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民主主義はどこへ? 【サヘル・ローズ×リアルワールド】

OVO [オーヴォ] / 2024年8月11日 12時0分

民主主義はどこへ? 【サヘル・ローズ×リアルワールド】

 今年は元日からいろんな事が起きてしまいました。自然災害、戦争、争い、人災など・・・。なんだか疲弊してしまいます。自分だけでは成立できない社会です。きれい事に聞こえてしまいますが、助け合わないと生活はますます困難になっていくと思います。それだけ日本国内での生活環境も激変していますよね。フードバンクに頼らなければならない家庭、子ども食堂には大人の姿もある。もちろん、貧困問題は日本に限らず言える事です。

 民主主義は果たして存在しているのだろうか? 世界では、ほぼパワーバランスが崩れていき、民主主義は表面だけで、実は独裁社会になりだしている国々は少なくないと思います。今までは先進国といわれていた国々だって衰退してきている。つい先日、トランプ前米大統領が選挙演説中に銃撃された報道を目にした時、安倍晋三元首相と被ってしまったのです。

 意見が異なる事、納得なんてしてない事は、政策や国のトップの政治家に対して山ほど抱いています。国民が国家に意見するために選挙がある。だけど、それが反映される民主主義であるとしても、どこかで選挙への不満、不正が明らかになっていくにつれて、壊れていく社会の歪(ゆが)みを感じさせます。だからといって暴力は何も変えない。相手を殺(あや)めても、自分たちの生活が豊かになるわけではない。日本もどこかで民主主義が崩れ始めているように感じています。

 先進国だった日本は遠い歴史にさえ感じます。皆さんだってよく分かっているはずです。煌(きら)びやかな日本だけが存在しているだけではなく、闇社会の犠牲になっている若い世代。孤独になっていく心を満たす相手のために、体を使ってお金を得る。お金で相手を手に入れる間違った居場所。集団自殺に闇バイトなど、SNSにはびこる犯罪。複雑な心境になります。

 IT技術によって発展し、社会は多くの変貌を遂げた。もちろん利点もある。ですが、一方では社会の孤立をも促し、多くの犯罪をも炙り出していった。7月7日の東京都知事選を都民としては気にしていました。SNS上に広がる選挙への関心。だが、そこには先進国とは思えない発言も多くありました。芸能界では、誰を支持していると明かすのは案外タブーです。発言の自由は曖昧な線引きによって無法地帯化しています。自分の考えを述べたら叩(たた)かれ、一方で発言の切り取りや誹謗(ひぼう)中傷しかしないコメントに何か問い掛ければ、「発言の自由だ!」と議論がすり替えられる。ただただ何かを言いたいとか、ストレスの吐け口など、あらゆる感情のゴミ捨て場になっている印象でしかないです。

 こういう事を国民がしている間にいろんな法案が可決され、私たちを疲れさせ、考えさせなくなる結果、自分たちの意見が反映されづらくなる。暴言と否定と意見は全然違います。意見が異なる相手を抹消して、何が楽しいのだろうか? 

 時間の使い方がとてももったいないと思うんです。内部でつぶし合う構造を生み出すよりも、アナタの人権を守り抜いてください。国民があって、国が、政策が、そして政治が生まれる。日本は終わってないのです。可能性に満ちているので、守り抜いてください。祖先が生み出した民主主義社会を、アナタの関心で。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No. 32からの転載】

サヘル・ローズ / 俳優・タレント・人権活動家。1985年イラン生まれ。幼少時代は孤児院で生活し、8歳で養母とともに来日。2020年にアメリカで国際人権活動家賞を受賞。

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