なぜ「石破茂」はたたかれるのか? 【政眼鏡(せいがんきょう)-本田雅俊の政治コラム】
OVO [オーヴォ] / 2024年11月27日 9時14分
面白おかしく切り取られている面はあるし、もはやしつけの域に入るだろうが、「箸の持ち方が悪い」だの、「おにぎりの食べ方がひどい」だの、石破茂首相の“マナー”を巡る話題がメディアやネットをにぎわせている。先日のアジア太平洋経済協力会議(APEC)や20カ国・地域(G20)の首脳会議での振る舞いはこれらに拍車をかけた。
中国の習近平国家主席と握手する際、石破首相だけが両手を差し出した。丁寧な握手の仕方が“石破流”かと思いきや、首脳会議前にマレーシアやカナダの首相が駆け寄ってきても、座ったままの対応だった。さらに、各国首脳が相互にあいさつを交わしていても、石破首相はまるで講義室の大学生のようにスマホをいじっていた。首脳会議の“新人”にしては、ずいぶん横柄な態度に映ったはずだ。
誰でも癖や短所があるが、怖い顔や上目遣い、首を傾げての発言や腕組、腹を突き出しての歩き方など、石破首相にも改善すべきところがある。家族の進言もあって、自民党総裁選の最中は表情を柔らかく見せるために眼鏡をかけたり、つくり笑いを浮かべたりしたが、最近の石破首相は国民に好感を持たれない。内閣支持率が大きく下がった一因は、間違いなくイメージの悪化にある。
だが、もう少し深掘りをしてみると、石破首相が批判されたり、たたかれたりする土壌があるといってもよい。それは、石破首相が永田町に「友だちが少ない」理由と重なり合う。同じB型の血液型でも、故安倍晋三元首相は“陽”であったのに対し、石破首相は“陰”だ。本人は正確かつ丁寧に話しているつもりでも、聞き手は理屈っぽさやねちっこさを感じることもある。
かつては面倒見の悪さや評論家的な物言いが批判を浴びたが、新政権が発足してからは、石破首相の変節ぶりと豹変(ひょうへん)ぶりが足を引っ張っている。夫婦別姓や日米地位協定の見直しはどこへ行ったのだろう。総裁選の最中に訴えたこと、さらには政権に干されていたときに唱えたことが「なかったこと」にされているのだ。これでは早晩、「やはり野に置け蓮華(れんげ)草」と言われかねまい。
しかし、最も好かれない理由は、心理学でいうところの「承認欲求」だろう。誰でも人に認められたい、評価されたいと願うものだが、石破首相の場合、これがかなり強い。例えば、居眠りをしていた首相指名選挙の翌日、「昨日は結構寝ましたよ」まではいいが、続けて「久しぶりに4時間も寝られた」と付け加える。「睡眠時間を削り、そんなに頑張ってくれているんだ」と褒めてもらいたいのだ。しばしばつくため息も、癖であると同時に、頑張っていることを誇示したいためかもしれない。
首相になる前は、「同級生たちはもう引退してゴルフ三昧の毎日。うらやましい限りだ。それに比べ、政治家は因果な商売だ」と愚痴ったりした。人によっては、「だったら政治家を辞めれば」と思うが、石破氏は「そんなことを言わず、これからも日本を良くするために頑張ってほしい」とエールを送ってもらいたかったのだ。
このような発言もあった。数年前、酔った席ながら、「総理なんてなるものじゃない。大変な仕事だ」と独り言のようにつぶやいたり、「総理総裁に推され、その任に非ずということは無責任ではないかという思いもある」などと答えたりもした。「素直に『総理になりたい、だから力を貸してくれ』と言えない人」(自民中堅)なのだろう。こうした人は、誰でも身近に1人か2人はいるかもしれないが、付き合うには実に面倒くさい。
明日から臨時国会が始まる。国会答弁などで石破首相がテレビに登場する機会は増えるが、国民の「納得と共感」を得たいのであれば、もっと明るく、もっと爽やかに、そしてもっと明快に話したり、行動したりしてはどうだろう。素直になることも不可欠だ。マナーもさることながら、多くの国民はリーダーの言葉や表情に明るさを求めているはずだ。
【筆者略歴】
本田雅俊(ほんだ・まさとし) 政治行政アナリスト・金城大学客員教授。1967年富山県生まれ。内閣官房副長官秘書などを経て、慶大院修了(法学博士)。武蔵野女子大助教授、米ジョージタウン大客員准教授、政策研究大学院大准教授などを経て現職。主な著書に「総理の辞め方」「元総理の晩節」「現代日本の政治と行政」など。
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