当に望めなくて……」

とA子さんは深くため息をついた。

A子さんはただ、結婚相手が欲しいと思っていただけだった。それがつまずいたとき、現実の厳しさを知り、改めて孤独の恐ろしさを間近に感じた、という。

「こんなことしていても、最後はひとりなんだよね。早くまた婚活始めなくちゃ……」

そう言いながら、A子さんは彼と会うために席を立っていった。

 

 

 

年齢が上がるにつれ、婚活が上手くいかなくなるのはよく耳にする話だが、失敗したことでより「ひとりぼっちの自分が怖くなった」、というA子さん。

だが、不倫に走ったところでその孤独は解消されないばかりか、不要なリスクまで背負うことになる。

結局、自分を追い詰めているのは自分なんだと気がつくことが、この泥沼を抜け出すきっかけになるのではないだろうか。

 

≪恋愛相談家 ひろたかおりさんの他の記事をチェック!≫

 

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