離婚せず「彼氏」を作る私を認めて欲しい【#婚外恋愛2】
OTONA SALONE / 2018年2月18日 17時30分
どれだけバッシングされても、決してこの世から消え去らない不倫。
お互い籍を入れないままの恋愛。パートナーが複数存在する恋愛。
恋愛相談家・ひろたかおりが従来の「婚姻」の外にある恋愛と、その心理を傾聴する。
外された結婚指輪
— B子(38歳)の「彼氏」を紹介されたのは、あるレストランだった。
ご飯食べようよ、と誘われて行ってみると、テーブルには彼女の隣に見慣れない男性が座っていた。誰だろうと思ってとりあえず挨拶をすると、
「こちらは○○さん。パソコン教室でインストラクターをされているの」
と意気揚々とB子が彼の隣に立った。どうも、と頭を下げるその男性は、物静かな雰囲気だけど決して今風ではなく、どちらかといえばうだつの上がらないサラリーマンといった感じを受けた。
年齢の割に露出のある服を好み、メイクも濃い目でブランド物のバッグをこれみよがしに下げて歩くのが好きなB子と並んで立つと、恋人や夫婦というより上司と部下のような関係を思わせる。
自分たち以外の人間がいることを聞かされていなかったので面食らったが、これはB子なりの「自慢」なんだな、とすぐに気がついた。
左手の結婚指輪が外されていることは確認したが、B子の既婚者という立場には触れないように会話を進めた。恐らく彼はそんな事実はとっくに知っているだろうと思ったし、彼の隣で腕をくっつけながら笑顔を向けるB子の様子は、「彼氏」を友人に紹介できてテンションの上がっている内心が見てとれた。
あぁ、旦那さんとはずっと「冷戦」状態だもんなぁ、と改めてB子の開き直りが伝わるようだった。
「離婚はしてやらない」
B子の夫が同じ会社の若い子と不倫している事実は、半年前にB子が夫のスマホをチェックしたことで露見した。
LINEのトーク画面に並ぶ生々しい愛の言葉の数々を、B子は冷静に自分のスマホで撮影した。それを証拠に夫を責めたが、夫から返ってきたのは
「だったら離婚する?」
という反省の色が欠片も見えない言葉だった。
現在パート勤めで、生活費は夫の収入に頼っているB子にとって、離婚は難しい選択だった。今さら稼ぎを上げることがどれだけ大変か、それまでお金の心配をすることなく生活してきたB子には立ち向かう力がなかった。
あの頃、「子どもがいなくて本当に良かった」とB子は繰り返したが、それは子どもに愛情の消えた親の元で過ごす環境を強いることがなくて良かったのではなく、自分ひとりなら仮面夫婦であっても好き勝手に過ごすことができるので、余計なストレスがなくて良かった、という意味だった。
それから、B子は自分が既婚者という立場を捨てた。
お金がないから不倫した夫と今でも夫婦として同じ家に住む、という屈辱は、B子から節操を奪った。出会い系で会える男性を探してみたり、メンズバーのようなところで若い男性に貢いでみたりと、夫の稼いだお金をこれまで以上に浪費しながら、日々の鬱屈した気持ちを晴らしているようだった。
「離婚はしてやらないんだから」
それが、B子の歪んだ決意だった。夫はそれからも生活費を渡す代わりに若い女性と関係を続けている。それを黙認して自分も男遊びはするが、望まれても離婚なんてしてやらない。自分だけが不幸になるなんて許さない。その覚悟が、B子を「自分を愛してくれる男性」を探す原動力になっていた。
これまで、B子の「男性遍歴」は聞かされてきたが、実際に誰かを紹介されたのは初めてだった。意外だったのは、派手な身なりを好むようになったB子がこんな地味な男性選んだことだ。
口数は少ないが穏やかな視線でB子を見つめる彼の様子は、もしかしたら彼女の事情をすべて知って付き合っているのかもな、と思わせる。
そして、こんな男性に愛されることで、B子の底のない闇も少しは和らぐのかもしれない。
今の自分を認めてもらいたい
夫婦関係が破綻しているのなら、そしてその原因を作ったのが夫のほうであるのなら、今のB子を簡単に責めることはできないだろう。たとえ離婚しない選択をしたのがB子であったとしても、先に「役割」を放棄したのは夫であり、彼女は今の暮らしを続ける権利を持っているともいえる。
だが、B子が既婚者である限り、交際に付き合わされる男性は「不倫」になる。肉体関係がないとしても、だからOKとは決してならないのが現実だ。
彼と仲睦まじく会話するB子の姿からは、開放感もあった。自分から目をそらした夫ではなく、私をちゃんと愛してくれる人。その安堵が伝わってくるが、裏にある「離婚しない」覚悟を思うと、それでいいのかという暗い疑問も残る。
こうして、わざわざ誰かに紹介するのは、祝福されたいからだ。
「いい人で良かったね」「おめでとう」と、こんな自分でもいいんだと必ず認めてもらいたいから、不意打ちのように会わせるのだ。あらかじめ伝えておくと断られるかもしれない。だから黙って引き合わせる。
彼の前なら嫌な顔なんてしないはず。そして幸せそうな私たちを見て喜ぶ様子を見せてくれるはず。特に、夫との「冷戦」を知っているのなら。
そんな期待。
わかっていても、その言葉を口にすることはできなかった。安易に喜ばせることに抵抗があったのではない。B子の掴んだ安寧が本物なのかどうか、その恋愛は本当に祝福されるべきものなのか、判断がつかないからだ。
夫が浮気をしても、経済的な事情で離婚できないという女性は多い。そこから仮面夫婦となり、互いに関心を失って「婚外恋愛」が加速するパターンも数多く存在する。
だが、それはやはり「正しい恋愛」にはならない。既婚者である限り「不倫」のレッテルから逃れることはできず、それは相手も巻き込むことになる。
それを理解している女性はどれほどいるのだろうかと思う。
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#婚外恋愛
#不倫
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