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「私、マジメだから」と自覚してたら要注意?更年期対策のワナ【山田ノジル前編】

OTONA SALONE / 2019年2月26日 11時0分

日本人女性の平均的な閉経は50歳代。医学的に閉経の前後5年を更年期と呼びます。この過程で心身に苦痛が出る場合が「更年期障害」。のぼせ、汗、イライラ、倦怠感、不眠などさまざまな不調が出やすくなる更年期ですが、その経過は人それぞれです。

ここにつけこむ、トンデモ健康法がこの世には跋扈しているのだそう!

書籍『呪われ女子に、なっていませんか?』が好評発売中のフリーライター・山田ノジルさんは、美容健康系のライター。長い年月をかけてあまりにも悪質な内容に接したせいで、毒舌に近い辛口でずばずば批評します。今回は「真面目な更年期世代の女性ほどうっかり信じやすいトンデモ健康法」について伺いました。

【100人100通りの更年期 #5 山田ノジルさん前編】

 

「健康」のはずが「呪い」?トンデモの概要

– 今回の私の書籍では、オトナサローネよりは少し若い世代の女性がハマりがちな「子宮系スピリチュアル」をメインに取り上げました。

 

「子宮を大切にすれば幸せになれる」

「昔の女性は自力で経血をコントロールしていた」

「冷え取り靴下で毒素排出」

「布ナプキンで子宮汚染予防」

 

こんな健康アドバイスはぶっちゃけ、全部「呪い」です。科学的根拠のない話しで女性を脅し、「これをやらないと大変なことになる」と刷り込むからです。向こうもプロですから、呪いにかかりやすい人を選びます。私の経験では、真面目な人ほど狙われやすい。今日は、どうすれば「呪われないか」、私が長年の取材で培ってきた判断基準をお話しします。

 

「冷え取り」にひそんだワナとは?

先に挙げた中でみなさんが「えっ、それもダメなの?」と思うのが「冷えとり健康法」だと思います。これは1 98 0 年代に進藤義晴医師によって提唱された健康法。靴下を5枚10枚重ね履きすると足裏から毒素が排出され、冷えがとれると主張されています。

 

一般的な冷え対策として靴下を履くことそのものはみんながやることです。ですから、冷えとり健康法における靴下メソッドの「靴下を5枚、10枚この順番で重ねると気持ちいいんですよ」という説明を聞いたとき、手軽そうだし、みんなやってみたくなるでしょう? 間口が大変広い。ここまではいいんです。

 

問題は「その冷えを取れば心身の不調や病気が治る」「あなたの人生がうまくいかないのは冷えを取らないせい」と話を広げて「脅し」をかけてくる点。

 

実際やってみて気持ちいい、血行がいいということはあるでしょう。それはいいことです。が、「病気が治る」とまでなると、一定の素材の靴下を一定の順で履くことと治癒の因果関係は立証されていません。

 

「毒が出る」という表現は本当に気をつけて!

効果がない場合の説明も悪質です。たとえば蒸れて湿疹が出ても「毒が出た証拠だからありがたく思いなさい」「かゆみや苦しみもあなたの人生の反映なのですから受け入れなさい」……医学的な悪化、要治療の状態をいわゆる「好転反応」として説明します。これらは反医療行為であり、健康法などではなく、むしろ宗教と言えるでしょう。

 

こうしたトンデモ健康法はネットと大変相性がよく、インスタやアメブロ、フェイスブックで蔓延します。キラキラした人生を送っていそうなすてきな人が紹介しているのも特徴です。

 

昔の人は生理回数そのものが少なかっただけ…?

よくあれは本当なのかと聞かれるのが「経血コントロール」です。経血コントロールとは、経血の排泄を流れ出てくるままにせず、経血を膣内にとどめておいたり、子宮内膜がはがれる感触を察知して、トイレで一気に出したりして、自力でコントロールしましょうというもの。

 

布教者の多くは「昔の女性はできていた」と言うけれど、人体の仕組みは100年程度では変わりませんし、今と昔では状況が違います。昔の女性は多産な分だけ生理の回数が少なかったし、粗食な分だけ経血量も今より全然少なかったはず。なので、現代女性が使っている高性能な使い捨てナプキンがなくても、ボロ布をあてるだけでなんとかなっていたというだけの話しでしょう。

 

広まる根底にあるのが「善意」だからむずかしい

こう説明すると「私はコントロールできる」と反論する人がいますが、実は経血量は個人差がすごく大きいんです。でもみんな自分が基準なので、他人と自分がこんなに違うなんて思いもよらない。当然量が少なければできる人もいるでしょう。それだけのことなのに、「私はできなくってダメなんだ」と思い込まされます。

 

「現代女性の機能が退化している」「意識を高く持てば、あたりまえにできることなのに」と声高に主張する界隈を見ていると、 経血が普通に流れ出ることが、「オンナとして努力不足だ」とまで言わんばかりの勢いを感じます。

 

経血コントロールできる人が偉くて、それをしない女性や生理の不具合を自力で解消できない女性は意識が低いということにされてしまうのです。いいえ、ホルモンバランスの変動がありますから、多少の不調はあって当たり前です。他人に努力不足と言われる筋合いはない。

 

なのですが、こうしたトンデモ健康法を広める人は、他人の役に立ちたい、いい情報をシェアしたいと思ってやっていることが多く、傍から見ていて間違った内容だと気づいてもつっこみにくいんですよね。でも、現実にこうした呪いにかかったせいで医療へのアクセスを絶たれている呪われ女子がたくさんいるので、指摘することは必要でしょう。

 

趣味として楽しむ分にはOK。医療のアクセス阻害が問題

くれぐれも誤解なきように、私は特に大きなトラブルのない人が、趣味やライフスタイルとしてその健康法をやっている分にはそれはそれでいいことだと思っています。

 

そうではなく、本来は標準医療のもと治療されるべき人が、自分の不調は紙ナプキンのせいだと思い込んで布ナプキンを使い始めること。さらに、たまに紙を使うと「これは悪いものだ」という先入観に身体が反応して調子を崩し、結果信仰を深めて、受けられたはずの医療からどんどん遠ざけられてしまうことが問題なんです。

 

最近のトレンドは「膣」。更年期世代は惑わされないで

 

私はもう5年この観察をやっていますが、まだネタが尽きないどころか、どんどん新しいものが出てきます。中でも「膣」は一昨年くらいから急に出てきた新興株。「日本女性の膣は老化と乾燥が深刻」「ケアしないと不幸せになる」と煽っています。

 

そのお説は首をかしげたくなるような内容ばかりなのですが、これまで性器周りの話しはタブーとして誰も触れてこなかったと煽られ、初めて自分の隠された部分と向き合って感銘を受ける人が一定数いるんです。そうか、ケアをしなくちゃならないんだと真面目に思うんですね。

 

主語が限りなく大きくなっていくのもトンデモ

でもね、私が思うに、いちばん膣にタブー感を持っているのは、この「膣ケア」を広める教祖たちご自身なんでしょうね。そもそもは個人的な、自分がタブーだと思ってたという話だったはずが、どんどん主語が大きくなり、「日本女性は」という話になっているんです。

 

ここのところの「膣ケア」は、孤独死、認知症の悪化、更年期障害や介護時のトラブルまですべて膣が原因というレベルのことを言い始めています。膣が乾燥するとホルモンバランスが崩れる、ケアすれば粘膜の分泌がよくなって妊娠力が上がる。膣ケアをしないと不幸になると脅し、しまいには女性性の否定まであります。

 

この膣ケアをはじめ、子宮系スピリチュアルなどいずれにも共通しているのは「性と向き合って充実させなければオンナは幸せではない」という古い価値観。確かに性的に活気にあふれるほうが、陰気で閉じこもるよりは健康にいい側面があるかもしれませんが、でも、自分の中の性を自分でどう扱うかは、個人の問題なんだからほっといてほしい。性的に満ち足りた女性が格上というマウンティングも入っていますし、医学的にも間違っています。

 

そもそも「老化」は「劣化」ではない。老化の何が悪い!

男性に比べ、生理や出産、更年期、女性には自分でどうにもならない身体の変化が多いですよね。どうしようもないことが多く不安定になりやすいのでトンデモ健康法につけこまれやすいんでしょう。そこにあるのは、女性はこのように体に手をかけるべき、ていねいに暮らすべき、手をかけたほうが偉いという古い価値観です。日本はスピリチュアルに対する敷居が低く、性教育のレベルも低いので、こんなトンデモが跋扈するのでしょう。どんな内容であれ、私が思う「最低限コレは注意したほうがいい」という傾向は次の2つです。

 

注意1・「人格につなげて否定してくるもの」

たとえば、膣系のとある健康法では、「更年期トラブルはこれまで体に向き合ってこなかったつけ」と言います。むかつきません? 実際に毛細血管がは細くなることで、性器周辺が乾くこともあるでしょう。でも、仮に乾燥を原因とする性交痛があるならそれに応じた適切なケアをすればいいだけのことで、自然な老化の何が悪いの? それがまるで悪みたいなことを言われ、呪いをかけられる。結果、一生老化に逆らわなければならないでしょう? 「劣化は止められる」とも言われてしまうのですが、老化のことを「劣化」と言うかと。

最近「グレイヘア」がブームですよね。つまり「いつまでもつややかな現役でいないとならない呪いから開放されたい人」、自然なグレイヘアを選びたい人ががたくさんいるのです。そのように自然な老化を受け入れる動きが目立つなか、性器の老化を脅す健康法の存在価値はどれほどあるのか、本当に疑問です。

 

注意2・「ものごとを単純化するもの」

「冷えさえケアすれば」「膣さえケアすれば」と、一点突破で単純化するのもダメです。身体の多くの不調は、特に初期かつ軽症なら何もしなくても自然治癒することがあります。それを、冷えをケアしたから治ったんだ、みたいに根拠なく結びつけるようなことを言い出すものはダメ。ましてや更年期は、一定の時期が過ぎれば誰でもラクになることが多い、一時的な「状態」です。若々しい見た目がほしいなら、医師に相談してエストロゲンを補充したほうが全然早いはずです。

 

とはいえ、物理的には効果のあるケアも存在

こうした膣関係の健康法の中でも「トレーニング系」はちょっと違い、本筋は科学的です。たとえば、骨盤底筋トレーニングを取り入れているものは尿もれには効果があると思います。

 

その尿もれも、医師に取材すると、服薬で緩和する方法もあるそうです。最近は機能の高いパッドもあるし、ケアでどうにかなったりもするのに、尿もれが必要以上に恥ずかしいことだと、罪みたいに責めてくるのであればその健康法は疑問です。

 

日本人は「修行」が好き?苦労に意味を見出すかどうか…

問題の多い健康法が好んで使う形容があります。「ふわふわ」「まんまる」「ぽかぽか」。最近は「うるおい」も気をつけたほうがいい表現です。〇〇してふわふわを保たないとホルモンが分泌されず体調が悪くなり、結果人生がうまくいかなくなるという文脈の脅しをよく見かけます。

 

経血の状態が××だと毒が出ているというような、見た目にまつわる脅しもほとんどトンデモです。どんなものでも「ヤバい」という目で見てしまえばそういうバイアスがかかる。経血なんて年齢や体調によって量も内容も変わるのが普通でしょうし、それが病的なものか判断するには医師の診察が必要です。素人が判断できるものではありません。体が変わってくると不安になりますが、そこにつけいるのが卑劣です。

 

一般にこうしたトンデモ健康法は苦労を強いてきます。すると修行感に魅力を感じるタイプの人が、この苦労には意味がある、苦労すれば報われるという仏教的な価値観を投影するんですかね。真面目な人ほどひっかかりやすいのはこの心理を狙われるからですが、ダイエットや筋トレと違い、婦人科系のドラブルは努力しても結果が出ないことだってあるし、そもそも他人に努力を強制されるのは心外です。

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後編では「医師とのつきあいかた」、そしてノジルさん自身の更年期について!

 

 

≪OTONA SALONE編集部 井一美穂さんの他の記事をチェック!≫

 

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