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超人義足ジャンパーの夢 【平井理央 コラムNEWS箸休め】

OVO [オーヴォ] / 2024年7月20日 8時0分

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 7月26日にパリ・オリンピック、8月28日にパリ・パラリンピックが開幕しますね。特に東京大会以降は、日本でも、開催に賛否の声があがるオリパラですが、やはり始まると、夢舞台で躍動する選手に声援を送るという人は多いのではないでしょうか。まさに人生を賭けて闘うアスリートの姿は、間近でみていると、感動という言葉で、言い尽くせないくらい、強く心をつかまれます。アスリートは勝ち負けだけでなく、積み重ねた努力、自分に向き合った時間、そういったものも試合で表現していると、私は思っています。だからこそ、言うなれば、ただ運動する姿に、私たちは興奮し、感情を揺さぶられるのではないでしょうか。

 一方で、多額の税金を使って開催したい国がなくなっていくのではないか、また温暖化の影響を考えると、夏開催は北半球にとって適切か、といった環境の中で、今後どういう形で続いていくのか、または姿を変えていくのか、課題は少なくないと感じます。

 パラリンピックを代表する走り幅跳びの世界的選手、義足のジャンパーであるドイツのマルクス・レーム選手は、2014年に国内大会に出場し、健常者を抑え優勝しました。そしてパラリンピックではなく、オリンピック出場を狙えるドイツ代表選手に選ばれました。しかし、記録上は充分に資格があるにもかかわらず、“義足がずるい”ということで、ドイツ代表から外され、オリンピックには出られないと判断されました。レーム選手は、スポーツ仲裁裁判所に訴えを出したのですが、そこで出された出場条件は「義足が有利でない証明をすること」でした。この証明は、非常に困難な作業ですし、そもそも義足のバネを使いこなすこと自体が、大変難易度の高いことであり、健常の選手が使えるならば、どうぞ使ってみてくださいというのが、レーム選手の率直な気持ちだったのではないでしょうか。とにもかくにも、彼のオリンピック出場の夢は断たれてしまいました。

 その後、オリンピアンより跳ぶ義足のジャンパーと称され、パラリンピックでは3連覇を果たしているレーム選手が、現在の夢として掲げるのが、いまだ人類が成し遂げたことのない9メートルの跳躍です。彼は、健常者や義足に関係なく、人類が9メートルに挑戦する大会を作りたいと語っています。これが実現したら、既存の大きな大会でなくても、価値ある大会になるのではないでしょうか。そうした取り組みが、アスリートから少しずつでも生まれてくると、スポーツシーンはもっと面白く、より応援したいものになるような気がします。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No. 29からの転載】

平井理央(ひらい・りお)/1982年東京生まれ。2005年、慶應義塾大学法学部卒業後、フジテレビ入社。スポーツニュース番組「すぽると!」のキャスターを務め、オリンピックをはじめ国際大会の現地中継などに携わる。13年フリーに転身。ニュースキャスター、スポーツジャーナリスト、女優、ラジオパーソナリティー、司会者、エッセイスト、フォトグラファーとして活動中。

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