独身男性との不倫におぼれる40代既婚女性の誤算【不倫の精算 12】
OTONA SALONE / 2018年1月31日 17時30分
どうして彼女たちは妻ある男と関係を持つのか。
彼女たちは、幸福なのか。不幸なのか。
恋愛心理をただひたすら傾聴し続けたひろたかおりが迫る、「道ならぬ恋」の背景。
【不倫の精算 12】/これまでの記事はこちら
会社の部下である独身男性との不倫
— 着信に気がついてスマホを見ると、L子(40歳)だった。通話ボタンを押すと、スマホの向こうからは明るいトーンの声が流れてきた。
「ねぇ、今度彼が滝を見に行きたいって言うんだけど、前にみんなで行ったあそこ、何ていうところだっけ?」
前置きもなしに話し始めるとき、L子はだいたい高揚している。後ろから車の雑踏と音楽が聞こえてきて、いま運転中なの? と先に尋ねると
「うん。でも路肩に停めてるから大丈夫」
とL子は何かをくわえたようなくぐもった声で答えた。ライターの着火音が続く。
以前友人たちで出かけた滝は、ここから一時間ほどのところにある有名な場所だった。だが山奥のため観光シーズンにでもならないと滅多に混むことはなく、不倫相手と行くには格好のデートスポットでもあった。
場所と名前を教えると、ちょっと待ってという声と共に少し間があった。カチン、とボールペンの芯を出す小さな音がした。
「帰ってから電話くれたらいいのに」と呆れながら言うと、
「すぐ彼にLINEしたいの。ごめんね」
煙を吐き出す息と一緒にL子は笑う。
L子は既婚者だ。夫とは「もうずっと仮面夫婦よ」と自嘲気味に言うことが多いが、今は離婚する気配はなく、L子はふたりの子どもを育てながら正社員として働いていた。
L子の「彼」は会社の部下であり、年下の独身者だった。関係は二年目に入っていたが、L子の熱は冷めるどころかいっそう彼にのめり込んでいるように見えた。
「ていうか、さっきまで会ってたんだけどさ」
ありがとう、と言いながらL子が運転席で座り直す衣擦れの気配がした。
「今日は彼がホテル代を出してくれたの。ふたりで有給を取れるなんて滅多にないから、何か盛り上がっちゃって……」
L子の一方的なおしゃべりは止まらない。うんうんと相槌を返しながら、真っ直ぐ家に帰るのが嫌だったんだな、と気がついた。
家庭では尊重してもらえない自分
産休後すぐに仕事に復帰したL子は、もともと仕事が好きだった。同じ会社員として働く夫の収入はあまり多いほうではなく、共働きは必須だったが、それでも「私が稼げばいいことじゃない」と笑い飛ばす力強さがL子にはあった。
ふたりの子どもにも愛情を注ぎ、一見家庭は上手くいっているように見えた。だが、
「私のほうが稼ぎがいいことが気に入らないのよ、うちの旦那。残業で遅くなっても『ご飯が出来てない』『洗濯を干してない』って文句ばっかり。少しは手伝ってもバチは当たらないのにね」
最初は仕事と家事を両立させるためにがんばっていたL子だったが、一向に協力する姿勢を見せない夫に次第に冷めていった。
子どもが小さいうちはまだ会話もあったが、小学校にあがる頃になると手のかかる部分が減り、夫は学校のこともL子に丸投げするようになった。
「こっちは家族を養うために一生懸命仕事してるのにさ、悔しかったら自分も稼げってね」
まるで男のような言い方で、L子は夫を切り捨てる。L子はひとりで朝ごはんの用意から子どもの学校の支度、晩ごはんの準備までこなし、対して夫は淡々と会社に行っては帰宅後寝室にこもってスマホをいじる日々を送っていた。
「離婚しないの?」
多くの友人が、彼女の体調や子どもたちのことを心配した。すると、
「するよ。あの子たちが大学に行ったらね。それまではあの人の稼ぎも必要だし、耐えるつもり」
きっぱりとした口調でL子は言い切り、事実今の結婚生活で夫がいかに協力的でないか、つまり夫婦関係が破綻している証拠をしっかり手帳に書き記していた。
そんな中で、独身者である部下の男性はL子にとって大きな癒やしだった。
あまり要領が良いほうではなく、仕事ではミスも目立つけど決して「悪い人じゃない」。親身に指導しているうちに情が湧き、退社後にふたりで飲みに行く機会が増えてからは、個人的な話もするようになった。
「ひとり暮らしでね、ある日彼の家で飲もうって話になって」
彼と寝た、と報告を受けたときには、L子はすっかり彼の部下というポジションを忘れていた。
自分の話をちゃんと聞いてくれて、また感謝もしてくれる。メイクや服を褒めてくれるし、ベッドでも情熱的に愛してくれる。
家庭では尊重されない自分が、彼にとっては大切な女性である、と自覚する瞬間が、L子から不倫への罪悪感を奪っていた。
彼とのデートの帰り、たまにこうしてL子から電話を受けることがあった。いつも機嫌よくふたりのことを「報告」してくる裏には、家に帰ればまた虚しい夫婦生活が待っていることからの逃避が垣間見えた。
少しでも、彼との幸せな情事の余韻に浸っていたい。そのためには、彼との時間を反芻させてくれる相手が、L子には必要だったのだ。
「不倫」という罪を抱えた事実
だが、L子は大きなことを忘れていた。
彼女が記している「夫婦関係が破綻している証拠」は、夫が週末何も言わずに一日家を空けたり、子どもの授業参観のプリントも目を通さず捨てたりと、確かに夫としてマイナスなことが正しく示されている。
それはいざ離婚するときに夫を黙らせるための大切な記録であったが、その一方で、彼女自身が「不倫」という人の道から外れた関係を持ったことは、みずから不利な状況を用意したことにはならないのだろうか。
そこを突っ込むと、
「うーん……。そうだけど。でも、バレなかったら大丈夫じゃない?」
とL子は笑って肩をすくめる。「バレなかったら、ねぇ」と首をかしげると、続けて
「そもそも、うちの人が先に壊したのよ」
L子は言った。その口調はさっきと違う強い響きがあり、顔を上げるとこちらを睨みつけるL子の視線があった。
私は悪くない。L子の瞳はそう語っていた。
不倫は決して正当化される関係にはならない。たとえ不倫前から夫婦関係が悪かったとしても、それが夫のせいだとしても、「だから」独身の男性と肉体関係を持つことを「良し」とされることはない。
その大きなマイナスを、L子は「バレなかったら大丈夫」で片付けるが、子どもたちが進学して家を出るまでまだ何年もかかる中で、そう上手くいくのだろうか。
いま、彼女は家庭での家事を放棄する時間が増えている。彼と過ごす時間が多い分、それは当然のことだった。夫からの嫌味は止まず、家庭は手入れの行き届かない状態が続いている事実から、彼女は目をそらす。
その自分は、まさしく責め続けた夫と同じように家庭そのものを壊す行いをしていないかと、もう一度L子に問いたい気持ちがあった。
仮面夫婦だから不倫に走るという既婚女性は多く、その根底には「好きで不倫したわけじゃない」という言い訳がある。
だが、いずれ離婚を考えているなら尚のこと、みずから立場を悪くするような選択は本来控えるのが正解だ。
夫婦関係を軽んじているのはお互い様であり、もしバレてしまえば、大きな責めを負うのはL子になる。
この誤算に、彼女はいつ気がつくのだろうか。
ひろたかおりが傾聴してきた不倫
「ひとりはイヤ」誰とでも寝るほど孤独がつのる【不倫の精算1】
「プレゼントの山」に麻痺し精神束縛に気づけない【不倫の精算2】
どうする?既婚女性が「不倫バレ」した瞬間【不倫の清算3】
そう、私が欲しかったのは旦那じゃなくて「彼氏」【不倫の精算4】
「仮面妻」の孤独。40代女性がハマるニセの愛【不倫の清算5】
「腐れ縁」を断ち切れなかった独女の後悔【不倫の清算6】
バツイチシングルがハマった「都合の良い不倫」のドロ沼【不倫の精算 7】
「元カレ」との関係を断ち切れない既婚女性が抱える欲【不倫の精算 8】
「体だけの関係」とわかっていても、抜け出せない40代独女の葛藤【不倫の精算 9】
ねえ、どうしてその男に貢ぐのがやめられないの?【不倫の精算 10】
出会い系の既婚者でもいいから、自分を求めてほしかった【不倫の精算 11】
独身男性との不倫におぼれる40代既婚女性の誤算【不倫の精算 12】
【もっと読むなら】
#不倫
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
独身だと思っていたのに…!既婚者であることを知らないでお付き合いしていた場合、〈慰謝料が請求される場合〉と逆に〈慰謝料を請求できる場合〉の違いとは?【弁護士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月17日 7時15分
-
「既婚者専用マッチングアプリ」に沼る女性が急増している理由「婚外彼氏と月に1回のデートで発散」「夫とはできないことを…」性的暴行などの事件に発展するケースも…
集英社オンライン / 2024年9月13日 17時0分
-
欲求不満な人妻が、横丁で出会った男性とホテルへ…「既婚女性の大胆すぎる行動」3選
ananweb / 2024年9月1日 21時30分
-
公園でよく会うパパ友と一線を越えました…人妻たちが「W不倫にハマったきっかけ」3選
ananweb / 2024年8月31日 20時40分
-
大規模調査で実態あらわに…40代女性「夫とはレスでいい」が「誰ともしたくないわけではない」
オールアバウト / 2024年8月30日 22時5分
ランキング
-
1年齢のわりに老けて見える人は「化粧水」を間違えている…潤うどころか肌をヨボヨボにする「危険成分」の名前
プレジデントオンライン / 2024年9月22日 17時15分
-
2夏疲れは「ひざ裏」を伸ばすだけ「5秒ストレッチ」で解消【医師が解説】
ハルメク365 / 2024年9月22日 22時50分
-
3姿を消していたヒロミが旬芸人をしのぐ人気な訳 打ち切り「ジョンソン」の後釜番組のMCに座る
東洋経済オンライン / 2024年9月22日 11時0分
-
4騒音や悪臭トラブル…やっかいな隣人への対処法。「役所に相談をしますよ」と直接交渉は危険、ひろゆきが考える“ズルい”言いまわし
日刊SPA! / 2024年9月22日 8時46分
-
5現在使用しているエアコンのメーカーランキング! 2位「ダイキン」、1位は?
オールアバウト / 2024年9月22日 17時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください