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スマートヘルスケア実現へAWSと浜松医大が協定 地域医療の新たなモデルを全国に発信

OVO [オーヴォ] / 2024年11月18日 11時53分

協定文書を持つ浜松医大の今野弘之学長(左)とAWSジャパンの宇佐見潮常務執行役員

 アマゾン・ウェブ・サービス・ジャパン(AWSジャパン)と、静岡県の浜松医科大学は11月15日、静岡県内のスマートヘルスケアの実現に向けて協力する包括連携協定を締結したと発表した。人口減少や少子高齢化によってもたらされるさまざまな医療課題に対して、クラウドサービスや生成人工知能(AI)の技術を用いることで解決につなげる。浜松医大の今野弘之学長は「医療や病院の機能がドラスティックに変わる。デジタル時代の地域医療の新たなモデルを全国に発信していきたい」と意気込んだ。AWSジャパンの宇佐見潮常務執行役員は「安全安心で、災害など緊急時も切れ目のない堅固な情報基盤の運用を支えたい」と話した。

 医療への需要の増加、医師不足、地域による格差、財政圧迫など、日本の医療を取り巻く環境は厳しい。特に東西方向に広い静岡県は、人口約350万人に対し医学部のあるのは浜松医大だけで、同大にかかる負担と期待は大きい。こうした状況に対応するために、社会のほかの各分野と同様、医療分野でもデジタルトランスフォーメーション(DX)が求められている。

 デジタル技術によってできるようになることは多い。オンライン環境を整え遠隔診療を充実させれば病院のない地域の人にも医療が届く。電子カルテは、紙の保管が不要になることで省スペースに役立つことはもちろん、データ蓄積が確実になり、医師間や病院間でのデータ受け渡しも簡便になる。クラウド技術を活用すれば、CTスキャン画像や手術動画の共有やアクセスもスムーズになる。また、病院にある膨大な量のマニュアルをAIに学習させれば、緊急時の対応を簡単に検索することができる。

 生成AIによる文書作成も利点が大きい。浜松医大の五島聡・医療DX推進担当病院長特別補佐は「実際、医師は診察よりも文書作成に多くの時間をとられている。そこを生成AIに任せられれば、より深い診療ができる」と強調した。

 地震など病院も含めた社会インフラに被害が出るような大規模災害時も、デジタル技術による支援が欠かせない。クラウド上での医療データのバックアップや、そうしたデータへのアクセス確保。避難所などにおける遠隔診療や健康相談の充実も必要だ。AWSジャパンの大場弘之パブリックセクター統括本部ヘルスケア事業本部長は「生成AIをはじめとするデジタル技術は、研究から臨床、事務まで医療に適した技術だ」と説明した。

 浜松医大の今野学長はさらに、医療DXの進展で予防医療やセルフケアが充実していくとの見通しを語った。現在は、医療データへのアクセスは医師や病院からが想定されているが、今後は個人が自分のデータをとれるようになるからだ。同学長によると、眼球の動きや声の調子などをデータ化しておけば、その変化から実際に心や体の不調を感じるかなり前の段階で異常を察知することができるという。「どこかが悪くなって病院にいって丸1日つぶれるといった非効率なこともなくなっていく。AWSジャパンの技術はそうした未来に大きく貢献する」と期待を込めた。

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