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ワーホリに何を求めるのか 【水谷竹秀✕リアルワールド】

OVO [オーヴォ] / 2024年7月27日 8時0分

Map of Australia.

 ワーキングホリデー(ワーホリ)制度を利用し、オーストラリアへ働きに出る日本の若者たちが再びメディアで話題になっている。この円安時代、最低時給が24.1豪ドル(約2500円)で働ける「出稼ぎ」が魅力的に映るためだ。海外での休暇を楽しみつつ、就労も可能な同制度が、日本と豪州の間で始まったのは1980年。以来、各国で導入が進み、現在は30カ国・地域に及ぶ。

 ワーホリが再注目されたきっかけは、豪州で働くこんな若者たちの声がテレビで紹介されたことに始まる。

 「残業なしの介護アシスタントで月収80万円」
 「ブルーベリー摘みのアルバイトで月収50万円」

 時はコロナ禍だ。豪州では外国人の入国が制限され、人手不足に陥った業種に渡航中の日本人たちが滑り込んだ。これが大々的に報道され、出稼ぎ組の若者が続出したというのだ。

 ところがコロナが収束し、各国からワーホリの外国人が豪州へ入国し始めると競争が激化し、職探しに困った日本人が増えた。その結果、現地のキャバクラで働く日本人女性もいるという。だが、同じような女性は、私がワーホリで働いていた20年ほど前にも存在していた。当時の時給で5ドルほど(約400円)のブラック居酒屋で働く若者もいれば、日本人との交流ばかりで英語が身に付かない若者も少なくなかった。

 雑誌に掲載されるようなキラキラした若者は少数派で、大半は語学学校を終えた後、少しアルバイトをしてから豪大陸を旅行するのが定番だった。

 私はといえば、シドニーの現地法人でウエディングのカメラマンとして働いた。撮影対象は、ハネムーンと結婚式を兼ねた日本人の新婚夫婦だ。以前から日本で経験していた仕事の延長線上だったので、幸運にも職にありつけた。職場は一部を除いて全員、オーストラリア人だった。

 英語のブラッシュアップには願ったりかなったりだが、当然のことながら全ての業務が英語で進行するため、理解できないもどかしさから精神的な壁に何度もぶち当たった。

 それでも積極的にコミュニケーションを取り続け、仕事終わりには近くのパブで一杯やるというオージーに囲まれた生活にどっぷりつかると、半年ぐらいである程度の英語は理解できるようになった。帰宅後もルームメイトがオージーなので、日本語を全く使わない日もあり、英語で夢を見るようになった。

 現地での職探しで求められるのは、英語力よりも「本人に何ができるのか」という付加価値の部分だ。逆にその武器を身に付けていれば、多少英語力に不安を覚えても仕事は見つかるような気がする。その本質は、私がいた当時も今も変わらないだろう。

 ワーホリに何を求めるのか。その目的意識がぶれず、行動力さえあれば、職探しが難しい豪州でも道は開けるはずだ。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.30からの転載】


水谷竹秀(みずたに・たけひで)/ ノンフィクションライター。1975年生まれ。上智大学外国語学部卒。2011年、「日本を捨てた男たち」で第9回開高健ノンフィクション賞を受賞。10年超のフィリピン滞在歴をもとに「アジアと日本人」について、また事件を含めた現代の世相に関しても幅広く取材。

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