【キウイの本場訪ねて】<中> 品質の確保は最新技術に加え人の手や目で 成熟度検査パスして初めて出荷
OVO [オーヴォ] / 2024年5月30日 9時45分
前回は栽培家のロシャさんが、ニュージーランドの自然を生かしながら、キウイを育てる思いを知ることができた。今回は「最高の品質を」目指し、収穫後の選果場での作業やキウイの成熟度を調べる研究所の様子を紹介する。この完熟度の測定が、出荷前の「最終関門」であり、パスして初めて箱詰めされるのだ。
いずれの場所でも、最新の科学技術を導入しながら、一方で、人の手や目も使い、繊細な小さな果実の状態をチェックする人たちの姿があった。
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▼「輸出用は厳選する」
ロシャさんの果樹園からバスで約20分のところにあるパックハウス(選果場)を訪ねた。箱詰めされたキウイを載せ、大型のトラックが出入りしていた。ここは、果樹園から運ばれたキウイの品質検査に加え、品種、サイズごとにパッキングする施設だ。
パックハウスで出迎えてくれたのが、サイトマネジャーのクリス・クレモントさん。クレモントさんは「近くの果樹園から運ばれたキウイを施設内のベルトコンベアに載せ、表面の汚れなどを落とすためにブラッシングします。その後、キウイ1個1個のカラー写真と2種類の赤外線写真を撮影します」と説明した。1個のキウイについて120~150枚の写真を撮影し、傷の有無や、規定通りの形かどうかなどをチェックする。
写真撮影などによる最新技術を活用することで、この施設で取り扱うキウイの全体の7~8割の等級が決まるという。「ただ、機械では判断がつきにくい場合もあるので、最後はスタッフの目で確認しています」と強調した。
等級が決まったキウイには、スタッフが手作業でゼスプリのシールを貼り、細心の注意を払いながら箱に収めていた。その後、パッケージされ、トラックの積み込みまで、クーリングエリア(大きな冷蔵室)に保管される。このパッケージの素材も環境に配慮された素材を使用しているという。
クレモントさんは、「日本を含め輸出用は、クラス1という最高級のものを厳選しています。ニュージーランド国内は主にクラス2が流通しており、傷などがあって出荷できないものは捨てるのではなく家畜のエサにしています」と語った。
日本のスーパーの店頭で購入するキウイがおいしく感じられるのは、出荷時の選別でクラス1の品質のものが輸出されているからだということを初めて知った。
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▼基準クリアしないと出荷せず
話題が前後するが、生産者から持ち込まれたキウイはいきなり選果場には行かない。その前に、出荷できる品質基準をクリアしているかどうかを判断するゼスプリの「ヒル ラボラトリーズ」が、最初の関門として機能している。
この地区のマネジャーを務めるブラッド・スティーブンさんは「キウイの完熟度、かたさ、色など全般的な品質管理をしている研究施設です」と話した。約40年前に誕生したという。
広い施設内では、検査項目ごとの作業をしていた。キウイの重さを量ったり、果実の表面を削り、金属のとがった棒を差し込み、硬度を調べたりする。このほか、キウイの色味を見るために、クロモメーターという機器を使い、スタッフが1個ずつ手作業で確認していた。
さらに、品質チェックで欠かせないのが「ドライマター」を確認する検査だ。ドライマターとは、キウイの果実から水分を抜き取った状態のこと。サンプルのキウイを細かく輪切りし、乾燥機にかける。乾燥する前と乾燥後のデータを比較し、ゼスプリが定める基準を見るというという。
スティーブンさんは「この研究所で基準をクリアしないと、キウイは出荷できません」と強調した。たとえば、ドライマターの基準に達しない場合や、サンゴールドキウイで黄色がどれだけ出ているか確認し色味が弱ければ、「出荷できません」と生産者に報告する。後日、熟成が進んだキウイを提出してもらうという。
選果場、品質管理の研究所、いずれも最新の技術を活用する一方、人間の目や手を使って作業を進めている。そこには、キウイが人の手によって作られるものだけに、食卓まで届ける際も、必ず人の手が加わることが商品の「安心・安全」につながるという、ゼスプリの経営哲学があるように感じた。
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▼「優れた栄養面をアピールしたい」
そのゼスプリの本社があるのが、タウランガだ。建物は吹き抜け構造になっており、各フロアーの至るところに、キウイの赤、緑、黄色を意識したカーペットや仕切りなどが配置されていた。
ここで、少し回り道をするが、ニュージーランドにおけるキウイとゼスプリとの歴史を振り返りたい。キウイは元々、ニュージーランドでは自生していなかったという。1904年に同国の高校の校長がキウイフルーツの種を中国から持ち帰って、栽培を始めたのがスタートだ。1924年に種苗生産業者のヘイワード・ライト氏が、現在世界中で食べられている果肉が緑色のキウイフルーツを開発。1960年代、キウイの海外市場への出荷も盛んになり、品名は「チャイニーズ・グーズベリー」から、ニュージーランドの国鳥「キウイ」にちなみ、キウイフルーツに変更。1980年代は多くの輸出業者が出現し、価格競争がおきてしまい、各生産者らの収益が悪化。このため、生産者は収入の安定を目標に、輸出窓口を一本化する組織を立ち上げた。2000年にゼスプリが法人化され、ゼスプリブランドのキウイを世界中に販売するようになった。
このような歴史を持つことから、ゼスプリの出資者は全員がキウイ生産者で構成されている。前回登場したロシャさんも、その一人だ。このため、出資者である生産者たちは、自分で手がけたキウイを少しでも高品質で高く売るための工夫と努力を惜しまない理想的なサイクルが回っている。「栽培から店頭まで」のゼスプリ・システムがうまく機能している要因はここにある。
出迎えてくれたのは、同社の生産者担当責任者のグレン・アロースミスさん。アロースミスさんは昨年の実績について「売上高は39億2千万ニュージーランドドル(約3743億円)でした。私たちは2025年までに45億ニュージーランドドルの達成を見込んでいます」と話した。さらなる市場の拡大については「キウイフルーツが持つ優れた栄養面で、消費者の健康向上につながることを丁寧にアピールしていきたい」と意気込んだ。 最終回となる次回は、キウイフルーツを食べることで、健康面にどんな良い効果が期待できるかについて、オークランド大学の研究者による最新報告やキウイ料理のレシピなどを紹介する。
(つづく)
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