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予言者「老い」を語る 【辛酸なめ子 コラムNEWS箸休め】

OVO [オーヴォ] / 2024年9月15日 13時0分

(C)2024 Nameko Shinsan

 このところ話しかけられて聞き返すことが多くなり、物忘れも頻発している・・・。老化フラグを感じる今、老いのプロの講演会があったので伺いました。「創造的に老いる」と題された講演会は、「失敗学」の提唱者で東大名誉教授、工学博士の畑村洋太郎氏と、認知症予防について研究している工学博士でほのぼの研究所所長の大武美保子さんによる対談形式でした。録画した対談の後、2人でまたその話題について話すという実験的な試みで、老いについて考えを深めることができました。

 畑村先生は「悪い老い」について「人の話をまじめに聞こうとしない」「威張りたがる」「威勢が良かった時の話ばかりする」「大事にされないと文句を言いたがる」と具体的に提示。シニア世代が多い客席に苦笑交じりの笑いが広がりました。そうやって客観的に捉えられるのは老いていない証拠です。大失敗しないためには、頭の中で常に最悪のケースを想定しておくことや、違和感や危惧感をヒントにすることが大切だとおっしゃっていました。

 学者の畑村先生は、常に新しいことを解明したり、思索したりしていて、つい最近も発見があったとか。「こんなに重要なのに、誰も教えてくれないことがあります。それは、川の水は浅く見えるということ」。先生は、川が一瞬浅く見えて、入ったら深みにはまって溺れてしまう、という事例について警鐘を鳴らされました。

 「お風呂に手を入れると屈折で小さく見えます。それと同じで、深い川も浅く見えるのです」。泳げないので川には近づかないようにしようと心に刻みました。後で先生に川の危険について改めて伺ったら「浮き輪が一番いけない! 浮き輪に座ってお尻が抜けなくなってひっくり返ったら危険です。あれは死ぬための道具です!」と真顔でおっしゃって、緊張感が高まりました。80代の先生の言うことは説得力が。年長者の「格言」はありがたく受け止めます。

 会場には高齢者の方が多く参加していて、皆さん年を重ねることで知識が増えたりさまざまな気付きがあるようでした。81歳の男性が持っていたのは「18才と81才の違い」が書かれた紙。「家を出るのが18才、家を出されるのが81才」「行く先が見えないのが18才、逝く先が見えるのが81才」「聞く気がないのが18才、聞こえてこないのが81才」「乾杯で始まるのが18才、黙祷(もくとう)で始まるのが81才」・・・。笑い飛ばすのが一番健康に良くて認知症予防にもなりそうです。

辛酸なめ子(しんさん・なめこ)/ 漫画家、イラストレーター、コラムニスト。1974年東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美大短期大学部卒業。著書に「女子校育ち」(筑摩書房)、「スピリチュアル系のトリセツ」(平凡社)、「電車のおじさん」(小学館)、「大人のマナー術」(光文社新書)など多数。7月に「川柳で追体験 江戸時代 女の一生」(三樹書房)を上梓。

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